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2010年6月29日

なぜ、消費税増税? ── 「官」が「菅」を支配する

 半世紀以上、官僚の筋書きどおりに踊ってきた自民党が、「消費税10%」を主張するのは、「ははぁん。財務省の入れ知恵だな」と十分過ぎるほど理解できるが、「3年前の参院選でも去年の衆院選でも、『すぐ消費税を増税することはしない。行政の無駄を徹底的に省く』というのが主張だった」(小沢一郎、6.24、山梨)で勝利したはずの民主党が、シャッポが菅直人に代わった途端、党内議論もろくにせず、「2,3年後に消費税10%増税」を打ち出した。不可解千万である。
 鳩山前総理は「普天間迷走」の責任を取って総理の座を棒に振ったが、政治主導を何とか貫こうとした。しかし、菅の「盲暴走」は鳩山とは質が全く違う。国民生活を犠牲にし、デフレをさらに深刻化させるものだ。彼は、「普天間問題」でアメリカの圧力と外務・防衛官僚のサボタージュを目の前に見て、対米・対官僚従属路線に切り替え、「政治とカネ」では検察の理不尽な執拗さを思い知らされた。今度は、「官僚中の官僚」・財務省の反乱を防ぐため、「消費税」で懐柔しようとしたのか、財務官僚はにんまりであろう。長期政権を目論む菅総理は、「政治主導」をかなぐり捨てて「官僚主導に逆戻りしたほうがよい」と判断したのかもしれない。なにしろ、菅を取り巻く財務相・野田佳彦、国土交通相・前原誠司、政調会長・玄葉光一郎らは松下政経塾出身の、「バリバリの消費税増税論者」であり、小泉・竹中路線の信奉者だ。そして、彼らの後ろ盾・仙谷官房長官は、全共闘出身の、権謀術数のやり手で、枝野幸男幹事長は仙谷の一の子分である。旧民主党議員の中には、官僚、マスコミ出身者が多く、当然、新自由主義者が多い。そうでなければ、菅の唐突な「消費税10%」発言は理解出来ない。

■民・自大連立への布石? 結局は「官僚ファシズム」の完成へ!

 民主党はマニフェストで、財政健全化のため「消費税を含む税制の抜本改革の協議を超党派で始める」と明記した。「税制の抜本改正」といえば、聞こえはいいが、ひらたく言えば「人民から、どうやって、より多く、年貢を取り上げ、『お上』の借金の穴埋めをするか」ということだ。「税を減免」するために超党派で協議会を設けるのであれば、(財務官僚は反対するであろうが)それなりの意味はあるが、「増税のための超党派の協議会」など、かつて、聞いたことがない。そもそも、「議会」とは「君主」(=官僚)の専横をチェックし、「増税」に反対するために生まれたのだ。それを、本来であれば、「税金の無駄づかい」を徹底追及すべき野党・自民党が、「天に唾すること」になるのを恐れて、与党気取りで消費税増税の協議会を呼び掛けた。菅は総理の座に舞い上がり、財務官僚の「財政健全化・増税こそトレンディ」との甘言に、「国民の生活が第一」を忘却の彼方に放り投げ、自民党の提案に飛びついたのである。
 その狙いは何か。「赤信号、皆で渡れば恐くない」である。その結果、国民生活が破壊されれば「一億総ざんげ」だ。日本政治専売特許の「誰も責任を取らない」の典型である。そして、もっとも憂慮すべきは、「消費税増税」をキーワードとする民主・自民の大連立である。「社会保障にはカネがかかる。借金財政では財源不足で、年金も支払えなくなる」という「消費税増税を肯定し、一切の増税批判を拒絶する」風潮である。
 国債と税金の違いは、国が国民に「○○円、お借りしました」という借用証書が国債で、国(=官僚)が、国民から有無を言わせず取り立てるのが税金である。消費税を増税して「国の借金を返す」だの「増税した分で経済を活性化する」など、「バカも休み休み言え」と言いたい。「官僚」は、エリート中のエリートだと自負し、政党や政治家を見下す、万能で、超然たる存在だと思い込んでいる。そして、マスコミは「国民も成熟して、消費税についての理解が深まった」と報道し、批判派に「時流を知らない馬鹿者」と烙印を押して、「官僚」にゴマをすっている。「官僚ファシズム」の完成である。

 ギリシャの財政破綻は深刻である。しかも、ユーロ圏にはギリシャ以外にもスペイン、ポルトガル、イタリアなど、財政が危機状態にある国があるので、ドイツや英国などユーロ主要国が「財政再建が最優先」を打ち出し、増税や歳出カットに踏み切るのは、それなりに理由がある。しかし、それが結果として世界の景気の足を引っ張り、さらなる財政悪化を招く恐れのあることも留意しておいた方がいい。
 日本の、国と地方を合わせた長期債務残高はGDP比180%で、ギリシャの130%より、数字的には、はるかに悪い。にもかかわらず、財政が破綻しないのは、農業国ギリシャと違って、経済の規模、構造など経済力や質が比べものにならないほど大きく、高度なこと、日本の国債は、95%を日本人が購入しているのに対し、ギリシャ国債の70%以上は、外国の機関投資家や外国政府が保有していること、ギリシャは債務国だが、日本は債権国だ、等々である。だからといって、財政赤字を放置するのは言語道断だが、数年後にも、日本がギリシャの二の舞を踏むかのような危機感を煽り、菅総理や自民党の谷垣禎一総裁が「最優先すべきは財政の健全化で、そのためには、まず、消費税増税ありき」と喧伝し、大手マスコミがそれをヨイショしている、その光景は異常で、不気味ですらある。
 財政健全化とは、限られた財源を、「無駄を排除」し、国民生活の安定、新たな成長分野への投資などに有効活用をすること、いうなれば、財政構造の改革である。「無駄の排除」とは、「事業仕分け」という「見世物」ではない。「ひも付き補助金制度の廃止」「独立法人の民営化または廃止」「特別会計の改廃」など制度そのものに切り込むことだ。借金財政から脱却するためには、まず、徹底した「無駄の排除が最優先されなければならない。しかし、官僚は自分たちの既得権益が侵されるので、猛反対である。増税を最も望んでいるのは「官僚」そのものだ。

 現在、我が国が抱えている借金を減らす王道は、景気回復と「無駄の排除」である。その結果生まれた税の自然増収の一定割合を「借金の穴埋め」に充当するのだ。半世紀近くかけて積み上げてきた借金の山を、短時日で返済しようとするところに無理がある。
 経済が委縮し続けているデフレのど真ん中で、消費税の増税は絶対にしてはいけない禁じ手である。消費は抑えられ、経済は縮小し、非正規社員、失業者が増え、貧富の格差は拡大する。地方の疲弊は計り知れないものになるだろう。また、赤字穴埋めのための増税が赤字拡大の悪循環を生じかねないのだ。1930年代の金解禁デフレを教訓にすべきだ。

 菅総理が切り換えようとしている「現実路線」とは、「対米従属・官僚主導」の政治である。多少の改良はあっても、抜本的な改革はないので、マスコミも安心していられる。装いを変えた、「新55年体制」である。これは、「政権交代可能な二大政党制」を飛び越えた、「新大政翼賛制」に通じる危険な道である。参院選は、政権交代の評価もさることながら、民主党の基本理念・政策になった小沢の掲げる改革路線=新しい政治か、「官僚主導」に先祖返りするか、を問う選挙でもある。「消費税増税」は日本の政治が抱える大きな問題の氷山の一角である。

2010年6月16日

どうも腑に落ちない

 どうも腑に落ちない。自民党政治に終止符を打ち、新しい政治をつくることに賛成の私にとって、民主党の支持率がV字型に回復し、菅内閣の支持率が軒並み、60%を超えたことは歓迎すべきことではある。だが、本能が私に、「何か変な感じがする」と囁きかけてくる。
 鳩山総理と小沢幹事長のダブル辞任の理由は「普天間」による支持率の低下のはずだった。それだけに、菅総理が容認した「日米合意」に、「世論調査」がどう反応するのか、興味津々だった。ところが、10日の朝日新聞では「評価する」49%,14日の日本テレビでは、55.2%が「支持」であった。読売、毎日は、「世論調査」の設問にもしていなかった。鳩山を辞任に追い込んだマスコミの「世論調査」は何だったのか。鳩山が「迷走」したから「普天間」には反対したが、シャッポがかわったから、「賛成」するというのであれば、「世論調査」は、本来の目的である政策の中身の評価ではなく、その時々の気分で左右される、信憑性の薄いものでしかない。「世論調査」の数字を冷静に考えると、鳩山は「普天間」で辞任する必要はなかったと思う。

 小沢一郎の幹事長辞任に関連して、読売は「枝野幸男の幹事長就任」について「評価する」64%、「評価しない」15%、「小沢前幹事長とは距離を置く議員を起用したこと」を「評価する」76%、[評価しない]15%で、朝日も同趣旨の「枝野幹事長就任」を「評価する」58%、「評価しない」16%であり、脱小沢人事についても「評価する」60%、「評価しない」16%だった。
 毎日新聞では、「小沢の幹事長辞任」を、81%が評価し、18%が評価しないと回答し、日本テレビの調査では、「小沢幹事長辞任でけじめを付けたと思うか」という質問に「つけたと思う」が23.8%,「つけたと思わない」68%である。マスコミ各社はこれらの調査結果を見て、「世論」は、「菅内閣が脱小沢を鮮明にしたことを評価し、内閣支持率が急上昇した」と報じた。自民党の谷垣総裁の弁「菅総理が小沢を抵抗勢力にして、支持率を回復した」も、あながち、的外れではない。とにかく、「世論調査」の数字の濫用がうさんくさい。

■にもかかわらず小沢支持は大きい

 しかし、毎日新聞の「小沢幹事長辞任」を「評価しない」18%,日テレの「幹事長辞任でけじめをつけたと思う」23.8%,という数字、また、読売、朝日の、間接話法的な「脱小沢」を肯定させようとするかのような質問に対し、それぞれ、15%、16%が「評価しない」としている。この数字をどう解釈すべきなのか。単純に比較すると、誤解を招く恐れがあるが、小沢を「肯定」または「支持する」する勢力が、自民党の支持率を上回る20%前後あることは、留意していたほうがいい。「小沢バッシング」の嵐にもかかわらず、有権者数では1500万~2000万人が小沢を支持していることになる。小沢は、2002年、自由党が自自公連立から離脱し、それに反対する多くの議員が離党した最悪の状況のもとでの衆議院選ですら、650万票を獲得した。「小沢抹殺」を目論むマスコミの大部分=すなわち「世論」の、嵐のようなバッシングを受けてなお、民主党の代表、幹事長として輝かしい実績を示した小沢への期待が、依然として大きいことを物語っている。

 マスコミは小沢の「息の根」止めようと、執拗な攻撃をしてくるのは間違いない。しかし、「小沢は黒いカネをもらっているはずだ」という検察の思い込みは、一年半以上の、徹底した捜査にもかかわらず、検察が、自ら否定せざるをえなかった。マスコミが最後の望みを託した検察審査会も、マスコミの期待に反して「4億円」への言及はなく、単に、「石川秘書が、土地売買の日時を二カ月余り遅らせて翌年一月にずらした『期ずれ』がけしからん」というものである。これも、すでに、小沢を起訴したくてたまらない、プロ中のプロ、地検特捜部ですら「シロ」と認めているのだ。それを、あたかも、天地がひっくり返る大事件、大スキャンダルであるかのように書きたてているマスコミの「脳力」は「委縮」し「硬直」しているとしか考えられない。多少でも「脳力」に健全な部分が残っているならば、昨年3月3日以降の、検察のリークを、そのまま記事にして、世論を一定方向に誘導した「罪」を総括すべきだろう。「健全な民主社会」の重要な要素であるべき「言論機関」が「世論ファシズム」の旗手になるとは「お釈迦様でも気が付くめぇ」である。テレビ各局は、検察から「出入り禁止」という「報復」を覚悟の上で、厳しい検察批判をしている郷原信郎教授を出演させるだけの度胸があるのか。

■戦略的思考と情報、知恵が必要、そして、ぶざまな日本のマスコミ

 駐ブルネイ大使、駐ネパール大使を歴任し、今月15日に「中国への長い旅」という備忘録(田畑書店)を出版した吉田重信氏は、6月14日、民主党政権について私に次のように語った。

 「米政権が鳩山政権の基地移転の要求を頑として受け容れなかったのは、そのことにより、日本が米国に占領された属国であることを日本や諸国に納得させることにあるとうがって考えたくなるほどである。さらに、日本側にも抵抗勢力があり、外務省と防衛省をはじめとする官僚勢力が鳩山政権の意向に抵抗したのである。しかし、もっとぶざまだったのは日本のマスコミや多くの言論人の言動であった。彼らは、ワシントンで米国政府筋から得た情報などをもとに、『米政府は鳩山政権に不信感をもち、日米同盟は危機に瀕している』などと大袈裟に書きたてることに余念がなかった。彼らの様子は、一体どこの国のマスコミ・言論人かと疑いたくなるほどだった。これは、彼らが引き続き米国の強力な支配のもとにあり、米政府のお先棒を担ぐ体質であるからだろう。日本もそろそろいつもアメリカに対してイエスばかりではなく、ノーという外交を学ぶ時がきているようだ。そのためには、戦略的思考、情報と知恵がいる。これが今後の民主党政権が求められている執権党としての適格要件のひとつであると考える」

 ことは、小沢一郎でなければ出来ない大仕事である。「親小沢、反小沢」という「コップの中の嵐」で時間を浪費している暇はない。私は、昨年5月、「THE JOURNAL」に「剛腕・小沢は《公共財》だ」と書いたが、「好き嫌い」を超越して小沢を、日本のために活用すべきだ。

■選挙はロマンだ

 谷亮子が「母親」「ロンドン・オリンピックでの金」「国会議員」の三足の草鞋を履くべく、頑張っている。前人未踏の難関に挑む谷に、現代人が失いつつある、夢のように大きなロマンを感じる。静岡の中本なおこ(工学博士)、茨城のながつか智広(アテネオリンピック銀メダリスト)など、複数区に挑戦する新人たちに、みずみずしい冒険心と強靭な自立心を見る。時代は「風頼み」ではなく、自力で切り開いていく、たくましい政治家の登場を待ち望んでいる。

2010年6月10日

「動かざること山の如く、動くこと雷霆の如し」 ── 孫子の兵法

 鳩山総理の辞任を後世の政党・政治家は反面教師にしたほうがいい。鳩山辞任の本源的原因・理由は、日本の政治家に共通する、利権獲得など、自分の利害に絡む低次元なものには知恵を働かせることはあっても、国益に関わる大きな目的を達成するための論理・戦略・戦術が欠如していたことである。(鳩山には利権など低次元の問題はない)。
 政治を動かすのは「情」、言葉を換えれば「天をも焦がす大情熱」である。鳩山には「国外、県外」という思いはあった。しかし、「大情熱」はなかった。「大情熱」を支える強靭な論理も、戦略、戦術もなかった。だから、「綸言汗のごとし」を理解できず、発言が二転三転し、沖縄県民の不信を買った。国民、なかんずく沖縄県民は「国外、県外」が尋常ではない難題であることは、百も承知だった。それだけに、「戦略、戦術もないこと」に、国民は失望した。

 昨年2月17日のクリントン米国務長官との会談で、小沢一郎代表(当時)は日米同盟の重要性を十分認識した上で、「一方が従属する関係ではなく、互いに主張し合い、議論して良い結果を得て初めて成り立つ。まず両国の間で世界戦略をきちんと話し合った上で、個別問題に取り組むべきだ。これまでそうしたことはなされてこなかった」と、自民党との根本的な違いを述べた。また、数日後、記者会見で「今の時代に米国が前線に部隊を駐留させるのは意味のないことではないか。極東地域における米軍のプレゼンスは(神奈川県横須賀基地を拠点とする)第七艦隊だけで十分ではないか」と発言した。これは、「日米同盟」の名のもとに、カレル・V・ウォルフレンに「例を見ない"宗主国と属国"の関係」と厳しく指摘された日米関係を「真の対等関係」に革命的に見直すものであり、「第七艦隊」発言は、「普天間移設・沖縄問題」解決のための、基本的な提言であった。このため、オバマ政権は小沢を「扱いにくいパートナー」と警戒したが、アメリカでは小沢評価が急上昇した。日本では、河村官房長官(当時)が「政権交代を目指す政党がこんなことで良いのか」と、外交・防衛問題音痴丸出しの的外れなコメントをしただけで、論議を深める動きは、ほとんどなかった。「普天間移設」を抱えていながら、鳩山も、また、総理を支えるべき副総理の菅直人、仙石由人国家戦略担当相も小沢発言の重大性をほとんど理解していなかった。鳩山は、「普天間」について、小沢に一言の相談もしなかった。岡田外相、北沢防衛相、平野官房長官、前原沖縄担当相にいたっては、当初から、「辺野古」論者だった。谷垣自民党総裁にとっては「小沢理論」は想像も及ばない「論外」だろう。「安保五十年」はアメリカ従属を「空気」のように当たり前に受け入れる政治家や官僚を生みだした。鳩山辞任は当然の帰結であるが、これを期に、「国を守る」ことや「日米同盟のあり方」について、真剣な議論が巻き起こることを期待したい。菅総理はその力量と見識が問われるだろう。

 私は鳩山総理の辞任の弁を七十三歳の老嬢が営む理髪店で聞いた。彼女は髭を剃りながら「なぜ、鳩山さんは日本のすること、アメリカのすることを話し合ってから沖縄問題を解決しようとしなかったのでしょうか。順番を間違ったみたいです」と話しかけてきた。
鳩山が「『私も辞めるから、幹事長も辞めてもらいたい』と言って『わかった』と了解していただいた」と言ったとき、私は、これは違う、小沢が「普天間の責任を取って私も辞めるから、総理も辞めてもらいたい」と言ったのではないかと思った。鳩山は、小沢を「政治とカネ」で悪人に仕立て上げ、自分を美化しようとしているのではないか、と直感した。老嬢も「新聞、テレビを見ていると、鳩山さんは続投したかったのではないでしょうか」と、怪訝そうだった。「世論調査絶対思想」に毒されない無名の庶民の感性は鋭い。日本人も捨てたものではない、と感じた。

■民主党を救った男
 鳩山総理誕生の原点は、民主党と自由党の合併である。2002年暮れ、鳩山民主党代表は経団連に年末の挨拶に行ったとき、財界首脳から「総理になりたかったら、小沢さんに弟子入りしなさい」とアドバイスされた。その後、政界の御意見番、松野頼三氏からも同じ趣旨のアドバイスを受けた。鳩山は、父・威一郎の大蔵省(現財務省)主計局長時代の部下・藤井裕久自由党幹事長に、民・由合併の仲介の労を頼んだ。当初、鳩山の真意を測りかねていた小沢も鳩山の熱意にほだされ、合併に踏み切った。しかし、それがマスコミを通して知られ、党内に「小沢怖し」の大合唱が起こって、鳩山が代表を辞任し、菅直人が、小沢自由党との合併を否定して代表になった。しかし、したたかな現実主義者・菅は、「小沢の力なくして、政権奪取は不可能」という現実を知り、あらためて、小沢との合併を模索し、03年夏に合併した。
 民・由合併の際、両党の理念・基本政策を調整した自由党側の代表・藤井裕久・中塚一宏(現衆議院議員)両氏から私に「民主党側の代表、枝野さんは『自由党の理念・基本政策には全く異論はなく、完璧です。民主党の理念・政策として採り入れさせていただきます』と連絡があった」との報告があった。(私は、自由党の基本政策「日本再生への道」「日本再構築への道」を作成した責任者であった)。小沢は「改革実現のため」、党運営に全く影響を及ぼさない「一兵卒」として、「喜んで働く」ことを表明した。これがその後の民主党を救うことになる。

 民主党は、「年金未納問題」で辞任した菅直人から代わった岡田克也代表の下で、小泉純一郎総理の策謀にのせられて政局を読み誤り、郵政選挙の「大義」を与えて、惨敗した。岡田の後継の前原誠司も、野田佳彦国対委員長(当時、現財務相)と共同して指揮した「偽メール事件」で、「無能ぶり」をさらけ出し、解党の危機に直面した。それを救ったのは、小沢一郎だった。
 小沢は、衆議院千葉7区補選で、圧倒的優勢といわれていた自民党候補を打ち倒して民主党を上昇気流に乗せ、参院選、衆院選を大勝利に導いた。その間、おしゃべり好きの、しかも、誰も最終責任を取る気のない「座談会政党」(これが「民主党らしさ」の本質だ)を、本気になって政権を取りに行く、ノーマル(正常)な政党に体質改善したのも小沢であった。

 「普天間移設」について、「世論」の批判は頂点に達し、改選期の参院議員は震え上がった。菅副総理、総理の御意見番を自認する仙谷国家戦略相をはじめ、全閣僚が鳩山総理の続投を支持し、本人もその気でいて、参院選惨敗が濃厚になった。「誰も鳩山の首に鈴をつけられない」と絶望したときに、動いたのは小沢だった。断崖絶壁から飛び込み、民主党を救い、死の淵でおののいている改選組を引っ張り上げ、鳩山に有終の美を飾らせたのは小沢である。東京新聞は6月2日の朝刊一面で「5月31日、小沢幹事長が総理に『いっしょに辞めよう』といったが、鳩山は首を横にふった」と報じた。読売はもっと露骨で、3日の一面に「小沢氏が引導電話『政権持たぬ』」という大きな見出しで、「鳩山、小沢、興石との2度目の三者会談から3時間余り過ぎていた1日午後10時ごろ、小沢が鳩山に電話し『参院が止まれば、法案が1本も通らなくなる。政権運営なんて、出来ないんだよ』。小沢は、鳩山が招いた社民党の連立政権離脱を、丁寧に説明した。小沢からの事実上の最後通牒だった」と書いた。
 マスコミは自分たちではじきだした「世論」の数字を武器に、露骨に小沢の辞任を求めながら、他方、昨年の二の舞を恐れて「柳に下に二匹目のどじょうはいない」と「世論」をけしかけた。小沢は全ての状況を把握していた。小沢は「辞任カード」を切る機会を狙っていたのかもしれない。「二匹目のどじょう」はいたのだ。小沢は「悪役」になることを決意し、それに徹した。支持率は戻った。

 平成の日本の政治は、常に、小沢を軸にして動いてきた。小沢は不思議な男である。どんなに逆境に立たされても、「改革の階段」を、一歩一歩、着実に上って来たのだ。不遇だった自由党時代、わずか47人の仲間だけで、自公勢力に真正面から向き合い、「衆議院の定数削減」「副大臣、政務官制度」、「官僚の国会答弁の禁止」「党首討論」を実現した。「わが世の春を楽しんでいた官僚」は、「霞が関城」にひたひたと忍び寄る小沢軍団の足音に震え上がり、旧体制下で甘い汁を吸っていた評論家や一部マスコミなど守旧派は、ギャアギャアと騒ぎ立てた。今回の政変で彼らは「これで、小沢の息の根を止められる」と、一息ついていることだろう!

 参院選は小沢にとっても、「政治主導」を願う人たちにとっても正念場である。鳩山、小沢を踏み台にして総理の座を射止めた菅は、「小沢排除」を画策するだろう。それは「霞が関」にとっては、願ったり、叶ったりの展開だ。菅は「現役必勝」を大義名分に、小沢が擁立した複数区の新人の落選を目論むかもしれない。しかし、選挙という修羅場を経験したことのない枝野幹事長と選挙の事務屋でしかない安住選対委員長にそんな芸当ができるとは思えないし、小手先の小細工は、一歩間違えると、情勢を激変させ、惨敗する危険もともなう。いずれにせよ、党内の常識では「よほどのぼんくらが指揮を執らないかぎり、小沢が敷いた路線を走れば、そこそこの議席は獲れる」はずなのである。小沢軍団は新人の当選に全力を傾注すべきだ。

■「世論ファシズム」の危険
 新執行部は、鳩山が両院議員総会で要請した「クリーンな民主党」を、「小沢排除」のキーワードにするつもりなのだろうが、多少でも歴史を学んでいれば、昭和初年のように、「世論ファシズム・官僚ファシズム」が形成され、日本を、国民生活に責任を感じない「牢固とした官僚主導国家」にする危険を感じただろう。力のある、優秀な政治家は、抜群の情報収集能力を持っている。そのために、豊かな政治資金で数多くのブレーン、スタッフを雇っている。だから、官僚にごまかされることはない。一方、議員の歳費、政党助成金(注:これは、政党の調査、研究活動、政党職員の給与などに使われ、議員に配分されるのは、党によって異なるが、小沢自由党では月額50万円で、地元事務所の維持がやっとだった)と、わずかばかりの政治献金しかない「清廉潔白」な議員は、官僚が提供してくれる無料の情報に頼らざるを得ず、知らず知らずのうちに、官僚の意のままに動く政治家に成り下がるのだ。作家の佐藤優によれば「高給国家公務員」である。「霞が関」の世界では、官僚の言うことを理解し、行動してくれる「清廉潔白」な政治家が「良い政治家」で、小沢のように、情報収集能力が抜群で、官僚を使いこなそうとする政治家は「傲慢不遜な悪い政治家」なのである。

 ところで、玄葉光一郎を政調会長に任命し、公務員制度改革・少子化担当相として入閣させた菅の狙いは何か。鳩山内閣の時は、内閣・党を一体化し、政策を内閣に一元化するために、小沢を幹事長のまま、副総理、無任所大臣として入閣させるはずだった。ところが、小沢が大きな力を持つことを恐れた鳩山、菅、仙石らは、小沢を政策決定に関与させず、党務に専念させ、菅を副総理兼国家戦略担当のまま、政調会長に任命しようとした。しかし、「(無任所でない大臣は)政調会長を兼務出来るほど暇なのか」と言われて断念した経緯がある。玄葉は大丈夫なのか。また、政策決定に関与しない枝野幹事長と、政策を一手に引き受ける玄葉との間に、権限をめぐる確執が生じる可能性も高い。菅は政調会を、玄葉を通して抑え、幹事長を棚の上に祭り上げて、「菅独裁体制」を画策しているのではないだろうか。今回の組閣、党人事を見ながら、「官僚主導派」と「政治主導派」の闘いが始まっている気配を感じる。「官僚」は菅の手助けをして「小沢」を追い落とし、返す刀で菅の首も獲ろうと考えているのではないだろうか。官僚の悪知恵は恐ろしい。「官僚支配を打破出来るのは小沢だけだ」と喝破した、官僚中の官僚、財務省主計官出身の藤井裕久衆議院議員の言は正鵠である。 

 菅直人は、6月4日に総理大臣に指名され、8日に組閣を終えた。総理の所信表明は11日の予定である。なぜ、こんなに時間がかかったのか。「慎重に検討したい」とのことではあるが、マスコミ情報によれば、代表選も始まっていない4日の午前に、すでに、仙石、枝野らと組閣、党人事を検討していたとのことで、彼の発言は、額面通りには受け取れない。「小沢グループの切り崩し」「約束手形を乱発したので、その調整のためだ」とのうがった見方も出ている。
 9日の幹事長職の引き継ぎの際、小沢は「微力だが、民主党勝利に、一兵卒として出来うる限り、協力する」と枝野に約束をした。7日には原口総務相に「民主党と内閣を一生懸命支えなさい」と語ったという(朝日9日夕刊)。
 民・由合併の直後、菅に「小沢との付き合い方」について質問された私は、「小沢は約束したことは、命がけで守ろうとする男だ。だから、『誰でも、約束は守るもの』だと信じている。だから、彼との約束は、絶対に守れ。守れない約束はするな」と答えた。菅が小沢に「官僚支配の打破」を約束しているのであれば、命を賭けてそれを守るべきだ。どうも、鳩山政権8ヵ月の間に、「官僚」にたぶらかされた輩が、かなり、出てきたようだ。

 6月3日、東京・錦糸町で、党内屈指の骨太の論客、小沢グループの実力者、東祥三衆議院議員の後援会の大会があった。東がコツコツと集めた千人を超える猛者が、2万円の会費を払って結集した。参院選の候補者である蓮舫、小川敏夫両参議院議員も壇上に並び、物凄い熱気だった。参加者の一人が息巻いていた。「黒だ? 灰色だ? ふざけんじゃねえ。どんな魂胆があるんだか知らねえが、そんなデマなんか、け殺してやらあ。あたぼーよ。小沢は真っ白さ。俺たちと同じ、真っ赤な、熱い血が体の中を駆けめぐっているのさ。昨日の辞任劇、見たかい。小沢には侠気がある。江戸っ子が惚れ直すねえ」

「小沢はしあわせな奴さ。俺だって、十年若けりゃ、錆びた刀を振りかざし、痩せ馬の尻を引っ叩いて、駆け付けるんだが。口惜しいねえ」――二見独白。

2010年6月 1日

虎一声、清風起こる ── 小沢起つべし!

 「沖縄問題」で社民党が政権から離脱した。内閣支持率の急落とあいまって、当面の永田町、マスコミの関心事は鳩山総理の進退と参議院選挙への影響である。論理的に考えると、社民党支持者が選挙区選挙で、「辺野古沖の埋め立てこそベストだ」と推進してきた自民党やみんなの党に投票するとは考えにくい。しかし、過去の投票行動を分析すると、比例区は社民党でも、選挙区では、自民党支持者である地域の有力者との付き合いもあり、大半が野党(当時)の民主党や共産党ではなく、自民党に投票していた。「沖縄問題」のみならず、弱肉強食の小泉・竹中路線を引き継ぐ自民党やみんなの党を支持するのか、それとも、「沖縄問題」があるとはいえ、その他の合意している政策を推進している、昨日までの盟友を支持するのか、社民党の行く手も厳しく、不透明だ。民主党議員の、草の根レベルでの説得がキーポイントになる。

 連立政権の舵取りは難しいものである。1994年の細川連立政権は、七党一会派の、その中でも、日本社会党と公明党、民社党の、政権交代の意義も、政治の目的も全く理解していないバカバカしいほど非生産的な抗争が繰り返され、そこに目をつけた自民党に、「総理という餌」で日本社会党が釣り上げられて崩壊した。自自公連立は小沢自由党のラディカルな改革政策に脅威を感じていた自民・公明が小沢を追い出して、解消した。歴史は繰り返すというが、今回も、社民党(前身は日本社会党)が連立解消の立役者である。前回との違いは、民主党が衆議院に308議席をもっていることだ。小沢自由党と旧民主党合併の原点に立ち返り、全国会議員が「3万軒の戸別訪問(注:ポスティングではない)と5万回の駅立ち、街頭演説」を、「楽をしたいからいやだ」と逃げ出さず実行すれば、影響はほとんどないだろう。

 世論調査で回答する人は、自分の意見をもっているわけではなく、クイズ番組同様、与えられた選択肢から、例えば、「最近の調査では人気がないようなので、不支持が正解のようだ」と○を付ける傾向が多いとのことである。今回のような、異常な感情の高ぶりの中で調査をすれば、内閣や党の支持率が急落するのは、当たり前である。「世論の劣化」「世論調査の問題点」を嘆いても、出された「数字」は独り歩きする。それが「世論」に影響して、さらに、支持率が下がる。この悪循環が「世論調査」のもつ恐ろしさだ。麻生政権は、その恐ろしさに縮みあがって、「麻生降ろし」など内紛状態になり、衆院選で大惨敗した。このことは民主党も「他山の石」にすべきだ。小沢が懸念しているのは、「本当の戦争」を全くしたことがなく、無責任なおしゃべりと人の悪口に明け暮れ、責任回避する、化石のような「旧民主党」的体質の腰抜け国会議員の動向とそのレベルだろう。党員や連合など支持団体は、格好だけ付けて、「汗をかかない」議員を峻別し、次回の選挙では支援拒否をすべきだ。

■総理は泥だらけになって、沖縄の負担軽減、基地縮小に命を賭けよ

 鳩山総理の根本的な過ちは、気心の知れた「お友達」で内閣を構成し、「経済から外交まで三次元的な構想と戦略をもっている」(村上龍の小沢評)小沢幹事長を、政策・方針を決定する場から意図的に外したことである。それだけではない。小沢の影響力の増大を恐れる閣僚たちの「小沢やめろ」コールを黙認したことである。

 鳩山総理だけではなく、取り巻きの大臣たちも同罪だが、「国民との約束」を軽く見過ぎる。自由党時代、私たちは「公約は国民との契約だ。社会は契約で成り立ち、契約を軽んじたら、社会は不安定になり、国民生活はズタズタになる。政治も同じだ」をモットーにしてきた。自民党には、政策・公約を官僚に丸投げしていたので、もともと、「契約を守る」という概念はない。政治改革をめざす民主党は「約束を守る」政党のはずである。「国外、県外」は総理の発言だ。総理の発言は「マニフェスト」より重いことを認識していれば、内閣として「不退転の決意」を内外に宣言すべきだった。「対米追従派」の官房、外務、防衛、沖縄担当の各大臣はミスキャストである。総理を支える立場にあるはずの菅副総理、仙石大臣も音無しの構えだった。彼らも「監督責任」を問われてしかるべきだろう。

 総理は、自公政権案の辺野古沖の埋め立てとどこが違うのか、自公案よりも負担軽減になるのか、将来的に米軍基地が撤去、縮小されるのか、泥まみれになって、説明すべきである。

■「目くそ鼻くそを笑う」──自民党は売国党だ

 自民党は「沖縄も地元も合意していた自公案を、もとの黙阿弥にした責任をとれ」と、見た目には鼻息が荒い。マスコミも,アメリカが満足さえしてくれれば、沖縄県民の苦しみなど人ごとである。「県と地元の合意」とは、小さなアメと大きな鞭で本心を言えなくしている現実を、歪曲しているのだ。鳩山はパンドラの箱を開けてしまった。これからは、だれが総理になろうと、「国外移転」を推進しなければならない。いまは袋叩きだが、今回の「迷走」と叩かれながらも出した結論は、「沖縄」を日本全体の問題に昇華した。これは、鳩山の、本人も意図しない、誰もがなしえなかった業績ではないだろうか。
自民党は、鳩山が沖縄県民との約束を果たそうと、「国外移転」で苦労しているとき、石破元防衛相をアメリカに派遣し、アメリカの、武器商人になり下がった「安保屋」と手を組んで「国外移転」阻止を画策した。まさに売国的行為である。自民党に鳩山総理を非難する資格はまったくない。

 マスコミは「国外移転」にも「県外移転」にも、全く冷淡だった。米軍基地を沖縄に押し付け、固定化させるように、自らの意思か、どこかからの示唆や指図かわからないが、世論を誘導した。国民も沖縄の苦しみを他人ごとのように考えたようで、「海兵隊よ、沖縄から出て行け」と叫ばなかった。マスコミは「海兵隊はグアムへ移れ」とキャンペーンを張らなかった。ある意味で、鳩山は孤軍奮闘だった。日本では、政治家、マスコミ、評論家、知識人、一般大衆のほとんどが、同胞である沖縄を見殺しにした。

 私は、責任の所在をあいまいにするので「一億総ざんげ」という言葉は大嫌いだが、今回はあえて言おう。「てめえら、日本人の風上にも置けねえ野郎だ」と。

 鳩山内閣には腹も立つが、官邸機密費に毒されたマスコミや評論家、自民党の非難の論陣は「目くそ鼻くそ」よりも酷い。6月1日の朝日新聞は「普天間、米では微風」と報じた。「オバマにとって小さい問題」だというのである。永田町から遠く離れたワシントンの記者は、国内のマインド・コントロールを受けにくいのだろう。普天間があたかも日本や東アジアの「安全」にとって生命線であるかのように言いつのったのは、どこの誰だったのか。

 小沢、起つべし。小沢、吠えるべし。育てるべし、自分の言動に責任をもつ政治家を。

 政治の世界は、志の高い、強靭な精神をもった政治家に交代することが求められている。

Profile

二見伸明(ふたみ・のぶあき)

-----<経歴>-----

69年12月の衆院選に初当選し、以後8期23年。
小沢一郎、羽田孜、石井一、森喜朗と同期。
公明党政策審議委員長、副委員長、運輸大臣を経て、94年、新進党。
97年暮の新進党解体により、小沢の自由党結党に参加。総務委員長、国対委員長。
2000年春、自由党分裂に際し、小沢と行動を共にする。
小沢対羽田の一騎打ちの新進党党首選では「四海波穏やかなときは羽田がベストだが、激動期は小沢の豪腕がベスト」と表明し、小沢の推薦人になる。

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