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2012年5月 8日

「小沢問題」は終わった ── 日本再建、新たな国づくりを始めよう

 小沢一郎は、当然のことながら、「無罪」だった。「小沢裁判」の争点は、土地代金の支払いを平成16年分の政治資金報告書に記載すべきか、17年分の報告書に記載すべきかという、取るに足らない、形式論、手続き論的なもので、「4億円は裏金のはず」だという「東京地検特捜部の『妄想』から始まった」(3.19最終弁論)「国策捜査」であることが、初めから自明だった。しかしながら、政治的には深刻な意味をもつ「裁判」だった。与野党を巻き込んだ3年余に及ぶ検察、マスコミの「小沢抹殺」のシナリオは、日本の政治を停滞させただけでなく、腐敗させた。反小沢の急先鋒・菅政権は参院選で大敗し、民意が選んだ「政権交代」を水泡に帰してしまった。3・11大震災と原発事故には最も優秀な人材を結集し、文字通り「挙国一致内閣」で対処すべきだった。しかし、マスコミは小沢の復権に恐れおののき、自民党のお歴歴には、この機に乗じて大臣になりたいというさもしい下心が透けて見え、民主党政権には大災害に対処する能力も胆力も、復興の創造力もないことがわかった。国民は冷静だったが、幼稚なリーダーたちがパニックに陥ったのだ。それにしても取り返しのつかない3年余だった。

 刑事訴訟法336条は「被告事件について犯罪の証明がないときは判決で無罪を言い渡さなければならない」と規定している。これは「検察官が被告人の有罪を証明しない限り被告人に無罪判決が下される」という「推定無罪」の原則と理念によるものだ。

 判決文要旨(NHK)は「被告人は、本件合意書の内容や交渉経緯、本件売買契約の決済日を変更出来ず、そのまま決済されて、平成16年中に本件土地の所有権が陸山会に移転し、取得費の支出等もされたこと等を認識せず、本件土地の取得及び取得費の支出が平成17年に先送りされたと認識していた可能性があり、したがって、本件土地の取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上すべきであり、平成17年分の収支報告書には計上すべきでなかったことを認識していなかった可能性がある。また、被告人は(中略)本件4億円を借入金として収支報告書に計上する必要性を認識しなかった可能性がある。これらの認識は、被告人に対し、本件土地公表の先送りや本件4億円の簿外処理に関し、収支報告書における虚偽記入ないし記載すべき事項の不記載の共謀共同正犯として、故意責任を問うために必要な要件である。このような被告人の故意について、十分な立証がされたと認められることは出来ず、合理的な疑いが残る。本件公訴事実について被告人の故意及び石川元秘書ら実行行為者との共謀を認めることは出来ない」と明快である。

 ここで誤解を避けるために一言、解釈したい。「合理的な疑い」とは、被告人に疑いがあるのではなく、有罪を立証しようとする指定弁護士の言い分に「合理的な疑いがある」ということである。この点については判決文95ページ全文を精読した鳥越俊太郎の5月5日付の毎日新聞「ニュースの匠」が核心を衝いていて、面白い。

 会員制の高級情報誌『選択』5月号は小沢判決に関連して「『市民感覚』で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表に無罪判決が出た。『けしからん』による被告人づくりの限界を見せ付ける格好となった。一方、自らの手で小沢氏を訴追できなかった検察が意趣返しで『市民』をけしかける裁判でもあったが、ここでも検察は完全敗北を喫するはめとなった」とクールに伝えている。しかし、3年以上、「小沢抹殺」に狂奔し、「有罪」に陥れようと画策したマスコミの落胆は相当なものだった。大手各社の社説は「結論はシロだが、『潔白』ではなく『灰色』という司法判断だろう」(読売)、「刑事事件を問えないまでも政治家の責任を厳しく問う判決だった」(毎日)、「(無罪判決を受けて)小沢氏が政治の表舞台での復権をめざすのは間違いない。民主党内には待ちかねたように歓迎論が広がる。だが、こんな動きを認めることはできない」(朝日)など相変わらず「小沢抹殺」の旗を振り続けている。「司法の決着はついたが、道義的、政治的責任は残る」と再攻撃の先陣を切ったのはNHKの「無罪判決報道」の重点ともとれるものだった。

 1933年、朝毎読など日本の新聞社132社は軍部と結託し、国際連盟脱退の「世論」を醸成した。その結末は「原爆投下と敗戦」だった。権力におもねるこの日本の「報道文化」は今も変わっていない。日本には本物のジャーナリズムはない。ほとんどは「権力」の番犬だ。数少ない本物のジャーナリストは発言の場がじわじわと狭められている。背筋が寒くなるのは私だけだろうか。

 フランス大統領選で現職のサルコジ大統領が落選した。ギリシャでは連立与党が過半数を割った。ヨーロッパは再び、不安と激動の時代に入った。中国も中南海の舞台裏では改革派、毛沢東派、保守派の利権と権力をめぐる血みどろの暗闘が続いている。アメリカもTPPなどアジアに覇権を求める新帝国主義の時代になった。そして、日本は羅針盤も司令塔もない漂流する「難破船」の時代にある。

「小沢抹殺」のための悪あがきはやめにしよう。この国にそんな悠長な時間はないはずだ。野田総理に勇気があるならば、内閣大改造をし、小沢を副総理兼幹事長として国難に正面から立ち向かうべきだ。小沢は絶対者でもなければ万能の士でもない。欠点も多い不器用な人間だ。しかし、今の日本に彼を凌駕する政治家がいないのも寂しいことだが、現実だ。

 小沢系の新政策研究会は6月をメドに、八方美人的ではない大胆かつ根源的な政策提言をするそうだ。百年後を見据えた壮大な国づくりを始めよう。足元を見つめ、固めながら、東北の復興、大東北づくりを起爆剤にしながら、日本の建て直しをしよう。乱世こそ英雄豪傑、哲人が出る。日本を最大の難局から救うのは、偏差値の高い「学校優等生」や庶民的人気の高い芸能人的政治家ではない。私は英雄待望論者ではないが、これは歴史の方程式だ。

Profile

二見伸明(ふたみ・のぶあき)

-----<経歴>-----

69年12月の衆院選に初当選し、以後8期23年。
小沢一郎、羽田孜、石井一、森喜朗と同期。
公明党政策審議委員長、副委員長、運輸大臣を経て、94年、新進党。
97年暮の新進党解体により、小沢の自由党結党に参加。総務委員長、国対委員長。
2000年春、自由党分裂に際し、小沢と行動を共にする。
小沢対羽田の一騎打ちの新進党党首選では「四海波穏やかなときは羽田がベストだが、激動期は小沢の豪腕がベスト」と表明し、小沢の推薦人になる。

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