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2011年12月26日

「日本一新運動」の原点(88)── 去年今年(こぞことし) 明星を待つ まつりごと

 平成23年は、菅首相による小沢一郎民主党元代表を政界から排除する動きから始まった。2月27日、民主党役員会は小沢元代表を「党員資格停止」とした。まったく根拠のない理由であった。小沢元代表が、検察審査会から強制起訴されたことを、我が身のためだけの政権維持に、菅首相が利用したのである。この背後には、「小沢を排除すれば長期政権が可能だ」と囁く頭の悪い評論家や、新聞記者たちがいた。

 政治的見識と判断力に欠ける菅首相は、やがて袋小路に陥る。在日韓国人からの違法献金問題を指摘されて、誰もが退陣必死と思った数時間後、東日本大震災と福島第一原発事故が発生する。菅首相は、これで政権維持は可能と内心ほくそ笑んだとたん、国民は、菅首相の統治能力のないことに国家危機を感じ取り、数ヶ月後には退陣を余儀なくされた。

 後継の野田佳彦首相は、人事では「挙党態勢」をつくったかに見えたが、政策は菅政権をさらに悪く継承した。政権交代の総選挙で国民に公約した政策だけでなく、理念すら放棄した。その政治目標は、悪霊に取り憑かれたようになって「消費税増税」を強行しようとしている。このまま突き進めば、世界恐慌の入り口で、国民の生活を破壊し、国家財政をさらに悪くする。その前に民主党そのものを崩壊させるであろう。

 そういえば、野田首相の背後霊に当たる元首相が「野田首相は、消費税増税が出来なきゃ、政界再編の方がましだと考えている。それが野田首相の生きる最適の道だろう」と漏らしたとの噂を耳にしたが、どうやら野田首相を狂わせているのは財務省だけでもないようだ。

 どうしようもなく暗くて不透明な日本の政治の世界に、明けの明星が射し始めた気がする。それは、12月21日(水)に発足した民主党の政策勉強会「新しい政策研究会」(略称・新政研)である。小沢一郎元代表を会長として、「一新会」「北辰会」、「参議院小沢グループ」が統合し、他のグループからも、指導的立場にいる議員が多数参加したとのこと。民主党国会議員の3分の1を超える136人でのスタートだが、「年明けには更に増える」との情報も届いている。消費税に反対するだけではなく、政権交代の歴史的意義を再確認し、国民との公約実現に最大限の努力をしようというのだ。民主党を立て直し、「真正民主党」を創造すべきだ。

 最も重要なことは、「国民の生活が第一」とは単なるスローガンではないという認識である。単なる選挙用のキャッチフレーズと思っている民主党国会議員がいるなら、直ちにその職を辞すべきである。『国民の生活が第一』とは、「マネーゲーム資本主義」に対峙する、新しい資本主義のイデオロギーである。21世紀では、国民の生活を第一にする市場経済社会を創造しなければ人類は生きていけないのだ。136人の「新しい政策研究会」とは、「国民の生活第一党」といえる。マネーゲーム党とか、既得権益党との理念や政策の違いを明らかにすれば、日本の否、世界の夜明けの明星となることができると確信する。

■小沢裁判は民主政治に対する挑戦だ!

 10月6日(水)、小沢氏は陸山会事件の初公判で「検察の不当な捜査で得られた供述調書を唯一の根拠にした検察審査会の誤った判断に基づくものに過ぎない。この裁判は直ちに打ち切るべきだ」と主張した。その後の裁判で、小沢氏の主張どおりのことを、現・元職検事が証言している。いかに検察・司法という国家中枢権力が腐敗し、民主社会を支えることが出来なくなっているか、驚くばかりだ。

 12月16日(金)の第10回公判で、元検事・前田恒彦氏(村木事件で証拠を改竄したとして実刑が確定)は、陸山会事件で東京地検に応援入りしたとき、主任検事から「この件は特捜と小沢の全面戦争だ。小沢を挙げられなかったら特捜の負けだといわれた」とか、「特捜部長の頭の中では、胆沢ダム工事で各ゼネコンから小沢側にいくらかが渡った、という筋を描いていた。水谷建設が裏金提供を認めた5千万円以外の話を出せとの捜査方針に、現場の検事らは(裏金の)話は全然出ず、立件は難しいと考えていて、だいぶ疲弊していた」とか、「小沢氏の立件に積極的だったのは、佐久間部長・木村(主任)検事、大鶴東京高検次席検事ぐらいで、特捜部の捜査は見立て違いで問題があった」という趣旨のことを証言し空恐ろしい捜査の実態をあからさまにした。

 この前田元検事の証言は、私がかねてから主張してきた「政権交代阻止のため、麻生自民党政権が仕組んだ政治捜査で、当時の森英介法務大臣の指示による政治弾圧である」を証明するものである。

 さらに、前日15日(木)の第9回公判では、検察側の捜査報告書の「捏造」が明るみになった。証人として出頭した元東京地検特捜部所属の田代政弘検事が、元秘書・石川知裕議員の保釈後に任意聴取し、捏造した捜査報告書を佐久間特捜部長に提出していたのである。田代検事は石川氏が発言していないことを捏造して、小沢氏が「虚偽記載」に共謀したとの傍証としようとした。石川議員が録音したテープを公開して判明したものであり、田代証人は「記憶が混同していた」と誤りを認めた。

 この田代検事の虚偽報告は、検察審査会が小沢氏を強制起訴した決定的資料となったもので「小沢裁判」の存立に関わる証言だった。

 また、第11回公判では、筑波大学の弥永真生教授(会計学の権威)が、政治資金収支報告の記載、いわゆる「期づれ問題」について証言。不動産取得の計上時期について「土地の引渡時期を外部から確認できる登記時を基準とすべき」と証言し、本登記前に代金を支払っても「前払いに当たる。記載義務はない」とも証言した。これであれば、元秘書・石川氏らの会計処理は「虚偽記載」にあたらないことになる。

 これらの裁判の経過から、多くの国民は小沢元代表は無罪だと確信するようになった。裁判の場で、直接担当した検察官が、これだけ証言することも異例なことだ。世界の先進国なら、ここまでくれば「裁判は打ち切るべきだ」との主張が、法律家や有識者から出てくるのが常識だが、我が国では巨大メディアほど逆の動きをして、相も変わらず「小沢有罪」の合唱が止まない。情報によれば、最高裁事務総局と法務省当局は極秘に「小沢有罪」の工作を画策しているとのことであり、十分な監視が必要である。

 昭和9年、我が国の戦争体制を推進するために、軍部と司法省首脳が共謀した「検察ファッショ―帝国人絹事件」は、公判で当時の警視庁総監・藤沼庄平が「起訴は、司法省の行政局長の塩野季彦らが内閣倒壊の目的をもって仕組んだ陰謀だった」と証言したことから真相が判明し、16人の被告は全員無罪となった。あの帝国憲法の時代にさえ、国家社会の正義を護ろうとする武士(もののふ)がいたのだ。

 世界に誇るべき民主憲法を持つ我が国で、検察・裁判所が政治捜査と政治弾圧を一体となって行うことに怒りを憶える。さらに、国家権力に寄生して税金による意見広告費で生存するようになった巨大メディアが、社会の木鐸たることも放棄して、その刃を国民に向ける。こんな社会に民主主義は存立しない。せめて裁判所だけでも若干の正義が残っていると信じていたが、それも無いものねだりであった。

 「小沢裁判」は、政治捜査とはいえ検察が不起訴としたものだ。それを検察審査会が強制起訴したことによる。そこにいたる経過は森ゆうこ参議院議員の活躍と、市民の努力で真相が明らかになりつつある。それよりも、問題は最高裁事務総局にあるとの情報が寄せられている。小沢氏を強制起訴した「第5検察審査会」で、審査員が選ばれたといわれる経緯。どう審査が行われたのか、特捜から不起訴の説明があったのか、謎だらけだ。

 最高裁事務総局には、聖地にふさわしくない不詳事問題を持っていることは、かつて参議院で森ゆうこ議員が明らかにした。信用できる情報によると、菅政権の有力閣僚が第5検察審査会の補助弁護人の選任に関わり、小沢氏の強制起訴の伏線を敷いたということだ。それを成功させるには、検察審査会を指導・掌握する最高裁事務総局との裏の協力が欠かせない。陸山会事件の政治捜査も民主政治を破壊する不祥事だが、小沢氏を強制起訴するに至った政治権力と司法権力の談合疑惑も究明されなければならない重大問題だ。

 我が国は政策不況と大震災・原発事故により、多くの国民の暮らしが危機に直面している。消費税増税となれば、生活の危機は極限となろう。

 さらなる危機がもうひとつある。それは社会正義を確立すべき司法権、最高裁を頂点とする裁判所が不正常となったことだ。このままで果たして国民が安心して暮らせる社会正義と秩序が維持できるのか、という危機である。九月二十六日の東京地裁の登石判決が典型的な例証といえる。

 私は参議院議員12年間のうち、11年近くを法務委員会に所属して、司法改革に尽力してきた。それがまったく徒労に終わったことが悔しい。その思いを胸に置き、年明けには登石裁判官の訴追請求を行う予定である。

2011年12月22日

「日本一新運動」の原点(87)── 続・『平野貞夫』の消費税制度物語!

 前回の「消費税制度物語」には多数の会員からご意見をいただいた。憲法違反の「小沢裁判」が、次々と新しい展開をみて、司法の不条理さが国民の前に現れているが、まずは「消費税制度物語」を続けたい。

■消費税導入論議の始まりを知ろう

 昭和40年代になって学会や専門家の中で、EC型付加価値税(消費税)をめぐって論議が行われるようになる。

 昭和41年3月、福田赳夫大蔵大臣が「直接税を軽減し、財政需要に応ずるという二つの側面から間接税を増税したい」と発言した。この年に「新経済社会発展計画」が閣議決定され、その中に「消費支出と経済取引につき、広範囲・低率の負担を求める一般売上税、ないしは付加価値税の適否」を検討すべきとの方針があり、政府税制調査会で議論されるようになる。

 私が消費税問題に関わるようになったのは、昭和48年5月、前尾?三郎氏が衆議院議長に就任し、議長秘書を務めるようになってからである。前尾議長は大蔵官僚で、敗戦から占領時代に大蔵省主税局長を勤めた人だ。衆議院議長に就任したものの、肝心の国会運営に関心を持ってくれないので苦労した私は"戯歌"(ざれうた)をつくった。「1に酒、2に書物、3に消費税、4・5がなくて、6に国会」と・・・。

 とにかく、毎日消費税の必要性について聞かされた。占領軍から進駐費を賄うための増税を強要され、それに抵抗したために造幣局長に飛ばされた人で、『税金の神様』といわれた人物である。「一般消費税導入論者」で、議長公邸に、「キャッシュレジスター」(=スーパーなどのレジ)を持ち込んでテストをするぐらいの熱心さであった。

 昭和48年秋、与野党国対委員長を伴って、西欧諸国の議会制度や国会運営の調査に行った。前尾議長が最も熱心に調査したのは"消費税の実態"であった。スウエーデンの首都、ストックフォルムを訪問中、国会の前でデモをやっている集団に出くわした。聞いてみると、チョコレートの消費税20%を23%に上げることに反対するデモであった。よく調べてみると、スウエーデンの消費税は複数税率でビスケットは15%とのこと。それより高級で美味しいチョコレートは20%で、それをさらに3%あげるということだった。要するに、贅沢品や高級品・嗜好品の消費には高い税率を負担して貰おうという思想である。

 大平首相は、昭和54年9月に行われた衆議院総選挙で「消費税の導入」を自民党の公約としたが、これには裏話がある。前尾元議長と大平首相は、ともに池田勇人元首相と深い関係で、宏池会という自民党派閥に属していた。池田さんの参謀というか、相談役が前尾さんで、池田大蔵大臣の秘書官が大平さんで、いわば弟子であった。宏池会の初代会長が池田さん、二代目が前尾さん、そして三代目が大平さんとなるが、前尾さんから大平さんに交代するとき、必ずしもスムーズなものでなく、クーデター的なものであった。

 前尾議長と大平首相の軋轢を正常にすることが、周囲の人たちの念願であった。さまざまな根回しが行われ、最終的には昭和54年8月の末、二人が会談し、前尾さんの要請で「一般消費税の導入」を総選挙の公約とすることになる。会談の直後、前尾元議長が私に話してくれたことは、

(1)法人所得税による財源確保が、国際化によるタックスヘイブン(税避難)で困難になっている。

(2)社会保障費が増大しており、直接税による増収は限界である。

(3)日本の税制の基本は占領下のシャープ勧告にあり、豊かな社会になり個人消費が経済に大きなウエイトを占めるようになった。

 ことなどを挙げ、早い機会に消費税を導入すべきだということで合意し、総選挙の公約となった。

 ところが、総選挙が始まるや「消費税の導入」はきわめて評判が悪く、大平首相が遊説先で「消費税導入」の公約を撤回することになる。それは同年9月26日のことだった。前尾さんは「それでも政治家か」と怒り、自分は公約を撤回しないとして、京都の選挙区で「消費税導入」の必要性を訴えた。結果は落選で、わずか120票の差であった。大平首相率いる自民党は振るわず、かろうじて過半数を維持したものの、"40日抗爭"といわれる党内抗争が起きる。大平首相の続投を阻止するグループは、福田前首相を首班に擁立した。第89回特別国会では自民党から二人の首相候補を出して衆・参両議院で決選投票まで行った。大平首相が勝ったものの、自民党の対応は議会政党といえるものではなく、厳しい批判を受けたが、これも消費税導入論がもたらした混乱であった。

 この年の12月には衆・参両議院の本会議で『財政再建に関する決議』が行われ、「財政再建は一般消費税によらず、行財政改革・税負担公平の確保、税制の見直し等を財源とする」という趣旨であった。(中曽根首相の売上税失敗は国民を騙したこと)

 大平内閣の失政で「一般消費税」(間接税)問題は数年足踏みした。中曽根内閣の「売上税問題」として政治の場に出るのは、昭和60年代になってからになる。中曽根首相は昭和61年6月に、憲法違反の疑いのある衆・参同日選挙を断行し両院で過半数を得て、政局のイニシアチブを握る。選挙中には「国民が反対し、党員も反対するような大型間接税と称するものは、やる考えはない」と公約した。ところが選挙で勝利して、総裁任期を一年延長し、年末になって「売上税の導入」方針を決める。

 昭和62年の第108回通常国会に「売上税法案」を中曽根内閣は提出し、国会は大混乱となる。野党各党は「中曽根首相は嘘つきだ」と抵抗し、売上税法案は議長斡旋で廃案となる。そして各党間での「税制改革協議会」で抜本的改革について報告書をまとめる。この年の10月に中曽根首相は退陣し、竹下登氏が自民党総裁・首相となり、竹下首相の手で本格的税制改革に臨むことになる。(竹下首相の消費税に対する真摯な姿勢)

 竹下首相は消費税を国民に理解してもらうため政治生命を懸けた。その代表的な努力は自ら消費税に対する「6つの懸念」を提示したことである。

(1)逆進性。
(2)不公平感。
(3)低所得者への加重負担。
(4)税率引上げの容易さ。
(5)事務負担の増加。
(6)物価の引上げ(便乗値上げ)

 について、丁寧に説明した。さらにその後、

(7)商品価格に転嫁できるか。
(8)消費者が負担した税が確実に納付される保証があるのか。
(9)地方税の減収により地方財政運営に支障が出るのではないか。

 の3つが増えて「9つの懸念」となった。これらの懸念を解消するため、竹下首相は消費税法案を審議中の昭和63年10月に「行財政改革の推進」について政府の基本方針を決定した。

 竹下首相は平成元年4月1日に消費税制度を施行したが、4月25日、本予算成立を担保にリクルート事件の責任をとって退陣を表明した。

 竹下首相の消費税に対する思いは「9つの懸念」を解消するための「抜本的見直し」と、「財政の赤字を理由に税率を上げる癖がつくと国は潰れるよ」という警告であった。現下の消費税増税論議にはまったく活かされてなく、実に残念である。

■野田首相と藤井税制調査会長は反省すべし

 消費税制度は、税率のありかたも含め、抜本的改革が必要であることは誰よりも私自身が理解している。それは消費税問題の入り口から関わり、関係者の苦悩をよく知っているからだ。

 税制改革は行政ではなく、歴史観に基づく高度な政治判断が必要であり、そのためには次の絶対条件が前提となる。

(1)西欧諸国で高税率の消費税が実施されているのは、政治や行政がすこぶる健全で、国民の信頼性も高く、特に公正公平の税制が機能しているからだ。我が国では、そのための統治に関わる人たちの姿勢ができていない。政治家も、そして財務官僚もまずそこを改めること。

(2)国民を騙して大幅に税率を上げることは、絶対に行ってはならない。政権交代の公約をことごとく踏みにじり、先の参議院選挙で否定された、消費税増税を強行することは、消費税制度そのものの信頼性を失わせることになる。

(3)竹下首相の懸念にもあるように「税率引上げの容易さ」に乗じて、財政赤字の解消というなら国民生活をどん底に落とし、国を潰すことになる。赤字の原因(抜本的行財政改革)を治癒することが先だ。

 野田首相の育ての親は、藤井税制調査会長だ。私とは40年来の知り合いで、内12年は政治的同志だった。行政については優れていたが、政治的見識に欠け、官僚的発想が抜けない人だった。それがクリアーできずに、首相の椅子を逃した人物であった。

2011年12月13日

「日本一新運動」の原点(86)── 『平野貞夫』の消費税制度物語!

 私の本棚の一番目立つところに、『消費税制度成立の沿革』という、厚さ約4センチほどの分厚い本がある。明治26年に京都で誕生し、主として法令集を出版している(株)ぎょうせいから、平成5年5月に刊行されたものだ。著者の名はなく、監修として、竹下登・平野貞夫の名前が載っている摩訶不思議な書物である。

 まず、この書物がどうしてつくられたのかを説明しておこう。海部政権が、本格的に政治改革をやることを決めた平成2年春、竹下元首相がブレーキをかけるようになる。当時、自民党幹事長の小沢一郎が「何か対応を考えないと・・・」と、悩みごとのひとつになり、相談があった。

 私が「さんざん苦労をして消費税制度をつくり、長期政権になるかと思いきや、リクルート事件にけつまづいて辞めざるを得なかった。そんなことから権力への欲求不満、消化不良があるのですよ。鎮魂のために『竹下神社』をつくりましょう」というと、真面目な小沢幹事長は「生きてる人の神社をつくれるのかなぁ・・」と、まともに応える。「神社というのは、竹下さんの功績を記念する行事か、出版のことですよ」と説明すると小沢幹事長は「わかった。そうなると消費税制度をつくった経過などを書物にして、竹下さんの名前で出版するか」と、言い出しっぺの私がその原案を執筆することになった。早速、小沢さんが竹下さんに会い、計画を説明したところ大喜びで準備にかかった。当時の私は衆議院事務局の委員部長職で、多くの部下を管理・監督する立場にあった。そんなことから、私の名前が絶対に出ないことを条件に執筆を始めた。

 平成3年12月には書き終えていたが、翌4年2月、私は参議院選挙に出馬するために衆議院事務局を退職した。原稿は当時の石原信夫官房副長が点検・監修し、職員がワープロに打ち込んだと聞いている。

 参議院選挙が7月末に終わり、8月末には経世会騒動が始まる。竹下さんの"皇民党"問題が国会で採り上げられ、証人喚問要求が出る。その頃、竹下さんから電話があり「竹下監修で出版の話だったが、皇民党問題で国民から批判をうけている。平ちゃん、すまんが君も国会議員になったんだから、名前を出してもよいだろう。二人の監修で出すことにしよう」という経過があった。

 この本は税制の専門家には評判が良く、これを参考にして博士論文を書いた学者が数人いたと漏れ聞いたが、社会の役にたてば結構なことだ。当時の大蔵省の職員もこれで勉強したことがあったようだ。消費税の改革や、増税をいうなら必読の資料だとは思うが、今の与野党の政治家だけではなく官僚も、そして学者ですらこの本の所在を知らないと思う。これだから、消費税制の本質論がすっぽり抜けて、技術的な枝葉末節の低レベルな議論に終始し、国民の側を向いていない。

 後期高齢者になって物忘れがひどくなったが、恥を忍んで、消費税制度の基本について問題提起をしておこう。

(1)大きな税制改革には歴史的必然性が必要だ。
 消費税率を2倍に増税しようとする税制改革は、大きな改革であり、その理由に"歴史的必然性"という根拠がいる。竹下首相時代に導入した「消費税制度」は、占領政策としてつくられたシャープ勧告による直接税中心の税制を改革し、経済成長した我が国の税制を、公平で公正とすることであり、「直間比率の是正」というテーマで徹底的に議論した。

(2)消費税増税論に欠如している歴史観。
 政権交代した総選挙のマニフェストで「任期中の4年間、消費税は増税しない」と民主党は国民に約束した。それを反故にし、裏切るには余程の理由付けが必要だが、麻生自公政権と同じ説明では詐欺といえる。しかも、昨年の参議院選挙で拒否された問題でもある。野田首相ら増税派は議会民主政治を理解していないようだ。松下政経塾では、議会民主政治のイロハを教えていないのかも知れない。

 「財政赤字」とか「社会保障の整備」とか「次の世代に付けを廻さない」などと増税派は屁理屈をいうが、すべて政策技術論だ。政策ミスに原因があることがわかっていないことに問題がある。繰り返して言うが、私も消費税を含む税制改革は抜本的に行うべきだという意見だ。その理由は「歴史的必然性」があるからだ。「社会保障の整備も歴史的必然性だ」と言いたいかも知れないが、それは官僚の技術論だ。

 TPPも同じだが、消費税に関する与野党や専門家の議論を聞くに、全員が20世紀後半の資本主義諸制度を前提にしている。歴史観にずれがあることに問題がある。20世紀の資本主義が崩壊したことに気づかず、欠陥を補えばよいと思っているのか。20世紀の市場経済社会が変質したのが米国のマネーゲーム資本主義だ。

(3)新しい資本主義の骨格づくりが前提だ。
 民主党が総選挙で政権公約した政治目標は「国民の生活が第一」であった。国民はこれを新しい資本主義の骨格だと思い、民主党政権を選んだ。消費税を含む税制改革もこの発想で行うべきだ。「4年間消費税を増税しない」という方針は、ここから発信している。「子ども手当・農家の所得保障」などなどは、米国式マネーゲーム資本主義へのセーフティネットといえる。

 野田首相ら増税派は、「国民の生活が第一」で政権交代して、「マネーゲーム資本主義」という小泉政治に逆戻りし、日本を亡国に陥れるつもりなのか。税制度は国家の政治を特徴づける源だ。急激に変化する21世紀の世界で「国民の生活が第一」の国家社会をつくるため、今まさに税制改革をするべき歴史的必然性がある。しかし、野田首相を狂わせている財務省は、20世紀の資本主義の福祉社会を前提としたものだ。経済成長なき資本主義時代に入った日本社会で、どう日本人が生きていくのか、これを前提に消費税のあり方を議論するべきである。

(4)消費税制度導入時期の最重要事項を知れ。
 竹下首相時代、消費税制度を導入するにあたり、政府与党は徹底的に勉強した。昭和63年10月、政府は、『行財政改革の推進について』を発表した。この冒頭に「来るべき21世紀の経済社会を展望し、『活力ある福祉社会の建設』と『国際社会への積極的貢献』を目指し、行財政改革を推進することは、現下の国政上の最重要課題である」と宣言している。消費税の導入と行財政改革はセットであったのだ。

 この時代は米ソ冷戦が続き、日本経済はバブルだった。平成に入り、冷戦は米国の勝利で終結し、「ポスト冷戦時代」となった。やがて米国マネーゲーム資本主義が、世界の実体経済を壊し、リーマン・ショックでわかるように、20世紀の資本主義は崩壊したのだ。今、我々はあらゆる問題を「ポスト・ポスト冷戦」として考えなければならない。話は脱線したが、消費税導入とセットという大税制改革にも拘わらず、その後、本格的行財政改革は行われていない。

 平成になって「橋本行革」というのがあったが、あんなものは各省庁を併合して数を減らしただけで、権限と予算の実質改革は手つかずのままだ。一昨年の政権交代で、民主党が「予算の組替え」で16兆8千億円の行財政改革を断行すると公約した。私はこれこそ日本再生の鍵と思ったが、財務省振付けの「テレビ仕分け」で茶を濁し、本格的行財政改革は頓挫した。

(5)竹下首相の消費税に対する遺言。
 竹下首相と私の監修で『消費税制度成立の沿革』が完成して、竹下さんが慰労してくれた。その時の竹下さんの話が、今となっては遺言といえる。「なぁ、平ちゃん。消費税というのは危険な税だよ。財政の赤字を理由に税率を上げる癖がつくと国は潰れるよ。それに消費税を施行した年に自民党でつくった"消費税の見直しに関する基本方針"の大きな部分が、そのままになって欠陥消費税だ。日本に合うよう早く抜本的改革が必要だ」と。

 さて、野田首相は消費税増税は「待ったなしだ」と相撲の仕切りような話をして、年内にどうしても税率と実施時期を決めたいようだ。これに反対する意見も高まってはいるが、高橋洋一氏が「税の不公正徴収」の是正で約20兆円の増収になると指摘している。企業がごまかして、社会保険料が年金機構に入っていない問題、所得税脱税の捕捉、「インボイス方式」を採用していない消費税の徴収漏れなどだ。話半分としても、十兆円の増収は固い。

「野田首相よ、まずはやるべきことをやりなさい」と、あの温厚な松下幸之助翁が、泉下で激しく怒っているよ!

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2011年12月 6日

「日本一新運動」の原点(85)── 民主党よ「国民の生活が第一」や「政権交代」はどうなったのか!

 菅政権が統治能力を失い、野田政権に代わって3ヶ月が過ぎた。ご祝儀期間が過ぎ、国民から厳しい目で監視されるようになった。平成21年夏には歴史的政権交代が行われたが、民主党政権の鳩山首相が265日、菅首相が452日と、政治の混迷を象徴するような短い期間である。

 鳩山政権をひと言で総括すると「夢遊政治」といえる。政治の本質を知らない偏差値政治家集団が、経済規模で世界第3位の国家統治をやろうというのだから大変だ。政治は「理想と現実」を調整し、妥協させることが本質であるが、鳩山内閣を動かしていた人たちのやったことは「夢と現実」の調整であった。鳩山首相の個性が影響していたかも知れないが、こんな発想で政治が正常に動くはずはない。 小沢一郎という稀代の政治家を政策遂行から事実上排除したことが、失敗に至るすべての要因であることは、このメルマガでも再々述べた通りである。

 菅政権をひと言で総括すると、「反議会民主政治」といえる。政権中核の内閣官房長官や、民主党幹事長などの言動を分析すると、「不勉強なマルキスト」、否、「米国追随のトロッキスト」といえる。菅首相本人が「議会民主政治は、時間を限定した独裁政治だ」と放言したことがある。この発言は議会民主政治家の資質に係ることで看過できない。民主党内から格別の反論が出ないのは、民主党国会議員の中に議会政治を知らない政治家が大勢いるのではないか、と危惧している。


 鳩山首相は「夢遊政治」であったが、心の中では「国民の生活が第一」という政治目標を忘れてはいなかった。問題は理解の仕方で、高等数学的発想で政治をとらえていたことだ。政治というのは"深層心理学的"に理解しなければならない代物である。理屈だけでやれるならば、コンピューターに任せておけばよい。人間の集団というものから発する「集団的感情」をどう調整して説得するのか、これが政治だ。菅首相の場合、「弁理士シンドローム」が性格のコンプレックスを形成しているといえる。弁理士とは発明家・創造者ではない。特許などの登録出願などの代理や鑑定を業とする。一方の政治家は、創造者でないと役割は果たせない。さまざまな分野から情報を得て、制度や政策を組み立てて、創造する仕事だから『決断と責任』が伴う。政治家・菅直人を分析すると、弁理士的に発明者が出願したものをチェックしたりすること、即ち野党側で政府を攻める(ケチをつけたり、揚げ足をとる)ことには破格の能力がある。しかし、それぞれの情報を整理・判断して、責任を負う形で政治という化物を処理する能力に欠けていた。菅氏が首相となって驚いたのは、国会での論議も国民への説明も、自己の論理を一方的に押しつけようとすることで、説得しようとする姿勢がない。日本の議会主義を崩壊させた政治家として、議会史に残るひとりとなった。菅首相的弁理士能力が発揮されたのは、財務官僚の洗脳とシナリオに乗って、政権交代の原点「国民の生活が第一」を全面否定し、「財政再建・消費税増税」を高らかに表明したときだ。さらに参議院選挙用のマニフェスト発表記者会見で、菅首相は自ら補足説明、消費税を含む税制の抜本改革をめぐって超党派協議を提唱し、自民党提案の消費税率10%を参考にすると表明するにいたったことだ。その後、発言にブレもあり、参議院選挙で歴史的惨敗となったが、反省の弁は聞かれずに終わった。

 国民は、なぜ政権交代を選択したのか。そこでは「消費税増税は衆議院の任期中(4年間)行わない」と約束したはず。それを自民党に抱きつくように10%に賛成すると言ってしまった。これでは政治にならない。完全に「国民の生活が第一」の原点から、自民党の「財界の儲けが第一」に跳んでしまった。東日本大震災の対応も全国民を裏切り、被災者の窮乏さえも顧みることはなく、遂には政権から追われることとなった。

 そこで登場したのが野田首相だ。政府・党役員人事では若干のバランスをとったものの、政策は完全に"韓流"ならぬ"管流"を継承している。野田首相と、管前首相の違いは、菅氏が財務省に洗脳されたのに対して、野田氏は財務省の汚泥で育成された、「ドジョウ」だ。どちらも「民意」を冒涜したことは同じだが、野田首相の方が質(たち)が悪い。

■消費税増税を急ぐことは亡国への道

 野田首相は「平成24年に消費税増税法案を国会で成立させた後、衆議院を解散して民意に問う」という趣旨の国際公約をした。この発言は議会民主政治の本旨を冒涜するものだ。政権交代の総選挙で「消費税増税を4年間やらない」と公約したが、昨年7月の参議院選挙で、菅首相はその公約を反故にして10%にすることを提示した。国民はこれを拒否し民主党は惨敗した。2回の国政選挙で、民意は明確に示されているのだ。

 野田首相はこの事実を何とも感じないなら"政治的精神鑑定"の必要がある。民主政治の原理が、国民主権にあることは憲法にも明記してある。国民は早急な消費税増税を拒否しており、憲法原理からいっても、国会で決めてから総選挙で民意に問うというやり方は許されない。野田首相は、この発言だけをとらえても、政治家である前に、人間としての資質が問われている問題だ。「蚤の心臓・鮫の脳味噌」というが、「泥鰌の脳味噌」を追加しなくてはいけないようだ。

 12月2日(金)、野田首相は記者会見で消費税増税について、「素案を野党に示し大綱をまとめる。大綱を踏まえて法案提出の準備に入る。増税の時期、税率などを含め、なるべく素案や大綱の段階で具体的に明示したいと思う。あくまで年内をめどに素案や大綱づくりに進んでいきたい」と述べ、「消費税増税の捨て石になる」とまで言い切った。何故、こうまでして急ぐのか。野田首相の"背後霊"といわれる勝財務事務次官が焦っているという見方もある。麻生内閣でつくった「所得税法改正案」附則一〇四条を根拠とするという論もある。消費税に関し「平成23年度までに必要な法政上の措置を講ずるものとする」という規定だ。これを財務省は「義務規定」というが、「経済状況の好転」が条件になっているから「裁量規定」である。さらにいえば、民主党は「消費税増税は4年間やらない」と公約して政権交代したのだ。憲法に従えば「政治的裁量」として決着済みであることは明白である。


 さて、消費税増税を急ぐと、なぜ亡国の道になるのか、その理由の一部を述べておく。

(1)平成9年に消費税を5%に上げたときの歴史を学んでほしい。金融危機と重なり、国民生活を苦しめて自殺者を増しただけではない。期待した総税収を減らした上に、橋本政権は参議院選挙中に減税に言及し、自己破綻した。

(2)東日本大震災や、福島原発事故の被災者の生活が元に戻る目途もない。世界の金融危機は、日本のデフレをさらに深刻にさせている状況は平成9年の比ではない。日本経済をどん底に追い込むのは必至だ。消費税を払わない新聞社や、一旦は払っても、いろいろな制度で還付を受けられる大企業だけが影響を受けない仕組みを放置して良いのか。

(3)赤字財政を放置できない論があるが、その通りだ。財政再建は大事なことと私も思う。しかし、よく考えてほしい。財政赤字を解消するための消費税増税なら、財政が恒常的に正常化することは絶対にない。財政赤字の解消は「その原因を改革することが必要」だ。テレビタレント出身の女性大臣がやっている事業仕分けなど、どんな言辞を弄しようとも、財務省作のシナリオを読んでいるに過ぎない。政権交代の総選挙で公約した「総予算の組替」をどうしてやらないのか。予算編成権を手離したくない財務省の振付で踊っているのが野田政権だ。

(4)世界規模の金融パニックが起きて、国債の金利が上がったら日本も財政破綻だ。消費税増税で財源を確保しておくなど、バカも休み休み言え。財務省や日銀の責任回避のために消費税増税をするというのか。財源は「総予算の組替」と節約で捻出可能だ。それに民間の埋蔵金「休眠口座」も立法措置で活用できる。

 最後に結論として言いたいことは、20世紀の福祉社会を前提とした消費税増税はやめるべきだ。社会保障に経費が掛かるから増税という論は、財政赤字のための増税論と同じであることに気づいて欲しい。21世紀の資本主義をどういう形にするか、その原点を何故論じないのか。その上で、公正・公平な総合的税制改革を断行すべきだ。米国マネーゲーム資本主義をモデルにする、野田政権では、日本国民を亡国の道に誘うことになる。

「国民の生活が第一」の共生資本主義社会をつくることが急務だ。

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Profile

平野貞夫(ひらの・さだお)

-----<経歴>-----

1935年、高知県生まれ。
法政大学大学院政治学修士課程終了。
衆院事務局に入り、副議長(園田直)秘書、議長(前尾繁三郎)秘書などを経て委員部長となる。
1992年、参院高知地方区で当選し、小沢一郎と行動を共にする。
2004年、参院議員を引退。
以降、言論執筆活動に専念する。

BookMarks

-----<著書>-----


『坂本龍馬の10人の女と謎の信仰』
2010年1月、幻冬舎


『平成政治20年史』
2008年11月、幻冬舎


『虚像に囚われた政治家 小沢一郎の真実』
2006年9月、講談社


『ロッキード事件「葬られた真実」』
2006年7月、講談社


『公明党・創価学会と日本』
2005年6月、講談社

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