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藤沢周平の「盲目剣谺返し」 »

「武士の一分」と差別用語

山田洋次監督の「武士の一分」を見ました。「一分」とは、「それ以上は譲ることのできない名誉。一身の面目」(『明鏡国語辞典』)のこと。公開前から話題になっていた理由のひとつは、木村拓哉さんが主役を演じているからでした。「キムタクと知って見る気が起らない」という意見もあれば、「キムタクだから見る」というものまでさまざま。見終えた感想はなかなかいいじゃないかというものでした。物語に単調さを感じたのは「たそがれ清兵衛」の面白さが基準になっていたからでしょう。いくつかの疑問が残りました。「盲目」という台詞です。果たし合いを相手に通告するとき、「盲目ゆえに油断なさるな」と語ったでしょうか。現代なら放送禁止用語となるから「めくら」という表現を変えたのではないかと思ったのです。


 『明鏡国語辞典』には「めくら」という項目を「視力を失っていること、また、目の不自由な人をいう差別的な語。視力障害者」とあります。国語辞典にこういう説明があっても、時代背景を持った映画のなかでも使えないのでしょうか。たまたま昨日買った石川淳『焼跡のイエス|善財』を見ると、「定本にある表現で、今日からみれば不適切と思われる表現がありますが、時代背景と作品価値を考え著者が故人でもあることなどを考慮し、そのままにしました」とあります。よくある注記です。大宰治の「めくら草紙」をいまさら変えるわけにもいかないでしょう。この「めくら」という言葉には文盲という意味もあったのですが、いつからどういう経緯で差別用語として排斥されていったのでしょうか。

『日本国語大辞典』を調べてみました。すると「目暗の意」とまずあり、7つの説明が続き、最後に「補注」としてこう書かれています。「『めくら』という語、および『めくら』に関する語は、眼の不自由な人への蔑視観が強く、現代では障害者差別の語とされている」。落語でも小説でも使われているけれど、いま時代劇を制作するときにも自主規制をしなければならないかどうかは難しい判断でしょう。今日書店で藤沢周平さんの原作を買って読んでみようと思います。テレビ業界では「めくら」という言葉は放送禁止用語です。ときどき激高したときに使用する人がいますが、すぐに「不適切な表現がありました」と「おわび」が行われます。「差別用語」に自主規制があることは明らかですが、一つひとつの言葉が使われなくなるのにはそれなりの事情がありそうです。

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コメント (3)

村八分などの言葉がありますが田舎ではプライバシーを保ちズライものです ネットやtvから情報がはいる現代では2分の付き合いで残りの8分は個人情報保護のエリアで都会並のような

 たしかに、めくらが正しいような気がします。
 この夏、全国的に復帰した吉田拓郎の名曲『ペニーレイン』の中に『観ているものはいつもつんぼ桟敷』とのコトバがあり、この曲の入ったCDは、再販のめどがたっていません。井上陽水の傑作アルバムの『氷の世界』では、『自己嫌悪』という曲の中に『めくらの男は静かに見ている』という歌詞があったため、この曲はアルバムから削除されてCD化されています。70年代のフォークソングの名曲がコトバ狩りで消えていくのは、なんとも異常な世界な気がします。
 さらに狂牛病をBSEと言い直すことで、そこにあるべき危機感を葬ってしまうのにも違和感を覚えます。

「めくら」が差別用語=放送禁止用語だというのは誰が決めたのか。私は日本語らしい美しい言葉だと思いますけどね。実際にその言葉を視覚障害の人が不快に思うのであれば、それは我々にはどうこう言う筋合いのことではないので、禁止するのも仕方がないとは思いますが、それを「目が見えない人」とか「視覚障害者」とか言い換えれば何かの救いになるのかどうか。

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有田芳生(ありた・よしふ)

-----<経歴>-----

1952年京都生まれ。
フリーランスのジャーナリスト。

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「有田芳生の今夜もほろ酔い」



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