安倍首相電撃退陣の理由として、与謝野官房長官は「総理は仕事と健康の両立に苦悩していた」と語り、健康面が辞任の理由の一つであることを明らかにしました。
そういわれてみれば、11日には報道各社のインタビューを1時間繰り上げ、公務を早退したばかり。永田では昔から政治家の病気は「風邪は癌、入院は危篤」と言われ、二木氏は以前から安倍首相の健康面の不安を指摘していました。
今回は、安倍首相の健康問題について二木氏が昨年11月に《ざ・こもんず》に寄せた文章を再掲載します。
(《ざ・こもんず》運営事務局)
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■政治家と病気 ~大丈夫か安倍さん?~ (2006年11月25日)
朝日新聞が今月11、12日に実施した全国世論調査(電話)によると、安倍内閣の支持率は53%で、前回調査(10月)の63%から10%下がった。
また、安倍首相が自分の政治的な信念や考えを「あいまいにしている」は13%増の55%と、「きちんと説明している」の31%を大きく超えていて、安倍首相の説明不足に不満を感じている世論の様子が伺える。
各メディアにおいて、このままでは来年の7月まで安倍内閣はもたないのではないかという声も聞こえ始めているが、実はもう一つ不安材料がある。
それは安倍首相の健康問題だ。
安倍首相はお腹を壊しやすく、過敏性大腸炎ではないかと言われている。これは難病指定を受けている原因不明の病気で、体調管理に相当気を使う必要があるという。
前々から、安倍首相は腸が弱いとは言われていたが、はたして、そんな状態で今後の激務に耐えられるのだろうか?
言うまでもないが、政治家と病気と言うのは非常に密接な関係にある。
安倍首相の父である安倍晋太郎氏は総理直前ですい臓癌で他界し、病状は最後まで本人に明かされることはなくマスコミにも胆管結石と発表された。
よく、永田町では「風邪は癌、入院は危篤」と言われ、肉体的な生命よりも前に政治的生命を危惧する政治家の風習を揶揄するのだが、これは一つ間違えると国民を欺くことにも繋がりかねない。
例えば、2000年の5月に小渕元首相が心臓病で亡くなる前、当時の自自公連立から自由党の小沢一派が政権を離脱する騒動があり、3党党首による会談が行われた。
その後の記者会見の場で、記者団から「話し合いはどうでしたか?」と聞かれた小渕さんは約10秒間目がうつろのままの沈黙状態が続いた。
小沢一派の連立離脱が相当ショックだったのだろうと私たちは考えたが、実は、あの段階ですでに小渕さんの心臓は完全に駄目になっていたのだ。
そして、その日の深夜に小渕さんは意識不明に陥るのだが、救急車を呼ぶとマスコミに漏れてしまうため、首相官邸にワゴン車をひっそりと運び込み順天堂大学病院に入院させた。
実は、そのタイムラグが小渕さんの死を早めることになったのである。
その後、『五人組』と言われた青木幹雄や村上正邦、野中広務、亀井静香、森喜朗がホテルの一室に集まり森首相が誕生することとなった。
しかし、結局この密室談合が国民の不信感を高め、一年後に森首相は辞めざるを得なくなる。
つまり、もしマスコミに漏れるのを避けずに、すぐ救急車を呼んでいれば、あるいは小渕さんは助かっていたかも知れない。さらに言えば、森首相が誕生することもなく、小泉さんが首相になることもなかったかもしれない。
まだ私が駆け出しのころ、1980年に大平正芳元首相が選挙の直前で亡くなったとき、求心力が失われることを危惧した当時の自民党は大平さんが元気だと証明する写真を公表した。

(C) 2001 THE MASAYOSHI OHIRA MEMORIAL FOUNDATION
そのとき、すでに大平さんは顔が土色でほとんど意識朦朧であったのだが、顔に肌色のドウランを塗り笑顔の写真を撮影した。
そして、その写真を撮影した後に意識不明となり他界してしまったのだ。
その後、大平さんが急死したことを機に、自民党候補の多くは『弔い合戦』という名目の元、衆参同日選挙に大勝した。

(C) 2001 THE MASAYOSHI OHIRA MEMORIAL FOUNDATION
一国の首相の、死を含めた病気というのは極めて政治的で、処理の仕方によっては吉と出るか凶と出るか分からない。
例えば、アメリカではホワイトハウス詰めの記者のことを「デスウオッチャー」と呼んでいる。
つまり、大統領の健康状態というのは国政に多大な影響を与えるため、常に記者は大統領の健康状態(生死)を監視しているということなのだ。
しかし、日本の場合は一貫して悪い状況を隠す傾向にある。
皆さん、これからTVで安倍首相を見かけたら、すぐに顔色を注視しましょう。