mont-bell広報誌「OUTWARD」連載 47号
森里海連環学のススメ Vol.3
「そして、大地も」
"森仕事"の次に私が取り組んだのは、"畑仕事"でした。
釣りや執筆のための家を高知県仁淀川の源流・池川町(今は合併して仁淀川町になっている)に2002年から借りた私は、その町から車で東へ1時間の本山町に住む、就農8年目の山下一穂さんと親しくなりました。
山下さんは「超かんたん・無農薬有機農法」という本を書いている有機農業者。二人の共通の趣味のアマゴ釣りが、結んでくれました。山下さんはフライマン。私は季節によって、エサ釣りやテンカラ釣りやフライフィッシングを使いわけます。私の方は、アマゴがその時期にいる水の層にふさわしい釣り方で狙うというわけです。
山下さんと釣りに行き、野菜をいただいているうちに、山下さん以外の有機農業者がつくる無農薬野菜でそれまで抱いていた私のイメージは変わりました。「安全かも知れないけど、おいしくない」と思っていた無農薬有機野菜が、「おいしい」とわかったのです。
これで私の「森・里・海」が、ほぼ完成することになってゆきます。私は山下さんと「高知439国道有機協議会」をつくり、自分がその事務局長をひきうけて、農林水産省の「有機農業モデルタウン」全国45地区の一つとしての活動を始めるに至るのです。
山下さんの無農薬有機野菜は、ほとんど虫喰いがなく、甘くておいしい。虫喰いがない秘密は、雑草を全部取ってしまわずに適度に残し、そこに害虫を食べてくれる"天敵"を呼びこむこと。春に、たわわに実った山下さんのキャベツ畑で私は、モンシロチョウの乱舞を毎年見ています。キャベツの虫喰いをつくるのは、モンシロチョウの子どもの青虫。その青虫がキャベツの葉っぱに噛み跡を残せていないのは、青虫が大量に生まれるキャベツの成長期にはアオガエルが畑の雑草の中にいて青虫を食べるからというのが、私がこの数年山下さんの畑を観察して得た推論です。
キャベツが成長してしまってから生まれる青虫は、固くなってしまったキャベツを食べることができず、何かちがうエサ(たとえば、畑に残っている雑草?)を食べて成長し、モンシロチョウになって、自分が生まれたキャベツ畑を乱舞して、次代の子どもを残してゆくのではないでしょうか。
甘さの秘密の方はどうやら、「超かんたん」と山下さんが称している、山下さん工夫の農法にあるのかもしれません。
無農薬有機農法の農業者の多くは、落葉樹の葉やさまざまな有機物で堆肥をつくります。それには少なくとも一年くらいはかかるのが普通。また中には堆肥も全くなしの"自然農"と称する放ったらかしにちかい人もいます。
山下さんの「超かんたん」とは、時間をかけて堆肥をつくらず、ソルゴーと呼ばれる緑肥を植え、それが背丈ほどにのびたらきざみ、畑にすきこんで、3ヶ月以上熟成させるというもの。しかし「超かんたん」と著書には口笛をふいている山下さんのマンガがありますが、これはウソ。
山下一穂は、高知の"いごっそう"中のいごっそう。負けず嫌いで、人に見えないところで様々な努力や工夫をしていることを口に出さないだけなのです。(注 山下さんのホラを真に受けて「超かんたん」だと思ってまねしても、おいしくはできないかもしれないですよ。日々の努力を"楽しんでやる"人においしい野菜はできるのです)
農林水産省は平成19年に、「生物多様性戦略」をHPに発表しました。
そこには、これまで使われてきた農薬が、生物の多様性には"負の遺産"となっていることや、水路のコンクリート化、干潟の埋め立てなどの公共事業も同様に"負の遺産"をつくってきていたと書かれていました。私はこれを見て、腰を抜かすほど驚きました。なんとそこには、あの"ギロチン"と亡き筑紫哲也氏が呼んだ諫早水門が閉じられている写真が載せられていたからです。
この翌年に農水省は初めて、有機農業に国家の予算を4億6千万円つけました。「有機農業」という言葉が使われ始めて、35年目の快挙でした。
私と山下さんの「高知439国道有機協議会」は、この予算をゲットした45グループの1つなのです。







コメント (1)
■コメント投稿について編集部からのお願い
《THE JOURNAL》では、今後もこのコミュニティーを維持・発展させていくため、コメント投稿にルールを設けています。はじめて投稿される方は、投稿の前に下記のリンクの内容を必ずご確認ください。
http://www.the-journal.jp/contents/info/2009/07/post_31.html
ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。
投稿者: 《THE JOURNAL》編集部 | 2010年3月18日 09:56