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自然に学ぶ「森里海連環学」のすすめ

山陰中央新報連載 自然に学ぶ"森里海連環学"のすすめNo.31

写真集「高津川」 ―大規模なダムがない?―

島根県の高津川の3度目の「清流日本一」のお祝いに、写真集「高津川」が出版された。

美しい写真は地元のフォトクラブ、落ち着いた文章は地元NPOの方々の執筆で、見て読んで楽しい一刊に仕上がっている。

ただし、2点だけ残念に思うことがある。発刊に努力された方々には、気を悪くされずに読んでほしい。

私は、2003年に「日本の名河川を歩く」(講談社+α新書)という一刊をつくるため高津川を初めて訪れた。

全国の天然アユが溯(さかのぼ)る河川を調べると91カ川しかなく、その中から10本の名川を選ぶため、10項目各5点ずつの採点をした。「ダムがない」「水質がよい」「川魚を食べる文化が残っている」などの10項目で、高津川は43点を取り、日本一になった。

まもなく、国土交通省も高津川を初めて、「水質日本一」としたが、私はこれには不服だった。私の採点では、高津川は、水質では5点満点のうち3点しか取れていない。いつ訪れても川面にはあぶくが浮いているし、夏は少々におうからだ。

しばらくすると、こんなことを聞かされた。「天野さんはダムはないと書いているが、支流の福川川の奥にはダムがある」。「うそだろう」と思った。私にダムがないと教えたのは、川の漁協関係者であり、その福川川がある吉賀町柿木村の行政マンであったからだ。福川川の上流へ行ってみると、47㍍の高さのダムがあった。私は、「日本の名河川を歩く」を廃刊にした。文章を書く者として、他人の言葉をうのみにして「ダムがない」ことに5点を入れ、この川を「日本一」に選んだことを恥じたからだ。

今、「高津川」という写真集には、こうある。「高津川は全国109カ所の1級河川のうち、大規模なダムのない、数少ない川の一つである」。これは違う。「ダムがない」と書きたいならば、「本流にはダムがない」と書けばよい。

しかし。「ダムがない」にこだわらなくても、高津川は名川である。

この流域には、「一つしかダムを造らせなかった人々が暮らしている」ことをこそ、誇るべきなのだ。

もう一つの残念は、近年は、養老孟司さんや私などが通い、「委員会」まで一緒につくっているのに、この誌面に登場させていないこと。

この本は、何のために作られ、どこに置かれるのか?もし、東京の島根県のアンテナショップなどに置かれるのなら「現代にも"参勤交代"を」と唱えて高津川に通ってくださっている養老先生のエッセーなどを載せていれば、「高津川に一度行ってみよう」と考える人が多いのではないか。

「そこに、ヨソ者、バカ者、若者の協力があること」が、近年の地域発展の要素だそうだ。4度目の「水質日本一」を祝う本を作られるときは、ぜひそれを思い出してほしい。

(写真集への問い合わせは益田地区広域市町村圏事務組合、電話0856(31)0226まで)

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科学者が真実を追求するから、科学者が尊敬されるのであり、今回の原発のように、科学者が科学者の良心を捨て、利権に走りごまかそうとするとどこかで破綻が生じておかしくなります。

すべて同じではないでしょうか、男女の仲も真剣に愛を打ち明けるから愛が深まり長続きするのであって、愛の中に打算があれば、どこかでぼろが出て、百年の恋がいっぺんに冷めてしまいます。

政治も同じではないか。国民のために本当に働けば国民の心を打つものがあるが、逆のことをすれば一気に信用を失います。今の民主党がいい例です。選挙時に国民の心を動かすようなマニフェスト選挙をしながら、政権をとったとたんに自民党化してしまう。国民は裏切られた思いが強く働きます。

自然を求める人も同じではないか。ごまかして何の得があると言うのか。どこかで本当のことを知っている人から指摘されるのです。いい加減なことを言って人の歓心を得られる感覚はいい加減に脱皮できないものでしょうか。

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Profile

天野礼子(あまの・れいこ)

-----<経歴>-----

アウトドアライター。
1953年、京都市生れ。
中、高、大学を同志社で過ごす。
19才より釣りを始め、文化人類学者の今西錦司博士の主宰された「ノータリンクラブ」に属して、国内外の川、湖、海辺を釣り歩く。
26才より小説家、開高健に師事。
1988年には師と共に長良川河口の堰建設反対に立ち上がり、「ダムは不用」の国民世論に育て上げる。
近年は「川を再生するには森を生きかえらせることが必要」と“森仕事”へ視野を広げて、日本の森から材が出る社会システムを作り直すことを各地で提案している。
京都大学が2003年に構築した「森里海連環学」の普及もお手伝いするため、高知新聞社と山陰中央新報社でカルチャー教室「自然に学ぶ“森里海連環学”」を続けている。
2001年より、高知県・仁淀川の源流にも家を借り、有機農業普及のための「高知439国道有機協議会」を07年に立ち上げて、事務局長を務めている。08年7月に養老孟司氏らと「日本に健全な森をつくり直す委員会」を設立した。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
http://www.uranus.dti.ne
.jp/~amago/


長良川河口堰建設をやめさせる市民会議
http://nagara.ktroad.ne.jp/

公共事業チェックを求めるNGOの会
http://kjc.ktroad.ne.jp/

日米ダム撤去委員会
http://damremoval.com/

市民版憲法調査会
http://www.kenpou.com/

-----<著書>-----


『“林業再生”最後の挑戦』
2006年11月、農山漁村文化協会


『だめダムが水害をつくる!?』
2005年10月、講談社+α新書


『「緑の時代」をつくる』
2005年5月、旬報社


『ダム撤去への道』
2004年5月、東京書籍


『日本の名河川を歩く』
2003年7月、講談社+α新書


『市民事業』
2003年4月、中公新書ラクレ


『ダムと日本』
2001年2月、岩波新書


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