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「社会保障と税の一体改革案」のマヤカシ(3)── 国民皆保険制度は形骸化している。混合診療をもっと増やせ! »

「社会保障と税の一体改革案」のマヤカシ(2)

 前回は、政府と民主党政権がつくった「社会保障と税の一体改革案」(2010年代半ばまでに消費税率を10%まで引き上げ)から、医療費の負担増を取り上げ、消費税の増税が必ずしも社会保障を手厚くしないことを指摘した。消費税が5%上がるとしても、そのうちのわずか1%しか社会保障に回らないことも指摘した。
 つまり、現行の改革案でもいまの医療制度は崩壊するのだ。そこで、今回は、この問題をもう一歩踏み込んで、いったいなぜ、こんなマヤカシの改革案しかできないのかを考えてみたい。

■「社会保障と税の一体改革案」のマヤカシ(2) 
──高福祉社会は絵空事。それができるという政府・民主党はウソつき。

 まず、日本の社会保障費全体の話からすると、日本の社会保障は、 1960年代には失業対策や生活保護などが中心だった。その後、次第に医療保険や年金制度などの社会保険や、老人福祉を中心とする社会福祉、介護などに重点が移り、いまでは医療費と介護費だけで、社会保障費の約半分を占めるまでになっている。

 これは、急速に進んだ高齢化が最大の原因であると言われている。とすれば、高齢化は今後も進むから、じつはこの問題の解決策は、本当を言うと一つしかない。ハッキリ書くが、公的な社会保障制度(医療や年金)は、一定限度まででストップし、あとは国民の自己責任に任せるしか方法はないのだ。
 要するに、国民全体が等しく負担する健康保険や公的年金制度は、最低限の保障しかしない。あとは、各自勝手にやってくださいということだ。

 2011年7月に発表された政府の試算では、自己負担も含めた医療・介護費が、2011年度は計48兆円。これが15年後の2025年度には、なんと83兆円になる。これは国家予算に匹敵する額だから、現在の制度では破綻は確実である。2015年に消費税を10%に上げられたとしても、単に焼け石に水なのである。
 現在、医療費は、毎年約1兆円のペースで増え続けている。これを税金投入と負担増で賄うことは、もう不可能なのである。

 それなのに、「社会保障と税の一体改革」では、医療・介護分野の見直しとして、医療、介護、予防サービスなどが切れ目なく一体的に提供される「地域包括ケア」体制の構築が打ち出されている。たとえば、人口1万人程度の小・中学校区にあたる日常生活圏域ごとに、「地域包括ケア」が実現し、人々は安心して老後を送れるというのだ。
 ところが、この理想的なシナリオ実現のためには、2025年度には税金負担を36兆円規模まで増やさなければならない。そんなことが、はたしてできるだろうか?

 いずれにせよ、こうした理想の実現のために、増税以外に「効率化」策というものが打ち出された。「効率化」というのは、社会保障の分野では、給付カットと同義。つまり、無駄な給付を削ることを指す。たとえば、要介護認定者数を3%程度減らすなどの施策である。
 今後は、高齢者数が増え、地域包括ケアの目玉とする24時間巡回型訪問サービスは、2015年度は1万人。2025年度だと15万人まで利用者が増えるとされる。まずこれを、少しでも少なくするというのだ。

 また、一般の医療でも、医療機関に長期入院されると費用がかさむので、急性期の平均在院日数は、大学病院などの高度急性期が15〜16日、一般急性期で9日程度と現状より20〜33%程度短縮することが計画されている。
 しかし、このようなことは、ストレートには表現できない。そのため、「病院ごとの役割分担を徹底する」などと言い方を変えている。つまり、発症間もない急性期の患者らが入院治療を受ける医療機関を、高度、一般、亜急性期・回復期(リハビリ専門)と再編し、「手厚い看護体制で早期退院できるようにする」というのだ。 

 ところが、このような「効率化」は、いずれも当初案に比べると、腰砕けになった。初めは「効率化3本柱を示す」とミエを切っていた菅首相は、効率化が給付カットと知るや「支え合い3本柱」と言葉を変えて、社会保障の充実化をはかることばかりを強調、負担増には一切触れなくなった。
 また、民主党内は「負担増はまかりならん」「給付はもっと手厚くしろ」との声ばかりで、「効率化」案は結局後退してしまった。
 つまり、なんの財源の裏付けもないのに、バラまきをする。そうして、「安心できる社会をつくる」というマヤカシを、彼らはいまでも言い続けているのである。
 
 現在、社会保障の世界では、「弱者の排除」がじわじわ進んでいる。一般サラリーマン(正規雇用者)が減り、労働者の3分の1を非正規雇用が占めるような社会となり、国民健康保険の保険料が払えず、無保険の人が増加している。「国民皆保険」制度は足下から崩れている。

 だから、経済面から国家制度を見る経済産業省(産業構造審議会基本政策部会)は、民主党の改革案と対抗するように、社会保障改革の中間案をまとめた。そこには風邪などの軽い病気には医療保険を適用せず、全額自己負担とする案が書かれていた。要するに、風邪ぐらいは自分で治せ、病院に来るなということだ。もちろん、保険適用外の高額治療費を払えるお金持ちは例外だ。
 いつまでも実現不能なマヤカシばかり続けていると、本当にこういう社会になるだろう。もはや日本では高福祉社会は絵空事。現行の制度では、高負担・低福祉にならざるを得ないのだ。

 そうしないためには、いますぐにでも、医療費の無駄を、まずは徹底して削ることである。そうして、原則禁止されている混合診療を一刻も早く多くの範囲で認めることだろう。現在、日本では保険のきかない治療を受けるときは、検査や診察料など本来は保険がきく部分も含めてすべてが自由診療扱いとなり、全額自己負担しなければならないことになっている。これを止めれば、国民皆保険はある程度崩れるとしても、競争原理が働き、医療費の際限のない増加は止まるはずである。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 
 
 平均寿命が延びてきた。
明治時代(1900年頃)の平均寿命は、男女共にほぼ35歳。
平均寿命が男女共に50歳を超えたのは、戦後の昭和22年(1947年)。
2,010年の平均寿命は、男性79.3歳(世界第4位)と女性86.1歳(世界第1位)。

この100年程で 48歳も長生き出来るようになった。
まあ、60年ほどでも、33歳ほど 平均寿命が延びた。。。


 平均寿命が延びたという事は “働ける期間” が増えているということ。
これは 国の宝ですよ。。。


現在の定年退職年齢が 60歳。
 国の宝を 最も有効に活用するやり方が 存在します。。。。。

 国民すべて、一律に、、、
 50歳で定年退職させることです。
 次に 仕事に赴けた場所は 定年退職を なくしましょう。。。

 国の労働資源は 最大限に利用すべきです。
 そ~でないなら 日本のような国は 歴史的に グローバル社会を渡ってゆけません。
 
 

医療制度の破たんは知っておりましたが、詳細を知らなかったので大変勉強になりました。破たんの深刻さは年金制度の比ではなく、今すぐにでも増税などによって予算的な手当てしなければならないほどだとの議論を4年ほど前に聞いたことがありましたが、その時よりも深刻さを増しているようです。
このような医療制度を始め、あらゆる政策内容の情報を公開し、国民的な議論をするべきです。議員もくだらない会期延長問題などで仕事をさぼらずに、このような情報に基づいて、委員会や議会で議論すべきです。
一部の人だけが知っていてなんとか取り繕える政策は、もうほとんど無いように思えます。できる限り公開されれば、どのような状態であるのかを国民は知り、最善の策を考えることができます。その結果としての増税やサービスの縮小であるならば、国民は受け入れるでしょう。
この例も、議員のサボりが国益を損なっているものの一つでしょう。本当に国会議員には、仕事をしてもらいたいものです。

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富家 孝(ふけ・たかし)

-----<経歴>-----

医師・医療ジャーナリスト。
1947年大阪市に生まれる。
1972年慈恵医大卒。
開業・病院経営・日本女子体育大学助教授を経て、現在、オフィス51取締役。
新日本プロレス・ドクター。
慈恵医大相撲部総監督。

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