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2009年10月14日

「竜頭蛇尾」はごめんだ ── 鳩山連立政権一か月の検証

 オバマ大統領がノーベル平和賞を受賞したその日、彼に笑顔はなかった。核についてアメリカの世論は、「広島、長崎に原爆を投下したから第二次大戦は終わったのだ」と肯定派が多数だ。核不拡散条約は、もともとは第二次世界大戦を連合して闘った米英仏ロ中五か国が核を独占的に保有し、それ以外の国には保有を禁止するというもので、その特権を放棄することになるオバマ路線に、アメリカ保守層は反対である。オバマの前途は厳しい。しかし、彼が起こした「核のない世界」へのうねりは、日本は当然のこと、世界の良心が、より加速させなければならない。その意味で、符節を合わせたように、2020年のオリンピックの会場に広島・長崎が名乗りを上げることに大賛成である。ちなみに、私はオリンピック東京招致には石原都知事の自己顕示欲がぎらついていたので、反対だった。

 「核廃絶」を悲願としている日本が取り組むべき最重要の課題は北朝鮮の核開発・拡散阻止である。10日の日中韓三国首脳会議で温家宝首相から、北朝鮮が日本との関係改善を望んでいる旨の説明があったとのことである。私は金日成時代にピョンヤンを訪問し、「尊敬する、偉大な指導者・我らが父・金日成主席閣下」が戦前、戦中の日本の天皇=現人神と全く同じように、神格化されていることに「脅威」と「恐怖」を感じた。「北」の本音はわからないが、私は訪朝の体験から、金正日の究極の狙いは金一族王朝体制の存続の保障と、その証としての経済支援ではないかと考えている。
 ベルリンの壁が崩壊して間もなく、私は外務省に「西ドイツは経済大国だから、外国の援助を受けずに東ドイツを吸収出来た。韓国が北朝鮮を吸収合併する場合には、他国からの巨額の援助が必要になるだろう。その場合、日本の負担等について試算しているか」と問い合わせたことがある。外務省の回答は「考えたこともない」であった。南北朝鮮の統一は、理想としてはともかく、現実的ではない。金体制がどのくらい続くのか予想しようもないが、北朝鮮の核問題を米中のみに任せるのではなく、「怖くない普通の隣人」になるように、核開発断念を前提に、「北」の万が一の暴発を抑止するためにも、現体制を認め、人民の生活救済のための経済支援を覚悟すべきではないか。もちろん、日本には拉致問題がある。これは許すことのできない国家犯罪であるが、核という世界の安全保障にかかわる問題に真正面から取り組むことが、むしろ、「拉致問題」を国際的に浮かび上がらせることになり、北朝鮮にも重圧となり、解決を早めるのではないだろうか。

 国連での鳩山総理の「CO2を25%削減」発言はオバマ大統領の「核廃絶」発言に匹敵する歴史的なものである。50年、100年後の地球を救うこの提言は、鉄鋼、自動車、電力など産業界の反発を招き、民主党を支援する連合傘下の一部労働組合からも慎重論が出ていて、実現へ踏み出すことは容易ではない。先日、三年ぶりに上海を訪れた友人は「上海では電気自転車が大手をふって走り回っている。前回、排気ガスで喉が痛かったが、今回は痛みもなく、思いなしか、空気がきれいになったようだ」と語っていた。電気自転車とはガソリンを使わず、電池とモーターで動く原付自転車である。中国の大都市では排気ガス汚染や渋滞が社会問題になり、ナンバープレート規制が行われ、実質的に自動車保有が困難になったことが電気自転車の普及に拍車をかけているとのことである。中国全土で年間2100万台も生産されているそうだ。だからといって、中国がCO2削減に熱心なわけではない。むしろ逆だろう。それだけに、環境先進国・日本が自ら25%という高い削減目標値を掲げたことの意味は大きい。中国はCO2削減に本格的に取り組まざるをえなくなるだろうし、日本にはそれを全面的に支援する用意がある。また、地球温暖化対策に積極的にかかわることを表明したオバマ大統領を支援することにもつながる。
 CO2削減をめぐる軋轢は、石油依存型産業と脱石油型未来産業のせめぎ合いである。鳩山発言は産業構造の変革を求めるだけでなく、日本人のライフスタイルも変えるものである。鳩山総理はそのための政策を準備しなければならない。また、この「革命的」な変革のためには、古くて新しい課題である環境税――炭素税か消費税的なものか――の導入は必至であろう。

 来月、オバマ大統領がアメリカの国益をひっさげて訪日する。鳩山総理は日本の国益を全身に背負って、初の本格的な外交戦を展開する。小沢一郎代表(当時)は2月、クリントン国務長官との会談で「まず両国の世界戦略をきちんと話し合った上で個別の問題に取り組むべきだ。これまでそうしたことがなされてこなかった」と述べ、「こうした話し合いを継続するため選挙で頑張る」と会談を締めくくった。日米の不動の信頼関係を構築するためには、オバマ大統領にすりよるのではなく、日本の平和戦略・世界戦略を語り、その上でアフガン復興支援、インド洋の給油活動、普天間基地問題を議論すべきだ。沖縄の米軍基地は、遠くない将来、北朝鮮問題が解決したときには、米軍にとって重要な戦略拠点ではないだろう。不要になるかもしれない。信頼関係の醸成という「情」も大事だが、それ以上に両国の本音をぶつけ合うことのほうが大事だ。オバマは「本当の友になるためには喧嘩が必要だ」ということを理解する度量をもっていると思う。

 それにしても、政治の舞台裏が丸見えで、鳩山内閣は面白い。「15兆円補正予算削減」「公共事業の執行停止、見直し」に、「霞ヶ関官僚」は顔面蒼白になり、自民党長期政権のもとで代官役を演じてきた県知事や県会議員など地方政治屋の慌てぶりは時代劇を見るようなものだ。亀井金融相の「借金返済猶予法案」も、いくつかの問題はあるものの、胸のすく思いである。住宅ローンが返済できず差し押さえされた場合、アメリカでは持ち家は失っても借金も残らずゼロになるが、日本では持ち家を失っただけでなく、競売価格がローンを下回ると残額は借金として残るリコースローンである。数年前、福井日銀総裁と懇談した折、彼が「今年度上半期、やっと銀行の経常収支は黒字になった」というので「それはたいへん結構なことだが、ゼロ金利、貸し剥がし、貸し渋りという中小企業、庶民いじめのお蔭だということを忘れては困る。むしろ、これからは、銀行が彼らにどういうお返しをするかを考えるべきだ」と苦言を呈したことがある。銀行は猛省すべきだ。藤井財務相は補正予算だけでなく、本予算にもメスを入れ、ムダを削除すると明言している。毎年暮れになると、全国から知事が子分どもを引き連れて上京し、各省庁のお役人に頭をさげて「補助金」をお願いする定例行事は今年から様変わりするだろう。「俺は役所に顔が利くのだ」と威張りくさって水先案内役を務めた国会議員も御用済みである。
 時代の変革期に混乱はつきものだ。むしろ、「混乱」は時代を切り拓くコストだと割り切ったほうがいい。「百花繚乱」を鳩山総理がどうまとめるか。中途半端な妥協をして化石になった化け物をよみがえらせるチャンスを与えてはならない。「竜頭蛇尾」はごめんである。

Profile

二見伸明(ふたみ・のぶあき)

-----<経歴>-----

69年12月の衆院選に初当選し、以後8期23年。
小沢一郎、羽田孜、石井一、森喜朗と同期。
公明党政策審議委員長、副委員長、運輸大臣を経て、94年、新進党。
97年暮の新進党解体により、小沢の自由党結党に参加。総務委員長、国対委員長。
2000年春、自由党分裂に際し、小沢と行動を共にする。
小沢対羽田の一騎打ちの新進党党首選では「四海波穏やかなときは羽田がベストだが、激動期は小沢の豪腕がベスト」と表明し、小沢の推薦人になる。

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