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« 医者を増やせば医療崩壊を解決できるのか?(1) ── 医学部の定員増が決定!しかし、それだけで問題は解決しない
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医者を増やせば医療崩壊を解決できるのか?(3)── 深刻化する小児科医不足、解決策はあるのか? »

医者を増やせば医療崩壊を解決できるのか?(2) ── 出産難民と不人気科目:なぜ産婦人科は嫌われるのか?

 医療崩壊が言われて久しいが、その背景には深刻な「医師不足」があるとして、現在、わが国は医者の数を増やそうとしている。しかし、医者の数を増やせば、それで医療崩壊を解決できるのかと言えばそうではない。
 今回は、いまや激減している産婦人科医の問題について考える。

■医者を増やせば医療崩壊を解決できるのか?(2)
── 出産難民と不人気科目:なぜ産婦人科は嫌われるのか?

 
 かつて医者は尊敬される職業であり、優秀な若者たちはなりたい職業の一番手に「医者」を挙げたものである。それが、最近は「医者のなり手がいない」と言われるから時代は大きく変わった。

 とくに、産婦人科医と小児科医は不人気で、産婦人科医にいたっては、平成に入ってからは一様に減少しており、10年前に比べて10%以上も減っている。これは、近年、国の政策もあって医師数全体が微増してきたなかにあっては特筆すべきことだ。

 産婦人科医の減少から、最近ではいざ出産というときに分娩予約が一杯で受け付けてもらえないという事態も珍しくなくなった。また、地方では自分の住む地域に産婦人科医がなくなり、わざわざ他の地域に行かなければ出産できないという事態も起こっている。

 こうしたことを称して「出産難民」と呼んでいるが、いくら人口減社会になったとはいえ、これは行き過ぎだろう。民主党が子供手当をいくらはずもうと、厚労省が出産一時金の暫定措置を引き延そうと、解決する問題ではない。

 ご承知の方も多いと思うが、この10月13日、厚労省は、出産費用の全国平均(平成22年8月時点)が47万3626円に上るとの調査結果を発表した。現行の出産一時金は原則42万円だから、これでは、本人負担が5万円も上回る。出産一時金はかつて38万円だったものに4万円上乗せさてこの額になった。しかし、これは暫定措置で今年度いっぱいで切れることになっていたが、来年度以降も「原則42万円」を維持し、恒久化せざるを得なくなった。

 このように、出産費用が上がったのもまた、産婦人科医不足が大きく影響している。

 では、なぜ、これほどまでに産婦人科が嫌われるのだろうか?

 それは、逆説的な言い方かもしれないが、昔と同じく医者になろうとする若者たちが優秀だからだ。ただ、その優秀さが、現代では「費用対効果を考える」あるいは、「いかに楽をして儲けるか」というということに向かっている。

 つまり、産婦人科は、彼らにとってまったく割の合わない職業なのである。

 このような風潮になったのには、2つの事件が大きく影響している。一つが、 2004年に起こった福島県立大野病院産科医逮捕事件である。これは日本の医療過誤訴訟に大きな影響を及ぼしたが、なんといっても帝王切開をした産婦人科医が業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪で逮捕されたことが大きかった。これで、産婦人科は「逮捕されることがある」というイメージが広がってしまった。

そしてもう一つが、2006年に起こった「妊婦たらい回し事件」である。なんと、このときは18病院が転送を拒否して、妊婦は死亡してしまった。これで、いかに産婦人科医の人数が不足しており、その現場は激務であるという認識が決定的になった。

 そんななか、国は2004年4月から医師臨床研修制度を導入した。それまでは2年間の研修は努力義務だったが、このときから研修は義務化された。そしてこの義務は、複数の科を研修するスーパーローテート方式になっていた。それ以前、学生たちは大学卒業後そのまま志望科の医局に入局していたが、このときから希望の有無を問わず様々な科を回るようになった。つまり、学生たちはナマの医療現場を実際に知ることになってしまったのだ。

 こうなると、リスクもあり激務な産婦人科が嫌われるのは当然だ。実際、この制度の1期生で、産婦人科を選んだ者は4割も減った。

 これでは、いくら医師数を増やしても医療崩壊は止まらないだろう。

 いまや、地方病院では新人の産婦人科医は入ってこない。それで、産婦人科を廃止するところも多い。なんらかのインセンティブを考えないと、この傾向は止まらないだろう。

 38年間医療を見つめてきてまったく変わっていないと、私が思うことがある。それは、医者になるのは、本人が優秀(偏差値が高い)か、あるいはお金のある家(多くの場合、医者)の子供の2通りしかいないということである。そして、この両者には共通点がある。それは、けっしてリスクを取らないということだ。

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周産期センターの第一線で働く幹部医師です。現在の周産期医療について現場にいる立場から述べます。産科医の減少の理由として、逮捕や訴訟リスク、研修医制度があるのは事実です。それと同時に、産科医減少の最も大きい原因は、産科医療自体がもっと大きな構造的なパラダイムシフトの時期にあることだとも思っております。中世以降の出産体制の中心であった「ベテランの産婆さん」からの流れで、地方ではいまだに「一人産科医」が何百件もの出産を手掛けており、その旧態然の出産体制が高齢出産(地方を含め、毎年0.1歳上昇し続けている。現在は初産で平均30歳)で妊娠分娩リスクにより崩壊して来ていることが背景にあります。妊娠出産はおめでたい事であり病気でないという妊婦側の意識や、8-9割の正常な妊娠出産に合わせた医療体制は地方、都市部でもまだまだ根強く、妊娠出産の実態が突然病気を発症するかもしれない救急医療であり、死ぬかもしれないという認識を妊婦、医療両サイドに今やっと浸透させつつあるのが現状です。よく分からないから怖い事が起こるかもしれないから他の病院へ行けと言ったり、医師不足で閉院が相次いだり、残った産院も分娩制限をとった挙句に分娩難民となる事情もそこから来ています。
いろいろ騒がれていますが、現在まだ日本の周産期医療のレベルは世界トップクラスです。それでも産科医療の縮小が続いて無策でいれば、経済のように簡単に下位へ転落するでしょう。今後、妊婦・医療サイドの認識改革を行い、救急医療に備える医療レベルを上げ、各施設連携を強める事を続けていくことは必須ですが、そこまでやったとしても今までの体制を維持する事は困難なのは明らかです。最終的には、マンパワーを集約し、年間5000件ぐらい出来るような地方の拠点病院を其々作り、提供する医療サービスも繊細な女性の感性に耐えうる助産体制から、妊娠合併症管理やNICU完全完備の周産期センター機能を含むあらゆるニーズに答えられる様にすることが急務かもしれません。もう時代が米国型の集約医療体制を望み、「チョット近くの産婦人科で見てもらってお産する」という当たり前の望みを叶えるのを許容しなくなっているのかもしれません。

自分は地方医学部6年の学生です。
富家氏のおっしゃる通りなんらかのインセンティブがないと産婦人科志望者の増加は望めないと思います。
その理由は、一番進みたい科を研修をしながらじっくり考え、いろんな意見を聞き、自由に選ぶことができるようになった、ということにつきると思います。
先生方の話を聞くと、昔は学生のころに部活の勧誘のように先生方の熱烈な勧誘を受け、そのまま入局することも多かったようです。

そのような勧誘を受けることもなく(多少はありますが・・・)多くのやりがいのある魅力的な科の中から、産婦人という特殊な領域をあえて一番に選ぶ学生(特に男子学生)は少数派だと思います。(友人は実習で分娩に立ち会って感動して決めましたが)

インセンティブといっても給与を含めた待遇が多少優遇されても増えるとは考えにくいです。
やはり産婦人科特別枠を入試の段階で作り、何も知らない受験生を取り込むしかないのではないでしょうか。条件は例えば「卒後10年は産婦人科医として務める」とかで。
どうしても医学部に入りたい受験生はそれでも集まってくるはずです。医学部に届かなくて歯学部に入る人が多くいるくらいですから。
入学後に考えが変わると不幸ですが。。。

私は首都圏在住(ただし、現在は海外転勤中)ですが、産婦人科の診療所って古いところが多いですね。私の子供がお世話になった先生も高齢で引退、診療所もなくなってしまいました。
子供がお世話になった先生は自然分娩派で、陣痛剤も必要な時だけ。帝王切開は本当に危ない時だけだったようです。
新しい、若い医師がやっている診療所もありますが、やたらと帝王切開を勧めるところもあります。やはり、自然に任せるのは時間もかかるし、切開したほうがお金になるからなんでしょうね。
やはり、現場の実態に合わせたインセンティブを設けないと問題は解決されない気がします。医学部の学生には希望すれば誰でも防衛医大みたいに学費と給与も与え、その代わりに15年間、割り当てられた勤務を義務付ける奨学金を作るべきだと思います。

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Profile

富家 孝(ふけ・たかし)

-----<経歴>-----

医師・医療ジャーナリスト。
1947年大阪市に生まれる。
1972年慈恵医大卒。
開業・病院経営・日本女子体育大学助教授を経て、現在、オフィス51取締役。
新日本プロレス・ドクター。
慈恵医大相撲部総監督。

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