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医療崩壊は業界内部の問題・刑事免責の理由にはならない »

警察への通報規定をなくせば再び医療事故は闇に葬られる

 これは現行の刑法の枠組みにも変更を迫る暴論と言わざるを得ない。「訴訟や刑事事件になると、医師側と患者側が対立構造になってしまう。裁判になると医療者は本当のことを言えなくなる」という主張まで見受けるが、これは「医師は公判ではウソをつく」と言っているのと同じで、刑法どころか法治国家のあり方さえ無視する、まさに開いた口がふさがらない理論である。

 他の職業と比較して考えてみたい。たとえば観光バスや高速夜行バスの業界は、規制緩和による新規参入で安値競争が起きている。一台当たりの売り上げ単価は以前より減り、運転手の労働条件は厳しくなった。しかし、お客は格安のレジャーを楽しみにしており、公共交通機関としての社会的役割も大きい。多くの運転手が、お客を奪い合い、精神・肉体両面で無理を重ねて働いている。だが、人身事故を起こしてしまえば刑事責任を問われる。当たり前の話である。

 まだ独り立ちさせられない未熟なパイロットに旅客機の操縦を任せ、その結果、機器の操作を誤り、重大な事故を招いたらどうなるか。パイロットは当然捜査の対象となり、技量の劣るパイロットに運航を任せた会社の刑事責任も問われることになるだろう。

 マスコミが表現の自由や取材の自由について声高に主張することはあっても、自分たちを名誉棄損の適用から除外しろと言うことはないはずだ。

 一部医療関係者の意見に惑わされ、医療安全調査委員会から警察へ通報規定をなくしたり、極めて限定したケースに限ったりすることになれば、その組織はもう、医師を刑事責任の追及から守るための隠れみのとしか呼べない。医療界は再び、医療事故を届け出ることも遺族らに十分説明することもなかった一九九九年以前に戻ってしまうに違いない。

 医療関係者の多くが、「警察がこれほど医療事故に介入する国は、先進国では日本だけ」と口をそろえる。それはその通りなのだろう。しかしこれは「警察が介入しなければ事実が解明されず、反省も教訓もくみ取らない体質の医療界は日本だけ」ということの裏返しでもある。「日本では、医療事故を起こした医師を刑事罰に問う、と欧米の医師に話すとびっくりされる」という論文を読んだこともあるが、ぜひ、「日本では医療事故があってもカルテを改ざんして、遺族にまともな謝罪をしない」「腕が悪く、手術で患者を何人も死なせているリピーターの医師がずっと医療現場にいる」という話をしてあげて欲しい。もっとビックリされること請け合いである。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

一般病院の勤務医をしています。

「悪質な医療過誤」と「一般的な医療事故」を混同しているのではないでしょうか?

医療事故調についての医療人の意見は概ね以下のとおりだと思います。

・医療事故を分析する目的は、当事者の処罰ではなく、再発防止を目的にすべきである。もちろん「悪質な」医療過誤は刑事罰を与えるべきである。

・医療行為には不確実性があり、一定の確立で不幸な結果(医療事故)は生じる。これらの全てに警察への届け出を義務づけたら、ハイリスクの患者に対する治療を医師が行えなくなる。このことは国民の不幸につながる。

・医療の専門家以外(警察)には医療事故の原因を分析できない。分析する専門家組織を早く作るべきである。分析の結果、必要な場合は当事者の処罰(行政罰)を決定し、悪質な医療過誤の場合は警察に届け出を行う。

 ご存じのように航空事故は運輸安全委員会(旧航空事故調査委員会)が再発防止を目的として分析を行っています。

この記事とは直接関係ないけれど、医療に関して、新たな規制緩和が。

今、お昼のNHKニュース見ていたら、ワクチン製造に製薬業界が乗り出すそうな。
今まで、事実上、4団体に限られていたワクチン製造できるのが、製薬業界に広がる、というのは一つの朗報かもしれません。
これも、民主党政権になったからこそです。自民党政権では、なんでもワクチン利権、というのがあって、4団体が独占していたそうです。以前読んだ、なんかの記事にそう書いてありました。
4団体に群がる旧政権の利権構造にメスを入れよう、とするのもでしょう。
長妻さん、いよいよ本領発揮ですね。

もちろん裁かれるべき悪質な医療事故というものもあるでしょうが、まずは医療事故を隠蔽したことに対して刑事罰を課すべきだ、というのが素人である私の現時点の感想なのですが、いかがでしょう。

航空事故は国交省が「事故らしきもの」「事故になりそうだったもの」まで含めて、厳しい報告義務を航空事業者に課していますが、同じように厚労省は医療機関にそのような義務を課しているのでしょうか。

運輸安全委員会のようなものが医療界でも機能しているならそれでいいと思いますが、その機関が国民の信頼を得ていないのであれば、存在していないのと同じであり、結局一般人は警察を頼るしかないような気がします。

それが医療過誤であろうと、一般的な事故であろうと、被害者は再発防止を願うものであり、その体制作りが医療機関には乏しいと、筆者は指摘しているのだと読みました。

whitejack様

一部理解できますが、おおむね聞き捨てならぬ投稿ですので反論します。

①真ん中あたり:「医療行為には不確実性があり、一定の確立(ママ)で不幸な結果(医療事故)は生じる。これらの全てに警察への届け出を義務づけたら、ハイリスクの患者に対する治療を医師が行えなくなる。」
  ↓
届け出は事後に行うものなのに、届け出を義務付けたら治療できなくなるという理屈は小学生にも通じません。あなたの頭は幼稚園児並ですか。

②その前段:医療事故を分析する目的は、当事者の処罰ではなく、再発防止を目的にすべきである(ママ)。
  ↓
届け出はいやだが、分析はするのですか?届け出をなくしてどうやって分析できるのです。誰が医療過誤を見付けられるのです。

③最後の段:航空事故は運輸安全委員会(旧航空事故調査委員会)が再発防止を目的として分析を行っています。
  ↓
この記述には巷で流布されている「パイロットの免責」を読者に想起させる意図が感じられます。日本ではアメリカと違い、事故を起こしたパイロットは調査に協力しても通常免責されません。アメリカ流のやり方にも一理ありますが、原因究明と犯罪処罰とを秤にかけた立法政策の課題です。医師は免責されて当然だと思わせたいのでしょうが、そうは問屋が卸しません。

医者や教師は聖職と呼ばれることがありますが、そのため医者や教師の中にはその職業で収入を得ていることを忘れてしまう人がいるようです。免責を主張されるなら、無給でおやりなさい。

富家孝 様

本当に貴方は医師ですか?

ペーパードライバーいやペーパー毒田阿ではないですか?政治の世界・経済の世界でもそうですが、この程度の人間が評論家と名乗れる日本は何と自由で良い国でしょう。

莫郎(本名伊藤兼吾)様

無茶な誤解に基づく非難です.whitejack様の主張は以下のとおりでしょう.

医療事故の調査は従来,病院内の調査委員会などによって内部的に行われていたので,うやむやにされることが多かった.第三者的な専門医から構成される医療版FAAが医療事故の調査を行うべきである.専門知識の乏しい警察・検察に医療事故の調査はできないし,警察・検察の介入は医者を萎縮させ,ハイリスクな医療が行われなくなることにつながる (産婦人科医や小児科医が減っている主な原因はそこにあります).医療版FAAが医療事故を分析し,重大な過失があった場合,責任ある者は刑事処分の対象となる.

>これ(驚くべきは、公表された試案に対する一部の医療関係者の反応は、自分たちが医療の名の下に行った一切の行為を刑事責任追及の対象から外すということである)は現行の刑法の枠組みにも変更を迫る暴論と言わざるを得ない。

この文章からは、現行の刑法に問題があるかないかという問題意識を持つことそのものが悪であるというような印象を受けます。それで、よろしいでしょうか。そうだと致しますと、そのことが暴論かどうかはさておきまして、現行の刑法に問題がないとなぜいえるのでしょうか。時間が経てば時代とともに法律は変わっていくのが必然ではないでしょうか。もし現行の法律に問題があるかないかという問題意識を持つことそのものが悪であるということを前提とされていると致しますと、それはちょっと違うのではないかと思います。なぜなら、法律に合わせるために国民が存在しているのではなく、国民のためにその代表である国会議員が(国民の利益となるように)法律を作っているのであり、現行の刑法が古くなり国民の損失が大きいということであれば、そのような法律を変更するのは当たり前のことなのではないのでしょうか。従いまして、現行の法律に問題があるかないかという問題意識を持つことそのものは悪いことどころか、日本をもっと良くしたいという志のある国民にとっては当たり前の意識なのではないでしょうか。

>他の職業と比較して考えてみたい。たとえば観光バスや高速夜行バスの業界は、規制緩和による新規参入で安値競争が起きている。・・・・・・多くの運転手が、お客を奪い合い、精神・肉体両面で無理を重ねて働いている。だが、人身事故を起こしてしまえば刑事責任を問われる。当たり前の話である。

 バスの運転手さんは、無理をして働いているのに、免責にならない。それなのに、医師は、無理をしないで(?)働いていながら、免責となる。だから、それは不公平だと主張されたいのでしょうか。どうでしょうか。
 もしそうだと致しますと、まず無理をして働いているかどうかは医師の刑事罰免責の問題と全く関係ない問題と思われます。医師にしろ誰にしろ、その労働者としての労働環境が守られるべきでなのは当たり前のことであり、刑事罰の免責があろうがなかろうが労働者としての権利が守られなければならないのは当たり前のことです。
 そうではなく、バスの運転手さんと医師は人の命を預かっているという部分が似ているのに、一方は免責で、他方は免責ではなく、不公平であるということを主張されたいのでしょうか。どうでしょうか。
 もしそうだと致しますと、この場合は、バスの運転手さんと医師は人の命を預かっているという部分があり、一見似ているように見えるかもしれませんが、この2つの仕事には全く異なる点が存在するのです。バスの運転手さんの場合、乗車客は健康で死ぬ予定はない、その一方で、医師の仕事の場合、(バスの運転手さんの乗車客にあたるところの)患者さんは基本的には(病気のために)死ぬ方向へ向かっているのです。この点が、全く異なる点なのです。その重大な違いがあるということをはっきりと認識した上で考えなければ、バスの運転手さんと医師の一方は免責で他方は免責でないことの是非の判断において、大きな判断の誤りを犯してしまいます。(病気のために)死へ向かっている人を、死なないように全力をつくしても、死亡したり後遺症が残ることはあるのです。そのことに対して刑事罰を加えるということを実現するならば、結果として死亡や後遺症が残る可能性のある危険な治療を医師が選択できなくなる可能性があります。そのことで医師を非難することはできないのは、医師にも人間としての権利があるのですから、明らかです。自分が(善意で行ったことで)犯罪者になるかもしれない行為を行うか行わないかの選択権はあるのです。不可能な事を求める制度の側に問題があり、その制度を作った人がその責任を負う必要があると思われます。

>一部医療関係者の意見に惑わされ、医療安全調査委員会から警察へ通報規定をなくしたり、極めて限定したケースに限ったりすることになれば、その組織はもう、医師を刑事責任の追及から守るための隠れみのとしか呼べない。医療界は再び、医療事故を届け出ることも遺族らに十分説明することもなかった一九九九年以前に戻ってしまうに違いない。

 ”医療界は再び、医療事故を届け出ることも遺族らに十分説明することもなかった一九九九年以前に戻ってしまうに違いない”というように富家さん御自身が指摘されていますように、裏を返せば、現在2010年におきましては、医療界は医療事故を届け出ることや遺族らに十分説明することはすでにできていると富家さんは考えられているということとなると思います。つまり、”医療安全調査委員会”が存在しなくとも、医療界は医療事故を届け出ることや遺族らに十分説明することを、すでに達成できているということであり、”医療安全調査委員会”の規定が無関係であることは明らかと思われます。にもかかわらず、そこで論理が唐突に飛躍して、”医療界は再び、医療事故を届け出ることも遺族らに十分説明することもなかった一九九九年以前に戻ってしまうに違いない”という結論となってしまうのは、なぜなのでしょうか。論理的には、”医療安全調査委員会”の存在なしにそれらのことはすでに成し得ているわけですから、、”医療安全調査委員会”が発足したあかつきには、さらに別のメリットが国民にとって存在するからそれは良いことなのだということを主張されるべきなのではないでしょうか。いかがでしょうか。そして、そのさらに別の国民にとってのメリットとは如何なるものとお考えでしょうか。

> 医療関係者の多くが、「警察がこれほど医療事故に介入する国は、先進国では日本だけ」と口をそろえる。それはその通りなのだろう。・・・・日本では、医療事故を起こした医師を刑事罰に問う、と欧米の医師に話すとびっくりされる」という論文を読んだこともある

富家さんも、国際的には、医療行為には刑法を適用しないということが標準であることを、御存知でいらっしゃるということでよろしいのでしょうか。

>しかしこれは「警察が介入しなければ事実が解明されず、反省も教訓もくみ取らない体質の医療界は日本だけ」ということの裏返しでもある。・・・・・・ぜひ、「日本では医療事故があってもカルテを改ざんして、遺族にまともな謝罪をしない」「腕が悪く、手術で患者を何人も死なせているリピーターの医師がずっと医療現場にいる」という話をしてあげて欲しい。もっとビックリされること請け合いである。

そして、上記からは、富家さんが考えるところの医療行為に対して刑法を適用するべきだという理由として、警察が介入すれば、医療界は反省し、教訓を得て、また手術で患者を何人も死なせているリピーターの医師が医療現場からいなくなるというメリットが国民に対して存在するということでよろしいでしょうか。
そうだと致しますと、まず本当に警察が介入すれば、医療界は反省し、教訓を得て、また手術で患者を何人も死なせているリピーターの医師が医療現場からいなくなるというメリットを国民は享受できるのでしょうか。また、警察が介入するという方法以外に、その事を達成できる方法は他に本当にないのでしょうか。その一方で、警察が介入した場合のデメリットに対する考察はなされていないように見受けられますが、いかがでしょうか。なぜ、国際的に、医療行為に刑法を適用しないことが標準であるかは、そのデメリットがあまりに大きいからだと思われます。つまり、上記しましたように、制度の結果として死亡や後遺症が残る可能性のある危険な治療を医師が選択できなくなる可能性があるからです。そのことに関しましては、上記しました通りです。

富家さんの今回の主張は、少しは他の職業の比較や他の先進国の比較にも言及してはいるけれど、結局は「お医者は完ぺきじゃなきゃ嫌だ」という駄々っ子の論理としか思えないのです。医療の世界が隠蔽的な傾向はたしかにあるけれど、応召義務のようなおかしな法律で行政サイドが医療側に責任を押し付けてきたひずみが主な要因でしょう。他の先進国は医者に患者を断る権利を与えているし、アメリカはクレジットカードがなければ門前払いです。全体のシステムを健全にしたいと言うなら、日本も海外のドライなやり方を見習ってみることも考慮すべきでしょう。
ハッキリ言えば、日本という国そのものが隠蔽的なシステムに支配されているのです。医療を管轄する厚労省、医療を裁こうとする検察、司法自体に自浄作用がなく、自分たちの不祥事を臆面もなくもみ消しています。カルテ改ざんにしろ、食肉産地偽造・毒米の問題にしろ上位システムの腐敗によるモラルハザードの反映にすぎないのです。都合の良い部分だけ対症療法しても意味がないでしょう。

富家様

マリアンヌ様を別にして、この板は議論を見えなくする不可思議な投稿ばかりですね。自由診療にすればいいじゃん、とかいうのもあるが、医療保険のお陰で医者は儲かってきたのです。戦前の旧国保導入の際医者は金持ち相手で十分だと大反対だったが、導入されてみると大儲けできたため制度が定着したのです(国民健康保険50年史)。私も税負担軽減の観点から若人(65歳未満を指す)の医療保険廃止はいいと思いますが、本題とは別です。

富家つぶしの工作部隊集合ですか。鉄という高校の同級生が勤務医の組合を作ろうとしてましたら、去年麻薬取締法違反で書類送検され、しばらくして不審死しました。鉄はネットで組織的に攻撃されてましたから、気を付けてください。さて、梅光様のお怒りは何でしょう。

莫郎(別名知ったかぶり)様の””さて、梅光様のお怒りは何でしょう。 ””

何も怒っていません。ただ、心配しているだけです。

勤務医の息子を見ていると医師として人間として良くやっていると思います。

ただ心配するのは医療訴訟が増え過ぎると真面目であるが、小心者の医師はなるべく訴訟の無い科を選ぶか、少しでも難しい手術はしなくなり、結局多くの患者さんが困るようになるのではないでしょうか?

或いは一度は行き着くとこまで行かないと人間は分からないのでしょうか?

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Profile

富家 孝(ふけ・たかし)

-----<経歴>-----

医師・医療ジャーナリスト。
1947年大阪市に生まれる。
1972年慈恵医大卒。
開業・病院経営・日本女子体育大学助教授を経て、現在、オフィス51取締役。
新日本プロレス・ドクター。
慈恵医大相撲部総監督。

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