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「社会保障と税の一体改革案」のマヤカシ(3)── 国民皆保険制度は形骸化している。混合診療をもっと増やせ!

 ここまで2回にわたって、政府と民主党政権がまとめた「社会保障と税の一体改革案」を批判してきた。この案は改革案とされ、初めて消費税の税率アップに踏み込んだことで一定の評価がされている。しかし、これで、医療を含めた社会保障制度が充実するわけではない。むしろ、医療に関しては、国民皆保険を死守することで、制度崩壊を早めてしまう可能性が高いのだ。

 医療費は現在、30兆円代の後半に迫り、今回の改革案にある消費税10%が実現するとされる2015年前後には40兆円を突破してしまうだろう。となると、5%のアップぐらいではとても賄いきれない。消費税は1%のアップで2.5兆円税収が増えるとされる。しかし、そのアップ分のほとんどは財政再建に回り、社会保障費に回るのは5%のうちの1%にすぎないというのが、今回の改革案である。その意味で、「社会保障の充実のために消費税を上げる」ということ自体がマヤカシなのである。
 
 言うまでもなく、医療費の増加の最大の原因は、高齢化社会にあるとされている。医学の進歩で、次々に新しい治療法が登場したこともあり、人生の終末期にかかる医療費が激増したからだ。

 しかし、こうした医療費の自然増以上に、わが国特有の国民皆保険制度が、医療費増加の大きな要因になっている。それを以下列記してみると、次のようになる。

1. 病床数が多い、在院日数が長い
2. 薬剤価格が高い、薬剤使用量が多い
3. 医療材料価格が高い
4. 検査が多い
5. 受診回数が多い
 
 これはどういうことかというと、こうしないと病院経営が成り立たないからである。患者を薬漬け、検査漬けにし、そのうえで何回も病院に足を運ばせないと、現在の病院は倒産してしまうのだ。言葉は悪いが「患者ころがし」をして、すぐに治る病気であってもできる限り治療を長引かせて「引っ張る」ことが、現行の国民皆保険制度ではいちばん効率がいいのである。国民皆保険制度というのは、「国民は等しく同じ医療を受けられる」という理想で成り立つ制度だが、じつはこれが行き過ぎているために、日本の医療費はここまで増大したと言っても過言ではないのである。
 
 ここで、単純な疑問として、毎年、医療費が増えているのに、なぜ日本の医療サービスの質は向上しないのか、と思ったことはないだろうか? 普通なら、毎年1兆円も医療費が増えれば、病院のサービスは向上し、3時間待ちの3分診療などということは起こらないはずである。

 それが起こるのは、現行制度下では競争原理がまったく働かないからである。たとえば、一般社会で考えれば、ホテルには5つ星ホテルから1つ星ホテルまである。レストランにも3つ星から星無しまである。そうして、5つ星ホテルには最高のサービスをしてくれるコンシェルジュがいるし、3つ星レストランには最高の腕をもつシェフがいる。

 しかし、病院にも医者にも、こうした格付けはない。じつは、医者には腕のいい医者と悪い医者がいるが、現行の保険制度ではどちらの技術料も等しく同じ値段である。また、出される薬も認可されたもので、どこでも同じ値段である。とすれば、結局、数で稼ぐしかない。

 つまり、高齢者人口が増えるとともに、数で稼ぐことが横行してしまったために、医療費は際限なく増えているのである。

 これを是正して、医療費を押さえ、患者のための医療を行うには、現在、一部しか認められていない混合診療を広範囲に解禁する必要がある。混合診療というのは、保険のきく治療ときかない治療(自由診療=患者の完全な自己負担)を一緒に行える治療のこと。現在、厚労省は、一部の例外を除いて、保険のきかない治療を受けるときは、検査や診察料など本来は保険がきく部分も含めてすべてを自由診療扱いにしている。

 ではなぜ、混合診療は禁止されているのだろうか?

 厚労省はこれまで反対の理由として、(1)有効性や安全性が担保できない怪しげな診療が横行する恐れがある、(2)自由診療が一般化することで経済力によって受けられる医療に格差が生じかねない、(3)医術や薬品は製薬会社や病院が自由に価格を決められるから、利益追求のために診療費は高騰する----などを主張してきた。しかし、国民皆保険が形骸化した現在では、この理由は、医者と病院、そして製薬会社を守るための方便と言ってもよい。実際、日本医師会は解禁反対の姿勢を明確にしている。

 しかし、ここまで来ればもう反対などと言っていられまい。患者の側から見ても、名医も藪医者も同じ料金ということは、明らかにデメリットがある。もちろん、国民皆保険には多くのメリットがあるが、このまま医療費の増大を税金投入、負担増で賄うことを繰り返していけば、ついには制度全体が破綻してしまいかねないのだ。

 そうなると、国民全体が不利益を被る「最大不幸社会」ができ上がってしまう。医療に限らず、「社会保障と税の一体改革案」はもっと踏み込んで、今後の日本の制度設計をすべきである。なにより、できないことをできるように言うバラマキ政治家は退場すべきだろう。

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コメント (5)

混合診療の導入を強く求めたご投稿と理解します。

お話の通り、現在のままでは、皆保険制度が崩壊しかねませんが、だからと言って、混合診療に移行しなければならないと言う考え方は飛躍しすぎているのではないか。

一番大きな問題解決には、個人負担の割合を引き上げることではないか。皆保険制度を維持するためには、どのような自己負担になるか算出し、特別な高額医療は別にして、風邪程度の病気に対する医療費は、ほとんど自己負担にすべきではないか。いずれにしてもコンビニで支払う金額より安いような医療費は正常とは言えません。

現在の医療制度はあまりにも社会主義的思考が強く、自己管理、自己負担の考え方があまりにも軽視されているとは言えないか。

このようないびつな現在の制度に先ずメスを入れることが先決であり、選択的混合診療はそのあと考えられるべきであって、医療費圧縮のために混合診療を導入することには賛成できません。

混合診療とは?


テレビタックルを見ていて、金さんや三宅さんが全く理解しないでコメントしていた。歳だで仕方がないかもしれないが、一般の人には理解できていない様です。


なんか胡散臭いと思っていたら、この方はまだタバコなんか吸ってるんですね。18歳からずっとやめたことがないとか。それほど志操堅固だということでしょうか。タバコ吸うか、吸わないかは、個人の勝手ですが、これほど周囲の健康への悪影響や医療費の押上げや早い話が火災原因の第一位であること、子どものライター事故など、いろいろあっても、まだ平気で、ずっとやめたことがない、などと自慢げに話すのは、やはり政治家としての見識の問題になると思います。まあ、言いたくはありませんが、さすが松下政経塾ですね。増税問題では小沢さんを説得するとか。小沢さんの前で、おもむろに一服して、煙に巻くつもりでしょうか。心臓を患った人の前で、タバコを取り出す無神経さも、たぶん終始一貫おもちなのでしょうね。

富家様

ご意見に賛成です。
なるほどと感心しました。
特に医療費増加の大きな要因
1. 病床数が多い、在院日数が長い
2. 薬剤価格が高い、薬剤使用量が多い
3. 医療材料価格が高い
4. 検査が多い
5. 受診回数が多い

は、その通りです、原子力村ならぬ医療村の住民への大サービスが最大要因で、官僚詭弁として高齢化を上げ、下層国民にも負担を求めるという常道手段を使っているに過ぎないのです。
根本は戦時体制時に強引に造った官僚による絶対権力体制、官営民有による日本的社会主義体制は全てに完全にいきづまっています。
なぜか、戦前の権力者資本家は常に投資先に左右され、完全な自己責任で、明日は大尽、あさっては乞食と浮き沈みが激しかったので緊張感を持ち生きていた。
しかし、戦後の絶対権力者官僚は政治家を操り、マスコミを操り、己の人生は死ぬまで栄華が設計されている、想定外のことに責任はなく、想定内のことは責任逃れするように生きていけば100%間違いなく栄華と名誉を手に出来る。そのためには改革はしない、村の住民から批判が出ないように権益を分け合うということを続けているのだ。
村形成に各種団体をつくり、その事務局には官僚OBを送り込み、コントロールするという万全の体制である。
村は潤うが、国民全体を考えることはないし、まして下層国民など眼中にない、利用するだけである。
その結果としての財政赤字であり、健保の行き詰まりである。
そしてその付けは国民に負担させればよいと言う発想で、消費税のアップであり、年金給付の年齢引き上げや健保の個人負担率のアップという税と社会保障の一体改革である。改革というが、官僚にとっては改革で、国民には改悪である、ここらへんが官僚のずるさである。このことを見てもこの国の主権が誰かを端的に示している。
さて健保の解決策としては混合医療を増やすことであるというのは賛成ですが、その実行となると官僚は外圧ということを口実に国民を煽り、官僚下僕の民・自両党とも取り組まない。
特に震災復興をみても民主党のお粗末さは眼にあまる、知事からは復興庁でなく、査定庁と皮肉られる体たらく、それでも総理は新生日本をつくるという厚顔さには絶望を覚える。
阪神淡路と変わらない瓦礫量なのにまだ最終処理6%と遅れているが、それを他県が受け入れないからと国民のせいにする官僚の常套手段をこの非常時に官僚をチェックするはずの政治家が使うのにはあきれる。
改革党どころか自民党以上の守旧派になった。
もはやこの国は既存政党や官僚に何も期待できない、維新の会始めとした新党に期待し、国家機構の変革を行うしかない。
そうしなければ国家破綻してそのしわ寄せを圧倒的多数の我々低所得者により一層の負担を押し付ける。いよいよ我々下層国民にとって正念場がきたことを教えられた。

しんぼう追記:

三宅さん達「認められていない余分に掛かった医療費(薬とか手術)を払えば良いじゃないか・・・・?」・・・・まあ こんなところです。

辛坊氏が訂正したいた「認められてない追加の医療費だけでなく、全て掛かった医療費が自費になる」と。


要するに1割負担・3負担も関係なく、高額療養費制度も関係なく、入院費そのものも全て自己負担となるわけです。


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Profile

富家 孝(ふけ・たかし)

-----<経歴>-----

医師・医療ジャーナリスト。
1947年大阪市に生まれる。
1972年慈恵医大卒。
開業・病院経営・日本女子体育大学助教授を経て、現在、オフィス51取締役。
新日本プロレス・ドクター。
慈恵医大相撲部総監督。

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