INSIDER No.27-1《FROM THE EDITOR》
●驚天動地の米同時多発テロ
深夜に帰宅して、世界貿易センターが崩落する映像を見たときには、それがすぐに現実のこととは思えず、トム・クランシーの小説を元にしたハリウッド映画かと錯覚したほどでした。米国ばかりでなく日本も含めた世界中のどこでも、いつでもこのようなことが起こり得るということもさることながら、“文明国”と言われる場所で豊かで安穏な暮らしを営む我々が世界にはまだこれほどの絶望、これほどの憎悪に生きそして死ななければならない人々がいることをろくに知ろうともしなかったことが、私には衝撃でした。本文では、取り敢えずの分析を試みました(やや時間がかかって発行が遅れました)が、これは当分の間ニュースを覆い続けるテーマとなるに違いなく、本誌としてもじっくり腰を据えて取り組んでいくつもりです。
本文では、事件の経済面の影響について触れる余地がありませんでしたが、16日の「サンデー・プロジェクト」でNYから衛星出演した榊原英資さんが、世界同時不況的な状況が深まっていくのは避けられないが、米国民はその痛みを耐える覚悟をすでに固めていて、時間はかかっても必ず乗り切っていくだろうとの見通しを述べると共に、翻って日本がこれであわてふためいて、構造改革を先延ばししてデフレ対策の名の下に大型補正予算を組むようなことになれば、日本の国債市場が崩落する危険があり、それが引き金となって世界金融システムを揺るがすことになりかねないと提言しました。対談相手の竹中大臣も「そんな政策はありえない。総理の構造改革への決意は揺るぎない」と、いつになく強い調子で断言していましたが、まさにここが焦点であって、危機に便乗する形で自民党内の亀井的抵抗勢力が巻き返しに出ることを何よりも警戒しなくてはなりません。
この問題は近く本誌も詳しく論じるつもりでいますが、要は、3年前の金融国会でのでたらめ極まりない不良債権処理スキームの結果、銀行は土地の不良資産に差し向けられていたマネーを引っこ抜いては国債購入に投じることで政府のバラマキ景気対策を支えてきたという、銀行と抵抗勢力の金融庁を媒介としたおかしな悪循環的共犯関係が築かれてきたわけで、それを断ち切ることが出来るかどうかに小泉政権の存廃がかかっていると言ってさしつかえない。竹中さんは番組後、「敵は内閣の内部にいる。金融庁だ」と言っていました。ところが銀行は目先の存続にばかり目が行って、土地本位から国債本位に乗り換えたことで一層経営の脆弱性が高まっていることに気付いていないかのようで、元日銀マンの木村剛さんが『フォーサイト』で書いているように、新規貸し出しに積極的な支店長から貸し出し権限を取り上げて、余った金を常軌を逸した国債購入に振り向けるという愚行を続けています。貸し出しだと信用リスクが膨らむ可能性があるのに対して、国債なら安心だというのでしょうが、その裏には金利が上がって国債が崩落する金利リスクが貼り付いていて、それについては全くの「不感症」になっているというのです。こういう状況で“金融テロ”でも被ればひとたまりもない。そういう危機管理感覚が求められていると思います。▲