Calendar

2011年1月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

Recent Entries

Recent Trackbacks

Category

« 医者を増やせば医療崩壊を解決できるのか?(2) ── 出産難民と不人気科目:なぜ産婦人科は嫌われるのか?
メイン
医者を増やせば医療崩壊を解決できるのか?(4)── フリーター医師の増加は過酷な労働が原因か? »

医者を増やせば医療崩壊を解決できるのか?(3)── 深刻化する小児科医不足、解決策はあるのか?

 医療崩壊が言われて久しいが、その背景には深刻な「医師不足」があるとして、現在、わが国は医者の数を増やそうとしている。しかし、医者の数を増やせば、それで医療崩壊を解決できるのかと言えばそうではない。

 今回は、前回の産婦人科医に続き小児科の問題について考える。

■医者を増やせば医療崩壊を解決できるのか?(3)── 深刻化する小児科医不足、解決策はあるのか?
 
 前回は、産婦人科医が減少して、とくに地方では地域に産婦人科医がなくなり、わざわざ他の地域に行かなければ出産できない事態も起こっているということをお伝えした。いわゆる「出産難民」だが、今回は同時に進行中の小児科医不足を考えてみたい。

 まず、両者に共通しているのは、日本が人口減少社会になったことである。現在、1年間に生まれてくる子供の数は約100万人。これは、団塊ジュニア世代が200万人を超えていたから、その半分である。この影響は深刻で、病院ばかりか学校経営にも影響を与えているのはご存知のとおりだ。

 小児科の経営が成り立つのは、昔から「1クラス40名として、最低2クラスが必要」とされてきた。というのは、子供の病気というのはほとんどが感染症で、風邪などは1、2回の通院ですんでしまうため、地域に一定の子供がいなければ成立しないからである。また、子供が病院に来るのは学校が終わった午後4時から夜の「準夜帯」という時間帯。ここに集中する。病院の勤務は医師から見ると、朝8時から午後4時までの「日勤帯」と、その後の深夜12時までの「準夜帯」、12時以降朝までの「深夜帯」の3つの時間帯に別れるが、このうちの1つの時間帯に患者が集中するのも、病院経営から言うと難点がある。さらに、一般的な子供の病気は感染症が多く治りが早いため、入院ベッドを常時満杯に出来にくいことも、小児科を成り立たなくさせている。

 こうして、地域の小児科専門医はじょじょに姿を消し、現在、地方では拠点病院にしか小児科専門医がいない、ということも珍しくなくなった。

 では、国はこの問題に対してどのように考えているのだろうか? 小児科医不足が問題化したのは5、6年ほど前からだが、じつは国は、今日までなんら有効な対策を打てないでいる。「診療報酬の改訂で小児科の初診料の点数等の加算、アップ」「小児救急医療拠点病院を新たに整備する」「ITを活用して小児科以外の医師ができる小児救急医療ネットワークを構築する」などの措置は取ってきたものの、すべて焼け石に水だった。

 とくに少子化が進む地方では、子供が病気になると近所の病院に行くが、そこには小児科がないから、内科当番医が電話で専門医に相談しながら診るようなことが日常化してしまった。

 現在、国は医療崩壊対策として、遅ればせながら医師数そのものを増やすために医学部の定員増を実施し始めた。しかし、これは対策になっていない。というのは、医師数が増えても、小児科医のなり手がいないからである。

 じつは、最近は全国のどの医学部でも偏差値が上昇している。昔は50以下という医学部もあったが、いまはない。つまり、医者の偏差値は上がっていて、その結果、医学生はますます経済的な考えに傾くようになってきた。彼らが、労働の割には儲からない小児科を選択するはずがない。また、医者になるのは2代目、3代目が多いが、小児科医院を継ぐ場合をのぞいて、医者の父親から「夜中に起こされる小児科などは選ぶな」と言われて入学してくる。

 したがって、この問題の解決策には、小児科を経済原則からはずしてしまうか、あるいは経済的に成り立たせるかの2通りしかない。昔は、採算を度外視しして医療のために予算を組む地方自治体もあった。しかし、いまや地方財政も火の車で、そんなことはできない。とすると、国から特別補助予算を回すしかない。そうして、小児科医を一定数確保するために、医学部卒業生の何パーセントかに小児科を義務付けるほかない。

 これができないなら、医療もあくまで経済原則のなかで捉え、思い切って小児科の報酬を少なくともいまの1.5〜2倍ぐらいにする。このようにはっきりしたインセンティシブを示すことだ。現行の特定診療報酬では、インセンティシブが起きようもない。

 ただし、小児科の医師の給料を上げたからといって、小児科のなり手が増えるとは限らない。しかし、現状では、あと数年で、人口5〜10万クラスの地方都市でも、小児科が姿を消してしまう。となれば、親はよほどの重病、急患でなければ子供を病院に連れて行けなくなる。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/7756

コメント (6)

■コメント投稿について編集部からのお願い

《THE JOURNAL》では、今後もこのコミュニティーを維持・発展させていくため、コメント投稿にルールを設けています。はじめて投稿される方は、投稿の前に下記のリンクの内容を必ずご確認ください。

http://www.the-journal.jp/contents/info/2009/07/post_31.html

ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

富家 様

興味深くご投稿を読ませていただきました。厚生労働省というのは、足りないといえば、医師の数を増やせばよいといった形式的な発想しか出来ないのでしょうか。

いろいろ考え方がありますが、日曜診療だと割増料金を取りますし、往診だと往診料金を取るのではありませんか。

小児診療も14時ぐらいまでの普通の時間帯であれば、通常料金とし、18時までの料金は1.5倍にし、夜は特別料金加算など、時間料金制を採用したらどうでしょうか。

旅行などをしますと、休暇の前日は2~3割高は当たり前、時期も利用者の集中する5月の連休などは、倍の料金が当たり前です。

国の補助をどうするかは、政治的判断がいりますが、時期別、時間別料金差の採用は緊急的に導入したらよいのではないか。あくまでも門外漢の提案です。

少子高齢化社会の弊害が、様々な分野で噴出して、更なる少子化へ加速していかざる終えない実情を見せていただいたようです。

私の住む町でも、小児科や産婦人科の個人経営の病院は減る一方であり、存在する病院も先生の高齢化と跡継ぎが居ない現況を確認できています。

そして、15年前、我が子を見ていただいていた総合病院においても、小児科の先生が居なくなって、小児科診療を止めてしまった。

それを知らずに3年前、中学生に成った子供の腹痛を診て貰らおうと開院を待って連れて行ったが、中学生は小児科に当たり、診察を断られてしまった。

風邪の症状なら、馴染みの個人経営の小児科へ行っていたが、腹痛で脂汗と、苦しみ方が強いので繊細な検査をしてもらいたかった。

苦しむ我が子に我慢させ、診察して貰える病院を探す為、それから1時間以上も掛かってしまった。

幸い重病ではなかったが、もし一刻を争うような手遅れになる病だったらと思うとゾッとする。

医者不足が有り、介護士不足。都会では待機児童が多いという保育所不足、一方で地方では少子化が加速して幼稚園や保育所経営が厳しいと聞く。

一極集中した歪みと、少子高齢化社会を放置したこの国の政治の大罪が国民を苦しめ、将来その苦しみは間違いなく加速する。

それを正して行こうという民主党の掲げた政策をばら撒きなどと批判するお馬鹿な野党と既得権益集団。彼等には将来を見据えたプランなどないのだろう。有るのは利権を守ることだけ・・・

我々だけは、そんな国民が直面する苦しみ等、金が有るから大丈夫だと思っているかのようなふざけた態度で・・・

富家様

小児科は、私の隣町(人口二万足らずですが市です)では全てなくなり市が経営を助成し市立の小児科病院として医者を確保しています。

そこで素人考えで大変申し訳ないのですが、一部の学生に小児科を義務づけるのではなく、例えば内科を志す学生や外科を志す学生に小児科を義務づける方法は考えられないのでしょうか。

内科や外科の病院があれば、必然的に小児科もあるような病院が出来れば問題はなくなると思うのですが。無論、そのような医者への診療報酬は見直さなければなりませんが。

診療科目としての小児科はなくなっても、治療としての小児科が残ればいいのですから。

そんな夢みたいなことを言っても、医師会の総本山が許すこともないでしょうが。

私立病院は 経営が成立しなければ、やって行けません。
産婦人科・小児科が 経営的に難しいなら、手を出さないでしょう。


社会とは 何のためにあるのでしょう。。。
個人で生きて行くよりは 楽だからです。
税金はあまねく強制的に徴収されます。
それ故、
国内のどんな地域に住んでいようとも 医療を安心して受けられる権利があります。

民間が出来ないのなら 国が医療を提供しなければなりません。
それだけのことです。

迷い人(2011年1月12日 13:39)氏の
内科医・外科医に 小児医療を義務付ける。
それでよいと存じます。
ただ 医師個人にオーバーワークを押し付けない“手立て”は必要です。
労働基準法を厳格に適用する必要があります。
そのためには 小児科医を増やさねばなりませんし、経営的にも診療報酬の優遇が要ります。。。
更に 小児科医への訴訟は、国が肩代わりするするような仕組みも必要か。

どの地域に住んでいようと 安心して医療を受ける権利が 国民にはあります。。

地方都市で突然診療科が閉鎖となるのは、別に小児科に限った現象ではありません。やはりフリーアクセス思考に慣らされた地域住民が病院をコンビニ扱いして、結局医者を潰してしまった側面が相当あるんじゃないかと。また、冨家さんなどマスコミ側の医療叩きが医者軽視を生み出したこともきちんと押さえておくべきです。上からの目線の義務化ばかり叫んでも、医者患者の相互不信が解消しないかぎり解決にはならないでしょう。医者を公務員化して強制配置したとしても、北欧のように冷たい医療が行われるだけだと思います。
崩壊を食い止めるにはまず過度のフリーアクセスをやめること。救急車はもとより、救急ヘリが無料なのは馬鹿げています。さらに、保険診療外で迅速に受けられるプライベート医療機関の設置も制度として確立すべきでしょう。日本より医療費に公費を使っている欧米でさえそうしているのですから。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

富家 孝(ふけ・たかし)

-----<経歴>-----

医師・医療ジャーナリスト。
1947年大阪市に生まれる。
1972年慈恵医大卒。
開業・病院経営・日本女子体育大学助教授を経て、現在、オフィス51取締役。
新日本プロレス・ドクター。
慈恵医大相撲部総監督。

BookMarks

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.