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INSIDER No.154《DOUBLE-CROPPING》人生二毛作開墾記・その1──とうとう鴨川で山林を手に入れた!

 安房鴨川、房総山地の奥深くにある「農事組合法人・鴨川自然王国」に月に1〜2度、たいていは1泊か2泊で行って、農林作業の真似事をするようになって7年が経つ。その間、いずれはこういう山深いところに居を移して、もう少し本格的に田舎暮らしを始めたいという思いを抱き続け、その覚悟の証として、5年前に(株)インサイダーの登記上の本社を自然王国内に移したりもしたものの、終の棲家というか、そこでこの世とおさらばすることになるであろう第2の人生の本拠地として自分で納得のいく土地を見いだすのは、思ったほど簡単なことではなくて、ずっと暗中模索を続けてきた。が、この夏以降に急に動き出した経緯の末に、自然王国から3キロほど離れた大山不動尊の北麓の山林を手に入れられることになり、本日、無事にすべての手続きを完了した。ここで私の人生二毛作目の展開が始まる。

●土地探し

 鴨川市に限らず南房総あたりでは、空いている土地や家はいくらでもある。それでいて、なぜなかなか見つからないのかというと、第1に、農家や地主の意識の問題がある。高齢化・過疎化が進んで、もう自分らでは維持できなくなった田畑・山林や使っていない宅地・建物があっても、先祖伝来の土地を売りたくないと思うのは当然として、ならば貸せばいいじゃないかと思うのだが、それも「都会モンに貸したら盗られてしまう」と警戒する。そこで第2に、行政や農協の出番があって、一定の枠組みを作って斡旋・仲介・保証をして都会から農村への人の流れを促そうという試みが、他では成功している例もあるけれども、鴨川市ではまだそこまで行かない。市が数年前に「空き家対策」に取り組んだことがあるが、都会側の移住希望者はすぐに500人も集まったのに、地元側からは「売ってもいい」「貸してもいい」という物件が1つか2つしか出てこず、挫折した。

 そうなると、第3に、自分で探すしかない。誰でも考えつくのは、「田舎暮らし」のための物件情報誌をチェックしたり、地元の不動産屋さんを歩き回ることだが、それでうまく行く場合もあるけれども、買ったはいいが昔の経緯があって水利権が付いていなかったとか、「農地付き」といううたい文句に惹かれて移ったら石ころばかりで畑にならなかったとか、信じられないようなトラブルに見舞われる場合もまた少なくない。それを避けるには、やはり、私がそうだったように、たまたま故・藤本敏夫の縁で自然王国を訪ねるようになって、何年も通い詰めている内に次第に地元に知人や友達が出来て、さらには夏祭りでは毎年、御神輿担ぎを買って出て村の長老たちとも顔見知りになって、そういう人の繋がりを蓄えながら少しずつコミュニティで顔なじみになりながら溶け込んでいくよう心がけることである。そうすると、自ずといろいろ情報も入ってくるようになるのである。

 そんなわけで、2〜3年前からは時折、よさそうな話も舞い込んでくるようになったものの、私は「こういうことは時が解決する。機が熟せば、出会い頭で一気に事が成るということがあるだろう」と思って、焦ることなく流れに任せていた。「でもなあ、来年は還暦で、それこそ人生の折り返し。そろそろ決めないと、年を取り過ぎちゃうなあ」などとぼんやり考えていたこの夏、まさにその“出会い頭”のような事態が降って湧いた。

 自然王国スタッフのK君から、彼のお父さんが不動産関係に詳しくて、いまこの近所で急いで買い手を捜している家があるので見てみないかと言っているという話があった。農作業のあと、さっそくお父さんに案内を頼んで行ってみると、そこは400坪の借地に3年前に新築したばかりの立派な杉材の本格木造家屋で、決して悪くはなかったのだけれども、私は小屋のようなものでも家は自分の思い通りに建てたいという思いがあったし、環境的にも前後左右に隣家があってどちらかというと町中という感じだったので、申し訳ないが食指が動かなかった。ほかに2〜3の物件を案内して貰ってはみたものの、いずれも帯に短し襷に長しというところで、そのうち陽も落ちてきたので帰ろうということになった。

●縄伸び

 車を止めてあるところまで歩きながら私がもう一度、「やっぱり私は、何にもない山の中の土地に、気に入った小屋を建てるのが夢なんですよ」と言うと、お父さんは突然、「ああ、そうだ。俺んちの上のところに1000坪の山林がある。登記では1000坪だが、実際は2000坪近くあるんだ。見てみるか?」と言う。登記と実際が倍も違うとはどういうことだといぶかりながらも、「はい」と私。「十数年前に私が東京のU区議会議員に世話した土地で、本人は凄く気に入って、一部を宅地用に整地して家の設計も出来て、さあ建てようという時に彼に一身上の事情が生じて、延期になった。それ以後、もう10年も放ったらかしで来ていないなあ。どうかなあ、売るつもりがあるかどうか分からないがね」とお父さん。それで行ってみると、これがなかなかいい。

 緩やかな北向き斜面で、上の方は次第に広葉樹の大木が増えていって、そのまま大山不動尊の杉林に接している。中頃に100坪ほどの宅地が整地済みで、そこに立つと、南から西に連なる森を渡る風が日当たりのいい平地を通って、そのまま北に広々と広がる清澄山系の眺望に向かって吹き抜けていく感じがする。下の長狭街道沿いにあるスーパーや農協バンクや郵便局のあたりまでは300〜400メートルしかないのに、木陰に隠れて建物も街道も視野に入らないし、物音もほとんど聞こえない。宅地の南側の石垣を組んである上の土地はすぐにでも畑になりそうだし、宅地の北側の斜面を下って道路に出る手前当たりはミニ田んぼを作ろうと思えば作れる地形になっている。「これだけあれば、馬を飼っても敷地の中で乗り回せますよ」とK君。「ここは敷地内から水が出るから、水道は引く必要がないよ。東京電力は向こう持ちで電気を引いてくれるけど、水道は自分持ちだから、下から水道を引っ張ったら工事に何百万円もかかるだろう。ここはいい水が出るから心配ない」とお父さん。私はもうほとんどここが気に入ってしまっていた。

 それにしても、これは一体どのくらいの面積があるのか。「公簿は約1000坪だが、実際は“縄伸び”で2000坪近くあるんじゃないか」とお父さんは事もなげに言う。田舎の田畑や山林に縄伸びということがあるのは私も知っていた。登記簿に記されている面積よりも 実測面積の方が多いことで、これは大化の改新による班田収受の時代から、太閤検地、 そして明治初期の地租改正に至るまで、政府の方はそれを元に税金を取り立てるべく、出来るだけ正確に田畑・山林を測量しようとするけれども、現実には今のような計測機器があったはずもなく、1間ごとに結び目を付けた縄で計るのが精一杯だし、役人の数も足りないから辺鄙なところでは今で言う町内会のような組織に自ら測量させ面積を自主申告させたりしたので、農民や地主の方は出来るだけ少なめに登録して税を軽くするよう心がけた。明治20年になって、余りにもデタラメなので可能な限りの修正を行う努力を払った上で、明治22年に「土地台帳」制度を作って地積を登録した。これが今日の登記制度の元であって、都会や平地はともかく山の中に行くと、その時の登録面積のままになっているところも少なくないので、実際に縄を当てて実測すると、あれれ?というほど縄が伸びてしまうことになる。

「ほらあそこに大きな木があって、その上に杉林が見えるだろ。あの辺が上の境だ。この東隣の斜面は昔、地滑りが起きて、こちらとの境は動いてしまったが、まあ大体、あの柿の木のあたりが境だと思って間違いない。いや、ここはこれだけ大きな木がたくさん生えていて、地滑りは絶対にないから大丈夫だ」

 一見して、素人目に見ても1500坪か1800坪くらいはありそうだ。しかし何坪であろうと、1000坪より小さいことは絶対にないし、どちらにしても境界すれすれまで家を建てたり塀を設けようというのではないから、ほとんどどうでもいいことなのだ。そもそも、10年以上も放置されたままの山林は、まず身の丈よりも高く伸び放題になっている草を莫大な労力をかけて刈り取らない限り、境界らしきところまで近づくことさえ出来はしない。

「お父さん、先方に売る気があるかどうか聞いてくれません?」
「ああいいよ。実際に間に立って区議のUさんにこれを売ったのは、友達の不動産屋のYだから、Yを通じて聞いてみよう」
「いくらくらいですかね」
「うーん、Uさんも1000万円だかで買って、整地に何百万か使っているから、1300、まあ1500だったら文句はないだろう。売る気があればの話だがね」
「でもこのご時世だし、縄のびがあるとしても取引はあくまで公簿面積でやるのだから、1坪1万円、1000万円が限度でしょう。それでよければ買いたいと伝えて下さい」

 しばらくYさんを通じたやりとりがあって、その間に家内も現地に連れて行ったが、何より広葉樹の大木があるのが気に入ったようだった。9月末にUさんから最終的な返事が来て、私の言い値で売ってもいいと言う。預金というものをろくに持たない私は、銀行でその額を丸々借りて今日付で払い込み、本当のところ何坪あるかも知らぬまま、晴れて安房鴨川の“山林地主”となったのである。▲

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