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2006年4月28日

耐震偽装捜査

 姉歯秀次・元建築士(48)らの一斉逮捕で始まった耐震偽装捜査。今後は〝積み残し〟のヒューザー・小嶋進社長(52)と総研の内河健所長(72)を逮捕して、事件の全容に迫るという。もっとも、それぞれの容疑は姉歯が「名義貸し」、木村建設の木村盛好社長(74)が「粉飾決算」と偽装とは無関係のもの。マスコミは「外堀を埋めて本丸に迫る」と解説しているが、この捜査には〝本丸〟がないのだ。

 捜査当局は一連の耐震偽装は組織的な詐欺とみて捜査を進めたが、膨大な資料を当たっても、関係者を事情聴取しても姉歯、木村、小嶋らが集まって謀議をしたり、偽装に共通の認識を持っていた形跡がなかった。つまり姉歯、小嶋らが加害者でインチキマンションを売りつけられた2200世帯が被害者という詐欺事件は構成できない。

 しかし、一連の登場人物を逮捕して処罰しないと、世間が納得しない。だから別件でもなんでも引っくくれというのが捜査方針になった。いわばケシカラン罪みたいなものだ。

 さらにヒドイのは確認検査機関、イーホームズ・藤田東吾社長(44)の逮捕だ。容疑は偽装設計を見抜けなかったことではなく、会社を大きく見せかけた架空増資(電磁的公正証書原本不実記載)容疑。藤田の告発がなければ偽装は公けにならなかったのに、逮捕され会社は廃業に追い込まれた。

 これは、泥棒を車で追いかけて警察に突き出したら「あんた、スピード違反をしただろう」と逮捕されるようなものだ。これでは身奇麗にしていないと不正告発もできないことになる。

 もし、イーホームズを逮捕するなら偽装を見逃した業務上過失でやるべきだが、そうなると同じく姉歯物件を見逃した自治体の確認検査機関である東京都各区、川崎市、横浜市、大阪市などもやらなければならないし、それを認可した国交省の責任も問わなければならない。つまり、ハナっからお役所は捜査対象から外されている。

 だから耐震偽装事件の捜査は、どんどんグチャグチャになってきた。

2006年4月18日

耐震偽装事件は国策捜査

 ようやく耐震強度偽装事件の捜査が動き出した。200人以上の捜査員投入し、押収したダンボール4000箱は1級建築士の資格を持つ職員も狩り出して分析。さらに全国の検察から10人の応援検事を投入した大捜査陣だ。木村建設の社長やヒューザーの小嶋社長らの逮捕は時間の問題だが、この捜査はショボイ幕引きで終わる。なぜか……。

警視庁など合同捜査本部の逮捕方針は以下の通り。

①姉歯秀次元一級建築士(48)……設計資格のない建築デザイナーに一級建築士の名義を貸し、設計料の約2割を報酬として受け取っていた建築士法違反容疑。
②木村建設・木村盛好社長(74)……粉飾決算や虚偽の財務内容を届け出た建設業法違反容疑。
③ヒューザー・小嶋進社長(52……昨年10月末に偽装を知りながら、グランドステージ藤沢の住民に物件を引き渡した詐欺と宅建取引業法違反容疑。

 あれ?耐震偽装の建物を設計し、建築し、売りつけた「グルの詐欺事件」じゃなかったの、と思われるだろう。私もそう思っていた。しかし、容疑は名義貸しであり、粉飾決算であり、宅建業法違反だ。マスコミはお決まりの「捜査当局は詐欺の立件も視野に入れて……」と解説するが、これは常套文句で意味のない言い回しだ。

 この捜査はハナから手足を縛られてスタートしている。国土交通省の責任を不問にすることが前提だからである。疑惑発覚当初、次々と登場する人物のキャラが立ち過ぎていた。その強い個性が事件をショー化させて、そのことが行政の不作為を容易に隠す結果になった。

 ムネオ事件を想起していただきたい。ワルの権化のように叩かれた鈴木宗男には、当時、北方領土利権を含めて70件以上の疑惑が流された。ロシア人が使っているのになぜか英語で呼ばれていた「ムネオハウス」とか「○に宗の字を書いた旗を立てた漁船はロシア領で蟹を取り放題だ」なんてものまであった。マスコミの集中砲火を浴びながら逮捕された宗男の容疑は、しかし、北方領土とは無関係の500万円前後の収賄事件だった。そして、その陰でガセ情報を流し続けた外務省がほくそえんでいた。

 昨年12月、政府・国交省は耐震偽装問題に対する「総合対策」を出し、偽装マンションを自治体が買い取って解体、再建築して分譲するスキームを作った。この経費として80億円の補正予算を組んでいる。ことの真相が明らかになる前の異常な早さだ。これまで政府は、阪神淡路大震災でも中越地震でも「個人の資産形成に税金は出すべきでない」というのが基本方針だったのに、北側大臣は、「倒壊すれば近隣住民への被害が及ぶ」と緊急性を理由に80億円の拠出を決めたのである。

 素早い対応の背景は簡単。耐震偽装を見逃し続けた検査機関の認可を出してきた責任を隠すためである。そして総合対策には次の文章が盛り込まれた。

 「関与が疑われる業者への刑事責任の徹底追及を行う」

 逼迫する財政の中から80億円を拠出するには、「ワルをは引っくくるからね」と理由付けしなければならなかったということだ。「とにかくお縄にすることが使命。罪状は何であれ」−−。国策捜査である。

 メディアは〝業〟として耐震偽装の主役たちの逮捕劇を報じるだろうが、国交省の役人たちは忍び笑いをしているはずだ。

2006年4月11日

長らくご迷惑をおかけしました

クリックするたびに、「あ〜〜まだサボっている」と思われた方もいらっしゃるかも。長らく〝基礎工事中〟だった当コラムをスタートさせます。私が日刊ゲンダイで取材したり、書いたりしたこととは別の視点で(だいたい書ききっていますが)、「ああじゃないか」「こうだろう」と綴ってみます。
次回、本格始動!

Profile

二木啓孝(ふたつき・ひろたか)

-----<経歴>-----

1949年、鹿児島県出身。
明治大学在学中から出版社勤務。
1979年、小学館「週刊ポスト」専属記者。
1983年、「日刊現代」入社。編集局配属。
1995年、編集部長。政治、企業事件、宗教問題をテーマに取材・執筆。
2007年、「日刊現代」を退社。現在、BS11編成制作局長。

-----<出演>-----

『インサイドアウト』
(BS11)
『NEWSゆう+』
(大阪ABC)
『おはようコール』
(大阪ABC)
『パックイン・ジャーナル』
(朝日ニュースター)
『アクセス』
(TBSラジオ)

BookMarks

-----<著書>-----


『宗男の言い分』
2002年7月、飛鳥新社


『殺人心理』
2000年10月、アスキー


『永田町の通信簿』
1996年12月、作品社

『手に取るように政治が分かる本』
かんき出版

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