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INSIDER No.157《DOUBLE-CROPPING》人生二毛作開墾記・その3──“半農半X”のライフスタイルの設計

 まだ土地の整備が終わっていないどころか、敷地の境界も定かでないような段階で、いささか先走りしすぎる感はあるけれども、ここでどんな暮らしぶりを実現して、それにはどんな家だか小屋だかを建てようとするのかについて、今から頭の体操を始めようと思う。

●四方それぞれの自然景観

 しばしばお話ししているように、1000坪と言っても実際は1500から2000坪近い、緩やかな北斜面だが、全体に日当たりは良い。何本もの榎がのびのびと枝を伸ばしているのが、その何よりの証拠だ。この木は「日当たりのよい温暖な場所に自生する」と植物図鑑の類にも書かれている。

 敷地全体は大きく上中下の3段に分かれている。中段の宅地のあたりで標高100メートル前後、上端は150メートル、下端は85〜90メートルといったところだろう。標高300メートルの自然王国より少し温暖なはずである。下の街道筋、加茂川の岸辺までの標高差は20〜30メートルか。

 南側の上段は、広葉樹の大木の林で、上に行くほど木が密になり、そのまま北隣の大山不動尊の杉林に接していて、長老のKお父さんによれば、「その辺り一帯から良い湧き水・浸み水が出る。前の持ち主が、家を建てるつもりで整地した時に、どこかその上のあたりに湧き水を貯めるタンクを設置したはずだが、今はもちろん使えないので、タンクは作り直さなければダメだ」とのこと。もちろんこの湧き水を上水道として利用することになる。山の水を水道に使うのは、鴨川自然王国でもやっていることで、パイプやポンプの造作はK君の担当だから、彼に相談すれば問題ない。

 山の水を水道に使うには、内径2〜3センチのパイプに半分ほどの水量があれば十分だそうだし、他に雨水タンクを作ることも考えようと思っているので、たぶん水は余る。そうしたら、森から流れ出す小川を作って、家の周りで池や洗い場になって、最後は下のほうの田んぼに流れていくという、超贅沢なビオトープ遊びが出来るのではないか。この一帯の粘土質の土を突き固めれば、セメントやビニールシートを使わずに、ほとんどナチュラルな水系を人工的に作れることは、すでに調べがついていて、前に自然王国の一角で1〜2メートルほど試しにやって見たことがあるので、技術的には実証済みである。この土地は絶対に地崩れはないと、Kお父さんから保証されているけれども、地中の水を出来るだけ表に抜いてやれば、なおさらその心配はなくなるはずである。

 中段は、約100坪の住宅用の平地がすでに整地済みである。その上端は50センチほどの高さの石垣とその下のU字溝が工事済みで、そのU字溝にはチョロチョロと水が流れて、下の道路脇のU字溝を経由して川へと流れ込んでいる。石垣の上は畑に使うことが予定されていた200坪ほどのほぼ平らなスペースで、たぶんそこで野菜を作ったりすることになるのだろう。

 宅地用の平地に立って見回してみる。南はそういうわけで、すぐ前は一段上がった畑地で、その両脇から上の方にかけては大木の林が広がる。東は、大きな榎や、それが隣の草地との境の目印だという柿の木があり、その周りは雑木林風の藪になっている。いい木は残して雑木を整理して、東から榎ごしに朝日が入るようにしたら気持ちがよさそうだ。西は道路に向かって下っていく斜面で、そのまま隣の森に繋がっていく巨木群がある。このまま活かすしかなかろう。北は道路に向かって緩やかに下り斜面の草地で、北向きとはいえ明るい空の下に街道の反対側の清澄山系の見事な眺望が心をなごませる。

 つまり、東西南北それぞれに異なった、どこにも人工物の見えない自然の景観が配置されているわけで、これを惜しみなく楽しもうとすれば、四面ガラス張りの家を建てるしかないという地形なのである。しかもこの景観は、将来に渡って変わる可能性はほとんどない。南は不動尊の杜なので家が建つことはない。東は昔に土砂崩れを起こした草地で、家を建てる勇気のある人はいないし、いたとしても雑木林に遮られて目に入ることはない。西隣の森は切り倒される可能性はまずない。北は敷地下端の木々と道路を超えた向かい側の紅葉などの林に遮られて、すぐ下のプレハブ2階建ての隣家も、その下のKお父さんの家も、300メートル離れた街道沿いの建物群もほとんど見えず、上述のように清澄山系の眺望が広がるだけである。ということは逆に、庭先に露天風呂を作って裸で出入りしても、誰からも見とがめられる可能性はないということである。

 下段は、道路に向かって緩やかな斜面で、一番下の敷地入り口の横の部分と、道路を超えてはみ出した部分とは、昔の田んぼの姿をかろうじて止めていて、併せれば1反はないかもしれないが7畝ほどにはなりそうだ。自然王国のMちゃんは「そこに田んぼを作ろうよ」と言ってくれているので、いずれそういうことになるだろう。

●土間のある農家風の家

 ここでどういう暮らしを営みたいのか。基本的には“半農半X”の農的暮らしをする“第3次兼業農家”の「本拠地」であって「別荘」ではない。横浜の家はすぐに手放すつもりはないが、住民票はこちらに移して、ここが暮らしの中心であることを法的にもはっきりさせる。

 現実には、少なくとも当初は、週の半分をそこで過ごして農の真似事をし、また鴨川自然王国の諸活動に携わることを中心として、週の残り半分は東京その他に出稼ぎに行く形になる。ここで米、味噌、野菜などを作り、また太陽熱・風力を主とし電気・プロパンガスを従とするエネルギー供給システム、生ゴミのコンポストやバイオ浄化槽による廃物・排水処理システムを導入して、可能な限り自立自給的な生活を実現する実験場にしたい。

 また将来可能なら馬を放し飼いにして敷地内や周辺を乗り回したい。道産子のような馬なら、電撲(でんぼく=電気を通した針金の柵)を張って放しておけば勝手に草を食って森の下草刈りを手伝ってくれる。とはいえ、ほぼ毎日ここに居るようにならなければ馬は飼えない。

 家は、昔の農家もしくは山家風の、田型の平屋で、余計な凹凸も仕切もなく、大きな土間が全体の3分の1〜2分の1を占めて客間・リビング・台所を兼ねた生活の中心になるような形になるだろう。土間は、表(北側)のアプローチから裏(南側)の作業用スペースまで、そのまま床のたたきが繋がっていて、南北共に大きく開口している。特別の玄関はなく、北側の土間入り口がそのまま玄関になって、本人もお客も、外で長靴をちょっと洗ってそのまま土間に入って来られる感じがいい。土間には、大きな自然木のテーブル、薪ストーブ、台所、収蔵・道具置き場が含まれ、上がりの板の間まで空間的に繋がっているのだろう。

 他に浴室・トイレ、寝室、書斎、納戸。土間は浴室・トイレに繋がり、その脇に洗濯場があって、そのまま南の軒下の干場があるという流れかな。その辺りの軒先には湧き水を引いた水溜が流れる野菜の洗い場もあるのだろう。

 将来というか、家が建ってから後に順次整えるのは、露天風呂、2台分ガレージと工作室・道具室、書庫などで、どこまでDIYでやれるのか楽しみである。車2台とは、4WDの乗用車と同じく4WDの軽トラック。乗用車が4WDなのは、結城登美雄さんの言い方では「野性を失わない」ための証である。いままで好みに任せてジープ・チェロキーに乗っていたが、それが野性を失いたくないという願望のためだったのだとは、結城さんが自分のRV車をそう呼ぶのを聞いて「あ、そうだったのか」と気づいたことである。しかしチェロキーは4000ccで燃費はリッター5キロが精一杯の反環境的な車の代表。もう10年が過ぎたし、トヨタのハリアーに来年はハイブリッド車が出来るそうだから、それに乗り換えるのかな。燃費が4〜5倍違うはずだ。軽トラックは日本が生んだ世界に誇る車文化で、田園生活でこのくらい便利でタフな万能車はない。中国なんぞ、ベンツだランクルだと贅沢なことを言わずに、みんな軽トラに乗ればいいのに。で、当初はガレージまで手が回らないから、屋外に放置して、そのうちに2台が入って、しかも奥の方が工作室になっていて、ありとあらゆる道具が壁にブラ下がっているような小屋を造りたいというのが、野性派として当然の夢なのである。

 エネルギー対策としては、OMソーラー、太陽熱給油もしくは太陽熱発電、風力発電を研究する。鴨川は暖かいのでOMソーラーは要らないんじゃないかというアドバイスもあるが、太陽熱で暖めた空気を床下に環流させて緩やかな床暖房をする仕掛けはなかなか魅力的だ。それがあって暖炉か薪ストーブか囲炉裏のどれか1つか、もしくは2つがあれば、石油系の暖房はほとんど要らないかもしれない。しかし建築費は割高になる。
※OMソーラー協会
http://www.omsolar.co.jp/

 OMソーラーだと床暖房だけでなく給油にも太陽熱を利用するが、家の設計そのものからそのシステムに従って設計することになる。OMを使わなければ、普通の太陽熱給油システムを単独で取り付けるわけで、給油の補助と割り切れば30万円くらいから。冷暖房にも使うとかいろいろ機能アップすると100万円くらいになるらしく、そんなことをするなら初めからOMにしたほうがいいということだろう。他方、太陽熱発電は200万円以上かかる。
※ソーラーシステム振興協会
http://www.ssda.or.jp/

 風力は、神鋼電機が最近売り出した垂直軸風車による小型風力発電機、1基30万円を備えると普通の家なら電気が余ってしまうほどだという話なので、すでに千葉県長生郡で自宅にそれを備えている知人のKさんの山荘に見学に行くことにしている。秒速2メートルの微風程度で発電が可能で、しかも垂直型なのでどんな風向きでも回る。価格が驚くほど安い上に、付属のVTRを見ながら自分で組み立てと設置が出来るというのがうれしい。
※神鋼電機ニュース
http://www.shinko-elec.co.jp/NewsRelease/new_0082.htm

 上水道は上述のように湧き水で、タンクとパイプの敷設が必要。下水道は札幌のGさんのところ(札幌の中山組の関連会社=環境エンジニアリング株式会社)の杉チップを使った浄化槽を使いたい。チップを蜂巣状に加工して膨大な微生物が生息出来るようにした“ハニカムチップ”というものを槽に入れておくだけで、あらゆる有機物を水と二酸化炭素に分解してしまう汚水処理浄化槽で、普通の合併槽と違って汚泥などは発生しないのでそれを抜き取る手間は必要なく、チップなどのメンテナンスもほとんど不要。水はトイレの流し水や散水、洗車用などに循環させることも出来る。すでに自然王国の事務所及び藤本宅で設備して性能は実証済みであるほか、東京・井の頭公園、青函トンネルの海底駅、大雪山旭岳、神戸大震災被災地などに設置実績がある。Gさん、“お友達価格”でよろしくお願いします。
※環境エンジニアリング
http://www.nakayamagumi.co.jp/kankyouEG/EEpageindex.htm

 燃やせるゴミは出来るだけ燃やして灰を活かす。生ゴミはコンポストで(と言っても機械は要らなくて、庭に穴を掘って放り込めばいいんでしょう)堆肥づくりをして土に還元する。それ以外の処理できないゴミだけ外へ出す。「焚き火をしてはいけない」という飛んでもない誤解が世間に広がっていて、それは2000年の廃棄物処理法改正で「廃棄物の焼却禁止」が盛り込まれたことによるのだが、この主な趣旨は、産廃業者などがタイヤを野外で燃やしたりするのを禁止することにあるのであり、一般庶民が行う焚き火や農林業者が行う稲藁・枝葉の焼却などは政令によっても除外されている。だいたい焚き火は日本の文化の欠かせない一部であり人民の基本的な権利でもあるわけで、お上がそんなこと規制できるわけがないじゃないですか。焚き火をしていたら通りがかりのオバさんに「いけないんですよお」と言われたとかいう話がよくあるが、こういう知ったかぶりの環境派オバさんのお上に盲従するどころか先走りまでして過剰な自己規制をする態度は撲滅しなければならない。このことについてはまた機会を改めて論じよう。

 こうして、外から供給されるのはプロパンガスとわずかな電気、外に出すのは燃えないゴミ・資源ゴミの一部——ということで、可能な限りライフラインの自立化を目指す。

 こんなイメージで、「和風木造建築」の資料をいろいろ当たったが、そのほとんどは、確かに杉や檜をふんだんに使って、古民家風に大きな曲がった梁を露出したり、窓に障子を嵌めたりしていて確かにそれらしいのだが、これが本当の「和風」なのかなあと首をかしげるようなものである。ただ外見が和風というのでなく、昔の山家や農家、あるいは町家のこの国の風土に合ったそれなり合理的であったはずの暮らしぶりを、もっと原点のところから考え直さないといけないのではないか。そう思って模索するうちに、たまたま出逢って「これだ!」と納得したのは山口昌伴の一連の著作だった。▲

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