Calendar

2009年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

Recent Comments

Recent Trackbacks

Category

« 2009年7月 | メイン | 2009年9月 »

2009年8月22日

「来た、見た、勝った」 ── <無血革命>一週間前の点描 

 落語の楽太郎師匠が「明治以来の権力構造を変える選挙だ。生易しいものではない。皆さんお一人お一人が、一票一票掘り起こしてください。行政に何かしてもらおうという時代ではない。私たちが政治を変え、社会を動かしていく時代なのだ」と熱弁をふるっていた(8月18日正午、東京・江東区の民主党公認候補、東祥三の出陣式)。区会議員たちは、私の問いに「外交問題の専門家が4年間、区民と膝をつきあわせて語り込んできたことを、区民は知っている。本人は生命を賭けている。だから、今日、集まってきた支持者の顔ぶれも顔付きも、4年前とは大違いだ。小選挙区の戦いは真剣勝負だ。『風』をあてにしていない」と、意気軒昂であった。

 その晩、鎌倉で旧友たちとの懇談会があった。話題の中心は選挙である。

「小選挙区制は、個人より政党を重視する選挙で、イギリスでは、党首の識見、人柄、政治力などに信頼があり、それを支える党幹部がしっかりしていれば、候補者は誰でもいい。『ブタでも当選できる』とさえいわれている。日本はそこまで成熟していないので、候補者の人柄や実績も重視されるから、世論調査どおりにはならない」

「新聞記者時代の経験だが、あまり『民主党有利』と書かれると、小泉純一郎の『刺客選挙』の反動もあって、『それじゃ、自民党にも付き合っておくか』という振り子現象もでてくるのではないか」

「それにしても、自民党には総理にふさわしい人材がいない。民主党は、小沢、鳩山、菅、岡田の四人が、がっちりスクラムを組むと、自民党は、歯が立たないだろう」。
「民主党にはミクロのスペシャリスト(狭い分野の専門家)は多いが、広い視野から判断できるマクロのゼネラリストが少ない」

「剛腕・小沢の存在が大きい。小沢流選挙運動が浸透してきて、若手の動きも堅実のようだ」

「公明党はどうなっちゃうのか。党幹部や創価学会の首脳の考えはわからないが、普通の支持者や学会員の考えは民主党の政策に近い」

「支持者には、イラク戦争で、ブッシュ大統領にヨイショして、小泉のお先棒を担いだことへのトラウマがあるようだ。自民党が下野した場合、自公野党連合戦線を組む度胸はないだろう」

「政権担当能力という点では、自民党はゼロだ。民主党には不安もある。しかし、未知なるがゆえに、大化けの期待もある」

「官僚出身者が多いので、公務員制度に十分にメスがいれられるだろうか」

 私たちの結論は「自民党の政治の先は見えている。一度、民主党に、『安保改定50年のアカ落とし』をさせ、『霞ヶ関改革』をやらせてみよう。うまくいかなければ、政界再編だな」であった。

 翌19日午前、東海道線藤沢駅前にある民主党公認、中塚一宏選挙事務所で、旧知の選挙参謀と話しあった。地元有力者と思われる紳士がひっきりなしに訪れ、「町内に配るよ」とマニフェストを持ち帰っていた。「4年前とは全く違います。だからといって、『風』に浮かれているゆとりはない。自民党候補、社民党候補は、知名度のある前議員だ。地べたを這いつくばって一票一票広げる以外に勝つ術はない」と必死だった。事務所の女性運動員も、訪ねてきた人を「単なる支持者ではなく、家族、友人に声をかけてくれる強力な支持者になってもらおう」と、応対に懸命だった。
 20日午後、藤川富雄・土浦市議と茨城県つくば市の労組委員長を訪ねた。彼は「初めて、自分の一票で政治が変わると実感している。組合員も今回の選挙の意義を理解して投票所に行くと思う。公約が直ちに、全て実現出来るとは思っていないが、一つでも二つでも実現し、この選挙で登場する沢山のチルドレンを、小泉チルドレンの二の舞にしないように全力を尽くしてもらいたい。我々は喜んで応援させていただくが、有権者の一人として、厳しく監視もする」と好意的かつ真剣に語ってくれた。

 1993年10月、カナダの下院選挙で、政権政党・進歩保守党は154議席からわずか2議席に激減した。この惨敗の一因に、カナダ保守勢力内にあった反目、対立が指摘されているが、それ以上に、小選挙区制特有の怖さを示していると言えよう。20日付朝日新聞の選挙情勢分析によると、25%の人が、「選挙情勢によっては、投票先を変える」と回答している。「民主優勢」の報道に油断することを「権力の魔性」は舌なめずりしながら、期待しているのではないだろうか。「風」に油断することなく、「風」を利用するしたたかさがあれば、雪崩現象を引き起こして、自民党を壊滅・解体に追い込むことも可能である。勝負は小選挙区だ。

 日本に必要なのは小手先のメンテナンスではない。抜本的なリフォームである。
クレオパトラを射止めたローマの英雄、シーザーではないが「来た、見た、勝った」の報を全世界に発信したい。

<追記>
新型インフルエンザが猛威をふるいはじめた。握手の自粛、消毒液の確保など選挙運動にも影響してきた。投票日まで1週間。新型インフルが大爆発した場合、投票率にマイナスの影響を与えるだろう。マスコミの報道のしかたを注意深く見守る必要がある。また、自民党はこれを奇貨として「新型インフルに万全な対応が出来るのは自民党だ」と宣伝するだろう。民主党も政権交代を意識してか、厚労省からヒアリングをうけている。いずれにせよ、これを政争の具にさせてはならない。

2009年8月15日

毒なきは丈夫にあらず(無毒不丈夫) 魯迅

 中国の文豪・魯迅は「私は自己の狭量はよく承知している。(権力に阿る学者、文化人など)その連中が私が書いたものによって嘔吐を催せば、私は愉快である」と書き残した。この「毒」とは、権力を恐れず、肺腑をえぐる、本質を鋭く衝いた批判、反逆心であろう。いわば、政治家、文人、ジャーナリストの原点である。

 8月12日の民主・自民両党党首の直接討論は、半分気の抜けたビールみたいなものだった。国を統治する能力のないことが明々白々の麻生総理が、冒頭発言で、起死回生のため、死力を振り絞って、大上段から振りおろした第一撃は「民主党との一番の違いは責任力だ」であった。攻めるべき鳩山代表としては、予想されたこの一撃を「民主党こそ責任力があり、麻生自民党は無責任力」と、切って捨てるもよし、麻生がたじたじとする一撃を浴びせた上で、自公政権の失政を追及し、持論を展開すべきであった。ところが、鳩山は「いろいろといいことも言っているのに、なぜ政権をとっていながら、そのことを果たしてこなかったのかが、一番の気がかりになるところだ」と応じてしまった。本来であれば一撃で麻生を倒すド迫力が必要なのに、世論調査で優位にたっている気の緩みからか、血みどろの権力闘争に、一歩身を退く性格のゆえか、勝者が敗軍の将に語りかける憐れみの言葉だった。
 今回の総選挙は、自民、公明が言うような単純な政策選択の選挙ではない。百数十年続いてきた「官僚主権=中央集権国家」を「真の国民主権=地方主権国家」に変革する無血・市民革命的選挙である。しかし、この党首討論を主宰した21世紀臨調や取材したマスコミには、そうした時代認識は希薄だった。いな、単なる政権交代ならともかく、「国のかたち」を変える政権交代に、本音では反対なのではないだろうかとさえ思えた。マニフェストの数字中心の政策論争であるならば、党首ではなく、幹事長、政調会長で十分である。

 私は1979年5月、英国の下院選挙――サッチャー保守党党首が労働党政権を破った歴史的な選挙――を視察した。保守党を支援する大会では「ドイツの移民労働者が、『イギリスはずっと不景気だ。働いても、年金はもらえない』と、わが国に愛想をつかして帰国した」など具体例をあげて労働党政府を痛烈に攻撃した。最後に、サッチャーが「かつては七つの海に君臨した大英帝国を日の沈む国にしたのは労働党だ。私は誇れる国に造り直す」と訴え、その気宇の壮大さ、迫力に、圧倒されてしまったことを鮮明に覚えている。
 1月21日未明、オバマ大統領の就任演説を聴き、私の脊髄に電流が走った。

▼政府が大きすぎるか小さすぎるか、ではなく、それが機能するかどうかだ。まっとうな賃金の仕事や、支払い可能な医療・福祉、尊厳をもった隠退生活を各家庭が見つけられるよう政府が支援するのかどうかだ。

▼私たち公金をあつかう者は、賢明に支出し、悪弊を改め、外から見える形で仕事をするという、説明責任を求められる。それによってようやく、政府と国民との不可欠な信頼関係を再建することができる。

▼我々は信じる。古い憎悪はいつか過ぎ去ることを。種族的な境界は間もなく消え去ることを。世界がより小さくなるにつれて、共通の人間性が姿を現すことを。
 (以上の引用は「朝日新聞」の訳文)

 4月5日、オバマ大統領はプラハで「核兵器廃絶」の歴史的演説をした。

「多くの人々は、この最終破壊兵器を所有する世界で生きていくことを運命づけられている、という。この運命論は不倶戴天の敵である。核兵器の拡散が不可避的だ、と我々が信じ込んでしまえば、次には、我々が自身で核兵器の使用は不可避的だと信じることになる。21世紀では、いかなる場所においても「核の恐怖」から解き放たれて生きる権利を共に闘い取らなければならない。核兵器を使用した唯一の核大国として、アメリカ合衆国には行動する道義的責任がある。この目標(核兵器のない世界)への到達は容易ではない。私が生きている間ではないだろう。それは忍耐と継続が伴う。しかし、いまやわれわれもまた、世界は変えられないと我々に告げる声を無視しなければならない」

 オバマ大統領の発言に対する日本政府・与党の反応は、あろうことか「日本はアメリカの核の傘で守ってもらえるのか」だった。麻生総理にいたっては、アメリカが核を先制使用することを期待しているのである。心根はさもしく、下司、下劣である。

 自民・公明とマスコミが執拗に「財源」にこだわるのは「霞ヶ関」の入れ知恵である。民主党のマニフェストは財源の裏づけのないバラマキだから日本を駄目にしてしまうという訳である。陰謀のようにしつらえられたマニフェストにかかわる数字ゴッコに眩惑されてはならない。政権交代し、補助金制度が廃止され、地方自治体に自由に使える交付金として移譲されることで最も打撃を受けるのは「霞ヶ関」である。地方をコントロールする術を失うことになるからだ。「霞ヶ関支配」の崩壊である。欧米では当たり前の農業者への「戸別所得保障」は、県、市、農協などを通じることなく、直接農家に支払われるので、農水省が農協などを通して農民を支配する構図が消滅する。それよりも「霞ヶ関」が恐れているのは、民主党政権が省庁に関係なく政策の優先順位にしたがって予算を付ける予算の全面組み替えである。「子供手当て」「農家の戸別所得保障」など重要公約の財源については全く心配ない。そのかわり、優先度の低いもの、無駄と認定されたものは、予算が大幅に削減されたり、凍結されたりするだろう。「霞ヶ関」が予算配分を通して関係業界に影響力を行使してきた官民癒着はズタズタにされる。年末に、業界、団体が大挙して各省庁をまわる予算陳情という世界に例を見ない珍妙な定例行事はなくなる。亀井静香が建設大臣のとき、「陳情」などという用語を使うのはやめようと言ったことがある。10年も前のことであった。そしてこの秋、国のかたちは一変する。

 マニフェストは重要だが、「本当に出来るのか」という庶民の不信を払拭するのは党首力である。鳩山由紀夫の祖父・一郎に「傲骨虚心」という扁額がある。「傲骨」とは「意志が強く、容易に自分の主義主張をまげないの意で、気骨のある男を傲(硬)骨漢」をいう。彼は戦前・戦中、軍部・極右政権の弾圧に屈せず、戦後、アメリカの庇護の下にあった日本の総理大臣でありながら、アメリカの不倶戴天の敵、社会主義陣営の盟主・ソ連と国交回復をやってのけた自由主義者である。鳩山一郎の理念「友愛」はフランス革命の「自由、平等、博愛」の「博愛」に由来するという。この「博愛」は人民の血によってあがなわれたものだ。一郎の「友愛」には軍部、極右と闘った凄みと優しさがある。三代目・由紀夫の「友愛」は、いったいなにを意味するのか、不透明である。

 今日は8月15日。私は戦争の悲惨さを、肌で体験した最後の世代である。日本が世界の安定と平和のためになにができるのか、真剣に考える日である。インド洋で、「無料のガソリンスタンド」を提供してアメリカに喜ばれるのが、世界の安全に寄与することだと思い込むのでなく、アフガンの民衆の生活を立て直し、守る、大掛かりな対策を講じることによって、テロを撲滅する方策を追求すべきだと思う。
 外交・安全保障政策には継続性が大事だと、麻生総理は言う。これは、半分は正しく、半分は間違っている。日米安保体制の根幹維持は政権が交代しても継続すべきである。しかし、日米地位協定の改定など具体的展開は、大胆に変えていい。小沢一郎が主張する「日米・日中正三角形外交」は外交政策の大転換である。国際情勢は大きく変わろうとしている。「核兵器廃絶」「北朝鮮の非核化」のための国家戦略を構築すべきだ。自公政権の骨の髄まで染みついているアメリカの政治的植民地的体質を継続することは「誇り高き日本人 二見伸明」としては我慢ならない。

 *    *    *    *    *    *    *

※見出しの「毒なきは丈夫にあらず(無毒不丈夫)は、若い頃に読んだ魯迅の文章にあったと記憶しているが、記憶の間違いということもある。本サイトをご覧の碩学のかたに、魯迅の表現かどうか、そうであれば魯迅のどの文章にでてくるかについてご教示をいただきたい。記憶の間違いであれば、誰の文言であるかについてご教示いただければ幸甚である。

Profile

二見伸明(ふたみ・のぶあき)

-----<経歴>-----

69年12月の衆院選に初当選し、以後8期23年。
小沢一郎、羽田孜、石井一、森喜朗と同期。
公明党政策審議委員長、副委員長、運輸大臣を経て、94年、新進党。
97年暮の新進党解体により、小沢の自由党結党に参加。総務委員長、国対委員長。
2000年春、自由党分裂に際し、小沢と行動を共にする。
小沢対羽田の一騎打ちの新進党党首選では「四海波穏やかなときは羽田がベストだが、激動期は小沢の豪腕がベスト」と表明し、小沢の推薦人になる。

BookMarks

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.