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2010年7月17日

自然に学ぶ"森里海連環学"のすすめ

山陰中央新報連載 自然に学ぶ"森里海連環学"のすすめ No.13

近自然工法を使おう―川を愛するならば

高津川の大支流、吉賀町柿木村から流入する福川川にある坂本頭水工のほとりに立つこのお二人は、東海大学の先輩と後輩。右の人物は、高津川漁協のアユセンター長の田中誠二さん、左は高知市からおいでいただいた「西日本科学技術研究所」の福留脩文所長。二人は、この頭首工の魚道を改修する相談をしている。

福留さんのことを、私やC.W.ニコルは「川のお医者様」と呼んでいる。「近自然工法」という手法で、コンクリート化してしまった自然を元にもどす仕事をされているからだ。

「近自然工法」はスイスに生まれ、それを福留さんが日本に持ち帰り、1991年からは建設省(現・国土交通省)河川局が、「多自然型川づくり」として採用してきた。

高津川は、二度も国土交通省の「水質日本一」を取ったのだが、私から見ると水質がイマイチ。本流にダムを造らせなかった代わりに、各所で電力や農業用水のために水が取られ過ぎているからだ。

また、この坂本頭首工や電力のための堰堤に造られてきたほとんどの魚道が、魚が溯(のぼ)れる機能を有していない。造った当時の技術者たちに自然への知識がなかったからだろう。

東海大学海洋学部に学んだ田中さんは、「アユがどこまでも溯ってくれると、水質は良くなります」とおっしゃる。そうなのだ。アユは石についたコケを食べて生きる。だから夏になると川はピカピカになる。古いコケもアユが食べてくれるからだ。

田中さんら漁協が福留先生に魚道を直してもらうには、地域に住む人達が「川を直したい」という総意を強く示す必要がある。

2003年に成立している「自然再生推進法」は、国、県、地元の負担が等分にあることが求められているからだ。ふるさとの川を再生するために、自分が払った税金を使う。こんな当り前のことのために、首長や行政が動くように働きかけることが、川やアユへの自分の愛情表現だと、真剣に考えてみませんか。

川には、住む人の心が映るといいます。高津川が大好きになって通い始めた私の目には、流域の男たちが少し"引っ込み思案"に見えます。愛するモノを本当に守ろうとする時には、普段は取らなかった行動もとる必要があるのでは。

あなたは、アユを愛していますか?川は?
皆さんの少しずつの行動が、川をよみがえらせますよ。

2010年7月13日

有機な人びと

『有機な人びと おいしく安全な食を求めて』(天野礼子 著、朝日新聞出版)
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朝日新聞社より、「有機な人びと」という単行本を出しました。
「"複合汚染"を、再び読む」。こんなタイトルを本当はつけたかったと、あとがきに書きました。

「レイチェル・カーソンの"沈黙の春"、有吉佐和子の"複合汚染"。一度は読んでいたそれらの本を再び読んで、勉強をしながら他人に伝えるという、いつもの自分の"走りながら書く"というスタイルを、有機農業でも始めることにしたのだ」と、帯の裏には書いています。

旧・新の有機農業に取り組む人々。巻頭では、養老先生と対談し、「玄米せんせいの弁当箱」をビッグコミックオリジナルに連載するマンガ家魚戸おさむさんにもインタビューしています。

「このような視点の一冊が、私の住む日本にあっても良いのでは、と考えたのです」とも書きました。

手にとっていただけると幸いです。

なお、森についてのご意見をお寄せいただいた方々。多くの人が、日本の森を心配していることがわかります。
百人いれば百論あり。それぞれの人が、愛する森を「もっと美しくあれ」と行動することが、今、この国には必要なのでしょう。

私は私のやり方で、あなたはあなたの・・・。

2010年7月 4日

作業道

6月28日から30日の間、京都府日吉町森林組合で、合宿研修をしています。
研修を受けているのは、「大橋会」の面々。私や京都大学竹内典之名誉教授がお供でついてきています。

「大橋会」とは、林業作業道をつけて60年近くになる大橋慶三郎さんの教える、法(のり)高1.5m、幅2.5mの作業道をつけて林業経営をしてこられた全国の個人林業家の面々のこと。
この方々が、林野庁が選んだ「オペレーター」(作業道などをつける高性能機械を使える人)指導者48名のうちの8名に選ばれ、これからは、急傾斜地、多雨地域、多破砕帯地といった難度の高いところにつくる作業道の指導を引き受けたのです。

しかしこれらの8名は、これまでは自分の山に「壊れない道づくり」をしてきた方ではありますが、森林組合などの経営は体験されたことはありません。そのため、日吉町森林組合の参事であり、近年は全国の森林組合や(山の)素材生産業者のために、「森林所有者とりまとめ」や「作業の近代化」「組合の改革」などを指導してこられてきた湯浅勲さんから、様々なレクチュアを受けようというのです。

日本は工業技術などの「技術」は世界に誇れる高度なものを持っていますが、「林業は、ヨーロッパなどの林業先進国に比べて50年遅れている」と言われています。
戦後の復興時に使える木を伐ってしまい、その後は「保育の時代」であったということもあります。
近年はようやく、「すべてが外材のせい」といっていた状況から脱皮し、「保育の時代は終わった。いそぎ"近代林業"を確立しよう」といわれるようになってきました。

その時に重要なことが、「森林所有者」をとりまとめることによって、作業ができる「道」をつけ、小型の高性能な機械で効率の高い山仕事ができるようにすることです。

「大橋会」の人々はおよそ30年間、大橋慶三郎師からそんな技術を個人的に習ってきていた数少ない人々でしたが、昨年12月30日に『森林・林業再生プラン』ができたことがきっかけになって、自分たちの山のため以外にも、日本林業のために働こうと動き出したのです。

私自身は、今、林業改革の中心におられる内閣審議官の梶山恵司氏や、日吉町森林組合の湯浅参事、「大橋会」の岡橋清元氏(奈良県清光林業第17代当主)とは、2005年くらいから友人となり、全国の森林組合も取材して歩いてきています。全国森林組合連合会が発行する月刊誌「森林組合」には、それを2年以上も連載していました。

そんな中で知り合った「大橋会」の方々とこのような合宿を今回計画したのは、ようやく「林業再生」に本腰を入れることになったわが国ですが、私の耳にこのブログなども通して聞こえてくる小規模森林所有者の皆さんの声は、どれも悲鳴ばかりだからでした。

「何故、私がおこられなければならないのだろう」と思いながら、このブログに寄せられる皆さんの声を聞いています。
「お前は、森を持っていないから、そんなことがのんきに書けるのだろう」、そんなことを言われて、気持ちのよい人がいると思いますか。

問題は、「わが国の森には時間がない」ことです。一刻も早く、間伐の遅れた森に手を入れ、ここ数十年は収益の上がっていない森から利益を得るにはどうすればよいのかという情報を、全国民に知らせる必要があります。
「全国に700ある森林組合がまともに仕事をしていれば、今の現状はなかったのだ」と、怒ったり分析していても何も変わりません。
自分のまわりの森林組合が仕事をしてくれないなら、「仕事をしろ」「国の方針は新政権になって変わり、森林組合は"治山事業"と称する砂防ダムづくりなどの"公共事業"にうつつを抜かしていては生きていられない時代になったのだ」「俺の森の間伐をして、利益を上げろ」と、口々に皆さん自身が組合に言ってゆくべきなのです。

「大橋会」の8人は、動き出してくれました。60代に突入した方々が、これからは全国に、作業道づくりの指導者を育てに入られます。

「"山"は、ようやく動き出した」のです。
文句を言う相手は、私ではなく、あなたの地元の森林組合ですよ。

ドイツは、産業革命時にすべての森を伐り倒してエネルギーとして使い、森を失いました。今ある1千万ヘクタールの森は、その反省の下に百年という時間をかけて再生した人工林です。
百年かけて、「森を愛する国民」をつくり、1970年代に集中的に税金を投入して、作業道網群をつくり上げました。ベンツなどの自動車産業よりも、林業就業者は多く、林業は黒字産業です。

ドイツだけでなく、ヨーロッパの林業国はいずこも、林業が黒字なのです。

誰かがこんな情報を日本中に伝えなければならないとしたら、森を持っていない貧乏な私は、そんな"森仕事"を自分の仕事としようと決意したのです。私は、森のために自分が働くことを"森仕事"と称しています。あなたの"森仕事"は?

Profile

天野礼子(あまの・れいこ)

-----<経歴>-----

アウトドアライター。
1953年、京都市生れ。
中、高、大学を同志社で過ごす。
19才より釣りを始め、文化人類学者の今西錦司博士の主宰された「ノータリンクラブ」に属して、国内外の川、湖、海辺を釣り歩く。
26才より小説家、開高健に師事。
1988年には師と共に長良川河口の堰建設反対に立ち上がり、「ダムは不用」の国民世論に育て上げる。
近年は「川を再生するには森を生きかえらせることが必要」と“森仕事”へ視野を広げて、日本の森から材が出る社会システムを作り直すことを各地で提案している。
京都大学が2003年に構築した「森里海連環学」の普及もお手伝いするため、高知新聞社と山陰中央新報社でカルチャー教室「自然に学ぶ“森里海連環学”」を続けている。
2001年より、高知県・仁淀川の源流にも家を借り、有機農業普及のための「高知439国道有機協議会」を07年に立ち上げて、事務局長を務めている。08年7月に養老孟司氏らと「日本に健全な森をつくり直す委員会」を設立した。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
http://www.uranus.dti.ne
.jp/~amago/


長良川河口堰建設をやめさせる市民会議
http://nagara.ktroad.ne.jp/

公共事業チェックを求めるNGOの会
http://kjc.ktroad.ne.jp/

日米ダム撤去委員会
http://damremoval.com/

市民版憲法調査会
http://www.kenpou.com/

-----<著書>-----


『“林業再生”最後の挑戦』
2006年11月、農山漁村文化協会


『だめダムが水害をつくる!?』
2005年10月、講談社+α新書


『「緑の時代」をつくる』
2005年5月、旬報社


『ダム撤去への道』
2004年5月、東京書籍


『日本の名河川を歩く』
2003年7月、講談社+α新書


『市民事業』
2003年4月、中公新書ラクレ


『ダムと日本』
2001年2月、岩波新書


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