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麻原裁判の論理と飛躍

 麻原彰晃(本名、松本智津夫)被告の死刑確定が近づいてきました。東京高裁第10刑事部が控訴棄却したことに麻原弁護団が異議を申し立てていたのですが、5月29日にそれが第11刑事部で棄却されたからです。この決定に対して「当然だ」とのコメントもあれば、「早く殺せというのか」といったいささか感情的なコメントもありました。決定文書はA4版で14ページ。最初に「麻原彰晃こと松本智津夫」の本籍と住居が書かれています。本籍は「静岡県富士宮市」、住居は「不定」とされています。もともと熊本県八代市で生まれた被告は、オウム真理教の富士山総本部があった富士宮市に籍を移したのでした。その本部もすでに取り壊され、いまや存在していません。職業は「無職」。

 

 決定文書は大きく2つの項目から構成されています。ひとつは「控訴趣意書提出問題について」、ふたつめが「被告人の訴訟能力について」です。まず控訴趣意書の問題から見ていきましょう。そもそも控訴審を行うとき、弁護団は控訴趣意書を出さなくてはなりません。その期限は平成17年1月11日でした。ところが弁護団が延期を申し入れたので、裁判所は8月31日まで提出を延ばすことを認めたのでした。この日、弁護団は控訴趣意書を持参したのですが、高裁が被告人に訴訟能力があるかどうかを鑑定するときの条件を述べ、それが受け入れられないならば控訴趣意書を提出しないという態度を取ったのです。

 両者の間にはすでに誤解が生じていました。裁判所は8月19日の打ち合わせで「鑑定意見が出るまでに控訴趣意書が提出されれば期間内に提出されたものとする」と明言したからです。弁護団からすれば「鑑定意見が出ていないから8月31日に提出しなくても棄却はないだろう」と判断したのでしょう。ところが高裁の決定では「その日のうちにこの見解を訂正し」と書かれています。どこかに文書があるのかといえば、そうではなく「電話で告知」とあります。高裁はさらに8月31日にも「ある日限までは控訴棄却決定はしないというような約束はできない」と述べたとしています。

 弁護団はここで読み間違えをしたのでした。ある弁護士は「いきなり控訴棄却しないという裁判所との約束があったのです」とわたしにも語っていました。ところが裁判所はそんな約束などないというのです。3月28日に控訴趣意書を提出することは3月21日に裁判所に伝え、それが新聞でも報道されました。その提出前日の27日に控訴棄却がなされたのですから、弁護団からすれば「不意打ち」にしか思えなかったのです。わたしもそう思いました。しかし、法律的形式は整っているのですから、異論はあっても、これから最高裁に特別抗告したところで問題とはなりえないでしょう。

 それでも問題が残るのが被告人の訴訟能力です。弁護団側は6人の精神科医が、それぞれ30分の面会を麻原彰晃と行いました。その結論はすべて「訴訟能力はない」というものでした。ところが高裁が依頼した精神科医の鑑定結果は「訴訟能力あり」というものです。この医師が町医者でこれまでにも裁判所の意向に沿った鑑定を行うことで有名な人物であることは知られていません。決定文書はこう書いています。「被告人に訴訟能力があるという結論に達したからといって、被告人の精神状態が完全に正常であることを意味するものではない」「治療を施すことによって完全に正常な精神状態に戻した上で裁判を行うという選択肢も考えられなくはない」。そのとおりだとわたしは思います。なぜなら国際的にも注目される裁判は、法律形式にのっとって、内実においても歴史的検証に耐えうるものでなければならないからです。

 しかし、高裁決定は「しかしながら」と書いたうえで、こう続けました。「控訴の決定棄却は免れようがないのであり、そうすると、被告人に治療を施してみたところで、『決定棄却すべきである』という結論に変わりはなく、本件裁判上治療自体さして意味があるとも思われないところである」。控訴棄却は当然の決定だから、それから治療したところで裁判には関係がないよというのです。論理などいくらでも組み立てられるものだなと思いました。さきほども書いたように、弁護団はこれから最高裁に特別抗告するでしょう。しかし、東京高裁の決定が覆ることはないでしょう。こうして高裁での実質審理がまったく行われることなく麻原彰晃の死刑判決が確定するのです。

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コメント (2)

麻原彰晃こと松本智津夫の死刑判決は2年前に出ている。弁護団が控訴趣意書の提出をボイコットしたため、高裁は審議打ち切りを決定、これに弁護団異議、高裁は異議棄却を決定、弁護団このほど最高裁へ特別抗告。最高裁の決断待ちとはいえ、死刑執行へ、事態は一歩近づく。

 ところが高裁の決定には、その評価について、被害者のなかに分かれる意見が。松本オウムの河野義行氏は、ここで裁判を終結させたら、多くの真相が闇に葬られる。一方、地下鉄サリンの被害者の代表、もうこれ以上、時間稼ぎされるのには耐えられない。高裁決定に賛成。

 ともあれ、テレビで垣間見る麻原の映像からは、いくらやっても、そこから真相なるものが絞り出せるとは思えない。なぜあのような人格が生まれ、多くの人々がその教祖の奇怪な行動にころりと「いかれ」、なぜ社会があれほどの被害が出るまでに、驚くべき犯罪群の芽をつみ取れなかったのか。この不思議をこそ解明して、安全な社会づくりをめざすべきではないか。そのためには、麻原の証言なんか要りはしない。

 念のためにいうが、犯罪の相談の場にいたというだけで、引っ捕らえられるような法律改正(「組織的犯罪処罰法」への「共謀罪」導入)を支持しているのではない。乱用の危険を冒して取り締まりだけを強化する、そんな安易な対策でこの社会の闇が晴れるようなものではない。社会的潜在意識にまで立ち入って事件を考え、本当に安全な社会づくりをめざさなければならない。本気の覚悟がいるのだ。

麻原彰晃こと松本智津夫被告の死刑判決に対する異議を東京高裁が棄却。
最高裁に特別抗告するようだが、これでほぼ死刑が確定する。
最後に本心を聞いてみたかったような気もするが、極悪非道間違いなし。
極刑にて罪を償え。
死んでも何も解決はしないが、せめて苦しむ人達の心情に一光を。

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有田芳生(ありた・よしふ)

-----<経歴>-----

1952年京都生まれ。
フリーランスのジャーナリスト。

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