大野和興:「新自由主義を超えた構想力を」―農業政策を考える(1)
今度の選挙の見どころのひとつに、農村票がどう動くかがあることは誰もが認めることだろう。ここ20年、グローバリゼーションの嵐が農業と農村に襲いかかり、農産物価格の下落と農村雇用の縮小というかたちでむらのくらしを直撃した。それは、都市における雇用の不安定化と賃金切り下げといった状況と同じ根っこをもつ新しい貧困とでもよぶべきものである。
農村の困窮化は農村票の反乱となって、これまで農村を地盤としていた自民党をゆるがした。2007年の参院選で地方の一人区で自民党が軒並み議席を失ったことは記憶に新しい。参院における与野党逆転は、人びとに今回の政権交代選の到来を予感させるに十分だった。
この与野党逆転をつくりだした要因のひとつが民主党が打ち出した農業政策、戸別所得補償政策であった。あわてた自民党は、それまでの規模拡大・政策対象の選別化を軸とする農政「改革」を後戻りさせる方向にかじをきり、農村票取り戻しに走っている。