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自然に学ぶ「森里海連環学」のすすめ

山陰中央新報連載 自然に学ぶ"森里海連環学"のすすめNo.29

耐震改修大勉強会 ―高知は山に家をつくる―

国土交通省住宅局の中に、「"木の家づくり"から林業再生を考える委員会」をつくっている。2009年12月に「森林・林業再生プラン」ができ、「10年後に木材自給率を今の倍以上の50%にする」ことが目標にされたが、林野庁の委員会では、その材の出口が考えられていなかったからだ。

この委員会は、養老孟司先生を委員長とし、私が委員長代理を務め、「耐震改修を進めること」、「二地域居住を進めること」をテーマにした。

そして、その活動の中から、今度は「"木の家"耐震改修推進会議」をつくっていった。今年1月17日に神戸では、阪神大震災から16年目のメモリアルとして、「耐震改修大勉強会in神戸」を開催して、1千人の大工・工務店・設計士・建築家の皆さんを集めた。

この10月9日には、その二回目として、南海地震が予想されている高知で、「耐震改修大勉強会in高知」を行い、「推進会議」の議長である養老先生や、日本一の地震学者で京都大学の前・総長であられる尾池和夫先生においでいただいて、600人を集めた。

この大会は、高知新聞社が主催し、高知県と高知市が共催。尾崎正直知事、岡崎誠也市長も、私が司会するパネルディスカッション「"二地域居住"(参勤交代)が高知を変える」に、「超かんたん無農薬有機農業」の著者である山下一穂さんと、木の家づくりの得意な建築家・渡辺興則さんとともに参加された。

養老先生の講演タイトルは、「現代にも"参勤交代"を!土佐人は、2つめの"木の家"を山につくるべし!」だった。

高知では、南海地震時に、南海と東海のプレートなどが連動すると、3㍍級の津波が来る予想がされている。「3・11東日本大震災」時のような大津波で人命が奪われないように、海辺や平野部の人々は、普段から「二地域居住」を実行して、山にも木の家をつくっておこうという提案だ。

東日本大震災でも分かったことの一つが、災害が起きると"流通"が止まり、食料も、そして水すらも、手に入れるのが難しくなること。山にも小さな"木の家"をつくり、その側に有機や無農薬農法の小さな菜園をつくり、そしてそこへ通ってゆくと、まず身体を動かすので健康になり、口に入るものも安心なものがつくれる。「すると、精神も健康になるよ」と、お医者様でもある養老先生はおっしゃるのだ。

これからの時代、「二地域居住」が日本中で、はやる気がする。しかし島根県吉賀町の中谷勝町長は、「その先に、"定住"がないといかん」とおっしゃる。もっともだ。では、そのようにみんなで動いてみよう。


(「耐震改修大勉強会in高知」資料集より)

養老先生はなぜ、現代に"参勤交代"を唱えるのか?

天野礼子("木の家"耐震改修推進会議 議長代理、作家)


「森林・林業再生プラン」の誕生。
 「日本に健全な森をつくり直す委員会」を、養老孟司先生を議長に、C・Wニコルさんを副議長に、京都大学の総長であられた尾池和夫先生にも御参画いただいて結成したのが、2008年7月でした。
 09年9月、新政権に私たちの提言書「石油に頼らず、森林(もり)に生かされる日本になるために」を提出すると、林野庁が3ヵ月後に「森林・林業再生プラン」をつくられました。10年後に、日本の山から今の2倍の量の材を出せる体制をつくるというもの。そして、5つの委員会が林野庁の中につくられ、私も委員となりましたが、林業における"川下"、すなわち、山から出てきた材をどう使っていくかを考えることはテーマになっていませんでした。
 そこで、国土交通省住宅局の中に、「"木の家づくり"から林業再生を考える委員会」をつくっていただき、養老先生に委員長を務めていただくことにしました。
 養老先生はかねてより、何冊もの著作の中で「現代にも"参勤交代"を」と説かれており、都市住民が田舎に「もうひとつの"木の家"」をつくっておくことを奨励されていたからです。

「"木の家"耐震改修推進会議」。
 国土交通省住宅局の委員会を進めていくうちに、「"耐震改修"をしっかりやることを国民運動にするべき」ということが議論されました。
 そこで私たち委員は、昨年9月1日の「関東大震災の日」に、前原誠司国土交通大臣(当時)と、皆川芳嗣林野庁長官のご同席を得て、今度は「"木の家"耐震改修推進会議」をつくったのです。
 今年の1月17日の「阪神大震災から16年目の日」には神戸で、「耐震改修大勉強会」を行いました。全国から大工さんや工務店、設計士さんが、1、000人も集まってくださいました。
 今回の大会は、その"高知版"なのです。「3・11震災」のあと、高知新聞社社長と高知県知事、高知市長が、「神戸のような大会を早く高知でも」と相談され、実現しました。
 南海大地震が予測されています。南海トラフに、東南海、東海が連動すると、大きな津波がやってくることが予想され、東日本大震災を見たあとでは、ともすれば人の心まで「縮こまって」しまいがちです。
 「しかし、土佐人は明るく"備えたい"ね」と、高知のお役人たちはおっしゃいました。それが、この大会のキーワードが「南海地震を"正しくこわがる"」とされた理由(わけ)でした。

現代にも"参勤交代"を。
 今大会では、『超かんたん無農薬有機農業』の著者、山下一穂さんを、知事、市長とのパネルディスカッションのお相手に選びました。「小さな木の家」づくりが得意の建築家、渡辺興則さんもご一緒していただきます。
 「クラインガルテン」という言葉をご存じですか?ドイツでは、産業革命が進むにつれ、大気が汚染され子どもたちの健康が心配されました。当時、ひとりのお医者さんが、「クラインガルテン(小さな庭)」活動を提唱され、「都市に住むドイツ国民なら誰でも、小さな庭を持ち、自分で耕し、そこに花か野菜か果樹を植え、庭の片隅に"小さな小屋"を建てる」というもので、200年以上続いている"緑"の政策です。
 ロシアでは「ダーチャ」。イギリスでは「アロットメントガーデン」。そんな"市民農園"を山間地につくり、そこへ海辺の人たちが週末に向かう。そうすることによって、次のような効果が期待できます。
 ①来るべき大震災に備えて、災害時の避難地をつくっておける。
 ②山間地に、その地域の材で「木の家」をつくることで、地域材の出口がつくれ、"木質バイオマスエネルギー社会"づくりに貢献できる。
 ③「身体」を動かすことによって、「精神の健康」を取り戻すことができ、現代人に多い鬱(うつ)も解消する。
 私自身も、養老先生の「参勤交代論」を実践し、仁淀川の源流部に"木の家"を持って、大阪からアメゴやアユ釣りに通っています。海辺の高知の人も、「もうひとつの小さな"木の家"」を、山につくっておいてはいかがでしょうか。週末はそこに出かけて、有機農法で野菜作りをしておけば、災害時に「流通」が止まっても、自分の食べ物を自分で融通することができます。
 家が海辺にある人は、山にも木の小屋を持っておく。お役人言葉では「二地域居住」と舌をかみそうですが、海と山が近い高知なら、万一の場合の「安心・安全」を考えて、広めるべき政策だと思っています。

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Profile

天野礼子(あまの・れいこ)

-----<経歴>-----

アウトドアライター。
1953年、京都市生れ。
中、高、大学を同志社で過ごす。
19才より釣りを始め、文化人類学者の今西錦司博士の主宰された「ノータリンクラブ」に属して、国内外の川、湖、海辺を釣り歩く。
26才より小説家、開高健に師事。
1988年には師と共に長良川河口の堰建設反対に立ち上がり、「ダムは不用」の国民世論に育て上げる。
近年は「川を再生するには森を生きかえらせることが必要」と“森仕事”へ視野を広げて、日本の森から材が出る社会システムを作り直すことを各地で提案している。
京都大学が2003年に構築した「森里海連環学」の普及もお手伝いするため、高知新聞社と山陰中央新報社でカルチャー教室「自然に学ぶ“森里海連環学”」を続けている。
2001年より、高知県・仁淀川の源流にも家を借り、有機農業普及のための「高知439国道有機協議会」を07年に立ち上げて、事務局長を務めている。08年7月に養老孟司氏らと「日本に健全な森をつくり直す委員会」を設立した。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
http://www.uranus.dti.ne
.jp/~amago/


長良川河口堰建設をやめさせる市民会議
http://nagara.ktroad.ne.jp/

公共事業チェックを求めるNGOの会
http://kjc.ktroad.ne.jp/

日米ダム撤去委員会
http://damremoval.com/

市民版憲法調査会
http://www.kenpou.com/

-----<著書>-----


『“林業再生”最後の挑戦』
2006年11月、農山漁村文化協会


『だめダムが水害をつくる!?』
2005年10月、講談社+α新書


『「緑の時代」をつくる』
2005年5月、旬報社


『ダム撤去への道』
2004年5月、東京書籍


『日本の名河川を歩く』
2003年7月、講談社+α新書


『市民事業』
2003年4月、中公新書ラクレ


『ダムと日本』
2001年2月、岩波新書


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