小泉チルドレンの片山さつきと佐藤ゆかり両議員が、委員会の採決に欠席したり、河野洋平衆院議長が「本会議中に新聞や雑誌を読まないように」と注意をしたり。国会のタガが緩んでいる。
どうやら、国会内は「学級崩壊」のようになっているらしい。
ケシカランのは事実だが、では、議員が無遅刻・無欠勤であればいいのかと言えば、それは違う。
まず、河野議長の苦言はこうだ。
「最近、本会議中に新聞を読んだり携帯電話を操作したりする議員が目立つ」「傍聴席から見ても見苦しさがある」「若手議員の中にはルールを知らない人もいるのではないか。徹底してほしい」
国会には「議事中は新聞紙や書籍を読んではいけない」(衆院規則215条)というルールがあるから(中学校の校則か?)、守りなさいということなのだが、なんだかなぁ。
確かに、国会取材に行くと本会議場は記者席が上にあるから、机の下に置いた雑誌のコピーを読んだり、携帯メールを打っていたりとヤル気のない学生状態の議員がいる。
委員会もひどい。開始時間までに定数議員が集まらず、各党の理事が携帯で呼びだしたり、始まったらコソ~っといなくなる議員がいたり。
はたまた、資料で折り紙を折ったり、結構、似顔絵がうまい議員がいたり、携帯がかかってきて廊下に出たり(片山議員の採決欠席は、マスコミからかかってきた電話で話し込んでいたから)。
そんな〝国会崩壊〟に議長の息子・河野太郎がメルマガで面白い指摘をしていた。
<本会議の出席率が低かったり、本会議場の態度が悪いのはたしかにけしからんことだが、なぜそうなってしまうのかといえば本会議なんか別に関係ないからである><発言はお互いに原稿を読み上げるだけ、発言者はあらかじめ決まっていて、手を挙げたって絶対に指名されることはない。全ての発言者が黙々と原稿を読み上げるのだ。しかも、自民党の場合、よっぽどのことがない限り、本会議での発言はできない><この間の教育基本法の採決でもわかるとおり、一番多い起立採決では、個々の議員が賛成したか反対したかも記録に残らないのだ><議長がそういいたい気持ちは良くわかるが、そんな表面的なことで文句を言うのではなく、本会議が民主国家の国権の最高機関の本会議らしいきちんと議論が行われ、投票が記録されるもの、つまり本来あるべき本会議にするのが、衆議院議長としての仕事なのだ><それをやらずに表面的に怒っていても、ほとんど意味はない>
陣笠議員という言い方がある。
戦国時代の陣笠をかぶった一兵卒と同じだから、誰なのかは関係ない。でも、陣笠の数で部隊の大きさが分かるというわけだ。
河野太郎説をもう一歩進める。
本会議も委員会も、実は与野党の予定調和で決まる。
欠席しようが寝てようが、法案の中身は別のところで決まるのである。それが国会対策委員会だ。
一時期ナリを潜めた国対政治も、今は大手を振って復活した。
もともと国会には議事運営委員会という公式な機関がありながら、ここでは腹芸ができないから舞台裏でゴニョゴニョやる後ろめたい組織だ。
今では新聞などのメディアも、平気で「……という方向が与野党の国対委員会で決まった」と書いている。
ここで大筋のシナリオが決まるのだから、委員会や本会議は下請けの事後承認機関だ。
陣笠は指示通りに「赤上げて」「白上げて」と行動することになる。
審議も採決も予定調和。野党の質問も事前に官僚が「質問取り」に来て、それを元に資料と想定答弁を揃えて大臣に渡す。
タウンミーティングのやらせを批判できないデキレース。こんなことは国会議員も記者もみんな知っている。
衆院議長が国会のタガを締めようと思うなら、陣笠に忠勤を求める前に「国対政治を止めろ」というべきだ。出たとこ勝負、なんでもアリの審議なら、与野党とも真剣になる。メディアだってルーティンワーク取材でだらけなくなる。
私は米国をロクな国ではないと思っているが、米議会、とりわけ公聴会の徹底審議はうらやましく見ている。
徹夜も辞さない無制限。何が出てくるか分からない本当の審議だからだ。
こんな話は、もう10年前の政治改革、国会改革で出尽くしたものである。それが、まだ足踏み状態、というかナリを潜めていた悪習が完全復活した。
だが、軌道修正は簡単なのだ。
民主党が「国対より委員会で黒白をつけよう」と言えばすむ。教育基本法審議が衆院では欠席、参院では出席というみっともないこともしなくてもすむ。
国会がデキレースでつまらなければ、見てるほうも飽きるに決まっている。