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2008年10月29日

週刊現代に“今こそ見つめ直す「日本人の食」”のシリーズを始めました

東京では10月27日(月)に、その他の地区では10月28日(火)に発表されている週刊現代の巻頭カラーグラビアで、有機農作物を給食に使い、子どもたちが味噌や漬け物を自作している福岡市の保育園をルポしました。
「食は命なり  ある保育園の挑戦」。

御笑覧いただけると幸いです。

これは、今年1月12号の9ページを使った「有機農業」特集のカラーグラビアに続く、私の仕事で、今回から特集タイトル「今こそ見つめ直す“日本人の食”」をつけてもらえました。

このシリーズをしばらく週刊現代に続けます。次には、「無農薬りんごの木村秋助さん」、「有機・市民農園」の企画を進めており、来年はイギリスとドイツも取材する予定です。

皆さまからの情報やアイデアをお寄せいただければ形にしてゆけます。
どうかご助言をお願い致します。

2008年10月26日

高知新聞連載 【12】高畠に生きる(上) 農民詩人として

 山形県東置賜(おきたま)郡高畠町は、大正・昭和期の歌人、結城哀草果(あいそうか)が「大和は国のまほろば」になぞらえて「置賜は国のまほろば 菜種咲き若葉しげりて雪山も見ゆ」と詠んだことにちなみ、“まほろばの里”と称され、有機農業が盛んなことで知られている。「真秀(まほ)ろば」の「ほ」は稲の穂などを意味するように、最上川の支流が二本も置賜盆地を貫流する“米どころ”である。

 星寛治(かんじ)さんは、ここで生まれ、農家の長男として育ち、三十五歳にして有機農業に転身し、以来三十七年間、有機農業一筋。自身も耕作を続け、全国のそして海外からも、様々(さまざま)なジャンルの人々をこの高畠に惹(ひ)きつけて育ててきたことで知られている。

 一九七四(昭和四十九)年十月十四日に、朝日新聞に有吉佐和子さんの「複合汚染」の連載が始まり、八カ月半にわたって続き、日本人を“農薬の害”に目醒(ざ)めさせた。レイチェル・カーソン女史がアメリカで「沈黙の春」を出版した一九六二(昭和三十七)年の十二年後のことであった。

 有吉さんは、連載が開始される直前に、テレビ局のクルーを伴って、星さんのリンゴ畑や刈り入れの終わった田んぼを取材しにこられた。星さんら高畠の農家の後継者三十八人が一年前に立ち上げたばかりの「高畠町有機農業研究会」のために、自分が十年以上も取材してきた農薬汚染やそれによる農民などの健康被害に関する膨大なデータを示しての講演もしてくれた。

 今も星さんのリンゴ畑には、真っ赤なブラウスを着た有吉さんがもぎった、真っ赤な“紅玉”の樹が残されている。有吉さんは紅玉が大好きで、その後も星さんのこのリンゴを毎年所望されたそうだ。「詩を書く農民」であった星さんを深く信頼し、作柄を気にしては電話をしてこられ、励ましてくれた「木戸御免の仲」であったという。

 有機栽培に切り替えて一年目、二年目の田は、四割減収だった。化学肥料、農薬、除草剤を使わず、堆肥(たいひ)など有機肥料だけを施して、土づくりで勝負する、“近代化”を超える「もうひとつの農法」を目指す取り組みは、“嫁殺し農業”と呼ばれた。連日、四つん這(ば)いになって草を手取る苦労からだ。

 三年目、空前の冷夏が東北各地を襲った。山形県内でも収穫皆無の地域もあった。そんな中で高畠では、有機農業に取り組んだ「高畠町有機農業研究会」会員の田んぼだけがポツン、ポツンと黄金色の実りを見せていた。周りの慣行農家は、その田んぼをまるで奇跡を見るような目で見ていった。

 「まさに、手作り農業の凱(がい)歌ですね」。有吉さんが、わがことのように喜んでくれた。田んぼの温度が隣りの慣行栽培田よりも三度高かった。これが勝利の原因だった。これは有吉さんの「複合汚染その後」に書かれた。

amanokouchi12.jpg

 【写真】先に杭(くい)掛けを終えたササロマンを手にした星寛治さんと妻・キヨさん。奥の田でまだ穂を垂れているのはコシヒカリ。有機農法に切り替えて30年の田んぼだ

 京都大学の土壌微生物学者である小林達治教授が解説してくれた。「星さん、当たり前ですよ。よく肥えた土の一握りには、ミミズとか目に見える小さな生き物たちだけでなしに、酵素とか土壌菌など、顕微鏡の世界の微生物が、数億から数十億の単位で生息し、土中の小宇宙をつくり出しているんです。その生命活動のエネルギーが、温かい土の体温を生成するパワーなんですよ」と。

 鳥が舞い
 虫うたい
 子らの歓声がみなぎる
 この列島の風景を
 失うまいとひつしに思う
   (「みのる時」星寛治)
 星さんは野良仕事の中でこんな詩をつくって、有機農業と共に、高畠で生きてきた人である。

(2008年10月13日付・朝刊)

2008年10月24日

日経新聞いわく。二つの“川についてのシンポ”案内も併せて。

「日経新聞いわく。」

9月12日の日経新聞の社説は、「川辺川ダムは中止すべき」だとして、前日の熊本県蒲島郁夫知事の国土交通省に対する「川辺川ダム計画の白紙撤回を求める」行動に賛同の意を表しています。

ダム事業などの推進に対して、中央官庁は地元知事の意見を尊重しなければならず、国道交通省の「川辺川ダム計画」は、同事業利水計画に対する住民訴訟に農水省が敗訴して“利水”目的から撤退したことに続いて、建設不可能の状況へ追い込まれたと言えます。

日経新聞の社説は「一度計画されると止まらない大型公共事業の象徴として注目を集めている熊本県の川辺川ダム建設事業が新たな局面を迎えた」に始まり、「いっそのこと、時間が経過した公共事業は一度白紙に戻すことを政府は法制化したらどうか」と終わっています。

蒲島知事の記者会見の9月11日は、私の55歳の誕生日でした。1988年6月に「長良川河口堰建設に反対する会」をつくり、開高健を会長にして“川の国ニッポンのダム”を象徴として問うてきた大型公共事業について、初めて知事が公式に「NO」といった、これが20年間活動を続けた私が“勝手にもらった誕生日プレゼント”でしたが、日経新聞の社説も、私には格別嬉しい贈り物でした。

私と法政大学の五十嵐敬喜教授は、1996年から民主党に、「公共事業コントロール法(案)」というのを国会へ出し続けてもらっています。

今の、国の公共事業は、私たち国民の手の届かない「閣議」(総理と大臣たちの会議)で決定され進められているのですが、これを「国会へ諮るべし」というのが、私たちのつくった法(案)です。

日経新聞の社説の最後に書かれた「時間が経過した公共事業は一度白紙に戻す」ことも、この法案には含まれています。

民主党は、このような法(案)を持って出し続けてきたことをこそ、公共事業のマニフェストに書き込むべきだと思っています。

「川についての二つのシンポあり」

関西では、「淀川流域委員会」と淀川流域のダムについて、滋賀・京都・大阪の三知事を巻き込んでの議論と報道が活発にあることをお伝えしてきましたが、11月に続けて二種のシンポジウムが行われることになったので、お知らせいたします。

川の全国シンポジウム-淀川からの発信-

日時 2008年11月2日(日)および3日(月・祝)
場所 京都大学 百周年時計台記念館 百周年記念ホール
主催 川の全国シンポジウム実行委員会

川が泣いています
わたしたちのせいです
河川の環境を保全し、地域の意見を反映することを
河川法はめざしています
みんなの川を
つぎの世代に 誇りをもって 引きつぐために
11月2日(日)と3日(祝)
京都大学時計台百周年記念ホールで
話し合いましょう

プログラム

11月2日(日)

1000-1010 オープニング・セッション
開会挨拶   実行委員会委員長 川那部浩哉

1010-1140 基調講演
 河川法改正の意義    弁護士・龍谷大学法科大学院教授 寺田武彦
 地方分権における問題点  PHP総合研究所代表取締役社長 江口克彦

1140-1300 昼食休憩(会議室Ⅳでのポスター展示をお楽しみください)

1300-1500 淀川水系流域委員会からの発信
 報告 淀川水系流域委員会が目指す新たな川づくり
環境(中村正久) 治水(今本博健) 利水(荻野芳彦) 利用(川上聰) 
住民参加(三田村緒佐武)
 パネルディスカッション:淀川水系流域委員会の実態
    三田村猪佐武(進行)+竹門康弘+細川ゆう子+山下淳+村上悟

1500-1550 出席者からの発信①
 大熊孝+姫野雅義+渡辺洋子+つる詳子+北山早苗

1600-1700 河川管理における地方分権
 琵琶湖・淀川の価値   滋賀県知事 嘉田由紀子

1700-1800 特別講演
 川への想いを語る    UNEP親善大使 加藤登紀子

1830-2000 懇親会(京大吉田生協・参加費3000円)


11月3日(祝)

1000-1200 河川法改正の趣旨は活かされているか(司会進行:川村龍一)
  講演&インタビュー:
    前原誠司(民)+穀田恵二(共)+各政党代表者(依頼中)
    京都弁護士会会長 石川良一
    元国土交通省河川局専門官・前淀川水系流域委員会委員長 宮本博司
    フリージャーナリスト まさのあつこ

1200-1300 昼食休憩
(時計台ホールで「みずになったふるさと」を上映します 弁当持込不可)

1300-1400 特別報告
全国における流域委員会の実態  東京大学 愛知演習林 講師 蔵治光一郎
 水制度改革国民会議について   水制度改革国民会議理事長 松井三郎

1410-1500 出席者からの発信② 出席者(依頼中)

1500-1520 クロージングセッション
 総括報告    実行委員会委員長 川那部浩哉
 京都宣言

プレ・イベント(11月1日・土)
秋の桂川サイクリング カヌーで淀川を楽しむ 若人の祭典(吉田食堂)ほか
*プログラムは都合により変更する場合がございます。あらかじめご了承ください。

賛同人にご参加ください
本シンポジウムを運営するため賛同人を募集します。本シンポジウムの趣旨に賛同される個人および団体の方は賛同人として登録と募金をしてください。賛同人1000人が目標です。

申込方法:川の全国シンポジウム実行委員会へ E-mail または FAX でお申込みください。
事務局からの連絡は原則としてE-mailで行いますので、できれば E-mail でお申込みください。
 E-mailの場合:ready2-river-subscribe@yahoogroups.jp
 FAXの場合  :06-6372-8062
記載事項:①氏名、②所属、③連絡先住所、④電話、⑤FAX番号、⑥E-mailアドレス
賛同費:1口3000円です。個人は1口、団体は1口以上お願いします。
振込方法:郵便振替にてお願いします。
名義人:川の全国シンポジウム実行委員会 口座番号:01690-6-93555
賛同者は:
①実行委員会に実行委員として参加できます。
②E-mailで申し込まれた方は実行委員会MLを通じて意見を発信できます。
③シンポジウムに無料招待されます。
④シンポジウム報告書の賛同人名簿に記載され、報告書が配布されます。

問合せ先:river-sympo-08@chorus.ocn.ne.jp
またはTEL 06-6372-8061、FAX 06-6372-8062
事務局員が不在の場合もありますので,できるだけE-mailまたはFaxでお願いします。

実行委員会委員長 川那部浩哉(琵琶湖博物館館長)

******************

シンポジウム「琵琶湖・淀川の流域自治を考える」

国の河川政策に住民参加の視点を取り入れた河川法改正から11年。現場では、どのように住民意見が政策に反映されるのか。
ダムの建設問題をきっかけに、国と地方の関係の見直しを唱える3人の知事を迎え、シンポジウム「琵琶湖・淀川の流域自治を考える」を開きます。法律や河川の専門家にも課題を探っていただきます。

 ◇11月23日(日)午後1時30分~5時、大阪商工会議所国際会議ホール(大阪市中央区本町橋2の8)

◇講演 尾田栄章さん(元建設省河川局長)「住民参加と環境保全、河川法に込めた意味」

◇パネル討論 
橋下徹・大阪府知事
山田啓二・京都府知事
嘉田由紀子・滋賀県知事
五十嵐敬喜・法政大教授
竹村公太郎・リバーフロント整備センター理事長
コーディネーターは中村正憲・朝日新聞論説委員

 ◇申し込み 
はがきかファクス、Eメールのいずれかで、郵便番号、住所、氏名、電話番号を書き
〒530・8211(住所不要)朝日新聞大阪本社・朝日21関西スクエア「淀川シンポ」係へ。
ファクスは06・6443・4431。
Eメールは sq-fobox@asahi.com へ。
定員700人。無料。11月5日必着。聴講券を送ります(応募者多数の場合は抽選)

 ◇主催 朝日新聞社

2008年10月 6日

紋別市長、“木質バイオマス社会設立”と“CO2ゼロ”を学ぶ旅

9月29日から10月2日にかけて、北海道オホーツクの紋別市長一行を引率して、岡山県真庭市の集成材政界トップメーカー「銘建工業」、京都府南丹市の日吉町森林組合、奈良県川上村の吉野林業「清光林業」を視察する旅の途中でこのブログを書いています。

詳しくは、以下の趣旨文とスケジュールをご参照ください。

趣旨

 「SGEC」森林認証、国内最大29万ヘクタールを取得したオホーツク林業地で中心的役割を担うべき人口2万5千人の紋別市には今、それら29万の森から出てくる人工林材をどのように活用してオホーツクの人々を幸せにするかの“青写真”をいそぎつくることが求められています。

 林野庁と森林組合がこの二年くらいの間に全国で急ピッチで進めている「山仕事のやり方の改革」を、ここでやってみるチャンスがめぐってきているともいえるでしょう。「所有者の取りまとめ」「道づくり」「作業の効率化」です。

 ドイツでは、1980年代に林業改革が進められた折に、巨大コンツェルンも、それに対抗した民間の集合体も、それぞれが“木材価格の決定権”を自分が持とうと競い合って改革が急ピッチで進んだことを、昨春、富士通総研の梶山恵司氏に引率されて行った人間たちは学んできています。

 北海道森林管理局は、所有する19万ヘクタールの認証林から、今年は8万立方の材を出す努力をし、それは今後も続けられるでしょう。同じように「山から材を大量に出す“社会システム”をつくりあげる」ことが、オホーツク林業界の民間側の喫急の使命であり課題ではないでしょうか。

 今回は、市長の要請に従って、①木質バイオマスエネルギーでの“自給”を都市としてめざす真庭市が、「集成材コストカット世界一」の銘建工業や他の企業とともにどのように生きようとしているのか②“天皇杯”を受けた日吉町森林組合の「森林所有者取りまとめのソフト技術」と「山仕事の効率化のくふう」③日本最大の雨量、多数の破砕帯を抱えてもしっかりとした作業道網をつくり、安価に材を出すことに努力している「吉野林業」17代の清光林業の仕事ぶり、を視察できるメニューをつくってみました。

 超多忙な、銘建工業の中島浩一郎社長、日吉町森林組合の湯浅勲参事、清光林業の岡橋清元社長の三氏に無理をお願いし、スケジュールをいただくことができています。
 
 また、7月4日の紋別でのシンポジウム時に、「森里海連環学」と「CO2ゼロ提案」を紋別市に導入して下さった京都大学「フィールド科学教育研究センター」とも、視察日程の最終日には3時間の会議の時間を持ちたいと考えます。

 白山義久教授の試算では、仮に29万をおよそ30万ヘクタールと計算して、若木ならば年間200万立方の成長があり、二酸化炭素吸収量は110万tとみこまれ、日本人の1人当たりの年間CO2排出量9.2tをおよそ10tと考え、紋別の人口を(2.5万だが)3万と考えても、30万tのCO2の排出なので、吸収が排出のおよそ3倍以上もあると計算でき、「森林でのカーボンオフセット」はまちがいなくできることが試算できる上に、まだ3倍以上の余裕があるので、紋別便の廃線を考えているかもしれない全日空などに有利な取引をもちかけることも可能とのこと。全日空とは、京大が指導し、全国の全日空の飛んでいる空港周辺で「私の青空、全日空の森づくり」事業をしているという関係もすでにあります。
 
そんな「21世紀は森林(もり)に生かされること」を学ぶ旅程として企画しました。


9月29日(月)
      13:25 紋別空港発
      19:00 岡山空港着     レンタカーに乗り込み(車中1.5h)
      20:30 真庭市・宿泊地着
      20:45 夕食
9月30日(火)
       7:00 起床
       7:30 朝食
       8:00 銘建工業「集成材のコストカット世界一」の中島浩一郎社長よりレクチュア
            「“木質バイオマス社会”を地域と共にめざして20年」
       9:00 工場及び倉庫群を案内してもらう
      11:00 コンクリート会社のチップ・ボイラー乾燥システムを見る
12:00~13:00 食事をしながら、真庭市行政よりバイオマス行政全体のレクチュアを受ける
13:00~15:00 真庭市の案内によって、市内各所バイオマス関連施設の見学
      15:00 出発(車中3.5h)
      18:30 京都府南丹市日吉町「日吉荘」着
      19:00 夕食
10月1日(水)
       6:30 起床
       7:00 朝食
       7:30 日吉町森林組合参事・湯浅勲氏よりレクチュアを受ける
       8:30 山の作業の見学に出発
      11:30 昼食
      12:00 出発(車中5h)
      17:00 奈良県川上村「ホテル杉の湯」着・竹内名誉教授と合流
17:15~19:00 吉野林業17代「清光林業」社長・岡橋清元氏からのレクチュア
            「大橋慶三郎先生に学んだ道づくりと林業経営が、私を救った」
      19:30 夕食
10月2日(木)
       7:00 起床
       7:30 朝食
 8:00~11:00 山の作業と道の見学
      11:30 昼食「杉の湯」
      12:00 出発
      16:00 京都大学にて、白山義久教授、同行の竹内典之教授と会合

2008年10月 2日

高知新聞連載 【11】高取保育園(下) 子どもたちがつくる

 玄米に雑穀を交ぜたごはん、味噌汁、納豆。一歳児からこんなものを毎日給食で食べている福岡市の高取保育園の子どもたちは、その食事につけてもらう、大根の沢庵(たくあん)漬け、高菜漬け、らっきょう、梅干し、味噌(みそ)を自分たちでつくっている。

 昭和四十三年から無農薬有機作物にこだわっている給食にしてこられた西福江園長が「和食の基本を食べる」だけでなく、「つくる」ことで、園児たちが身体はもちろん、心も強い優しい人に育ってほしいと願ってこられたからだ。

 高取保育園が給食に使う有機野菜は、二軒の農家から届けられる。沢庵漬けの大根と米は、平田農園から。露地野菜は三坂百菜園から。

 平田敏雄さん(82)は年に五回漬けられる沢庵漬けの大根を、去年は四百八十本、子どもたちに届けた。届けると、子どもたちが並んで迎えてくれ、「平田のおじちゃん、ありがとう」と送ってくれる。感謝の心が伝わる。

 写真の沢庵漬け作業は、三週間前に平田さんが届けた大根を使っている。「洗って、くくる。その瑞々(みずみず)しい大根が、毎日お日さまに当たって、色が変わり、においが変わる。『園長先生、甘いにおいがしてきたね。ちょっと端っこをかじってみていい? もう漬けていいころかな?』と子どもたちは私に聞いてきます」と西園長。

 さらに続けて、「自分たちで、生きることや、生かされていることや、そして死ぬことさえも、こんなふうにいろいろな食べ物をみんなで作ることで学んでゆくのです。うちの子はみんな、“立派な”うんちをしますよ。納豆、漬物の発酵力が身体にいいのだと、子どもたちは知らず知らずのうちに刷り込まれもしてゆくのですよ」。

 みんなで洗って干した葉付き大根を、先生方に包丁で葉と大根に切り分けてもらい、塩と糠(ぬか)を交ぜたものや昆布、鷹(たか)の爪(つめ)をまず底に敷いて、その上に大根というふうに交互に置いてゆき、最後に葉っぱを置いた上に重しを置いておく。
 何日くらいで食べられるようになるのか、新漬けと古漬けの味の違い。こんなことからも子どもたちの感性は、何かを学ぶ日々を重ねるのだろう。

 「沈黙の春」を著して農薬の恐ろしさを世界に教えたレイチェル・カーソン女史は、こんな子どもたちの感性を「センス・オブ・ワンダー」と名付けた。「驚くこと」、どんな小さなことにも驚いて、素直な心で受け入れ育っていく力も、健全な作物と、それを使って子どもたちが自分たちの共同作業でつくってゆくことで培われることを、高取保育園の先生方は、日本列島の南から発信しておられる。

 そしてその園に子どもたちを送り出すお母さんたちも、最初は自分の子どもの身体に現れたアレルギー症状がきっかけで園とのかかわりを持つが、子どもたちが園で食べる食事と同じ有機無農薬野菜を使った玄米を中心とした和食を家でも作るようになるに従って、自分たち親も健康になってゆくことに気づく。
 「センス・オブ・ワンダー」は、“大人になっても忘れてはいけない心”であったことが、このお母さんたちには分かるだろう。

 ましてや「食」を司(つかさど)る省庁、農林水産省ならなお更なこと、と。昨今の食の不安には驚かされる。
 小さな毎日の安心を積み重ねる高取保育園の「食育」活動を、日本中でぜひまねてみてほしい。

amanokochi11.jpg

 【写真】2つの樽に、年長組(5歳児)42人で、98本の有機大根を漬けた、ことしの1月29日

(2008年09月22日付・朝刊)

Profile

天野礼子(あまの・れいこ)

-----<経歴>-----

アウトドアライター。
1953年、京都市生れ。
中、高、大学を同志社で過ごす。
19才より釣りを始め、文化人類学者の今西錦司博士の主宰された「ノータリンクラブ」に属して、国内外の川、湖、海辺を釣り歩く。
26才より小説家、開高健に師事。
1988年には師と共に長良川河口の堰建設反対に立ち上がり、「ダムは不用」の国民世論に育て上げる。
近年は「川を再生するには森を生きかえらせることが必要」と“森仕事”へ視野を広げて、日本の森から材が出る社会システムを作り直すことを各地で提案している。
京都大学が2003年に構築した「森里海連環学」の普及もお手伝いするため、高知新聞社と山陰中央新報社でカルチャー教室「自然に学ぶ“森里海連環学”」を続けている。
2001年より、高知県・仁淀川の源流にも家を借り、有機農業普及のための「高知439国道有機協議会」を07年に立ち上げて、事務局長を務めている。08年7月に養老孟司氏らと「日本に健全な森をつくり直す委員会」を設立した。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
http://www.uranus.dti.ne
.jp/~amago/


長良川河口堰建設をやめさせる市民会議
http://nagara.ktroad.ne.jp/

公共事業チェックを求めるNGOの会
http://kjc.ktroad.ne.jp/

日米ダム撤去委員会
http://damremoval.com/

市民版憲法調査会
http://www.kenpou.com/

-----<著書>-----


『“林業再生”最後の挑戦』
2006年11月、農山漁村文化協会


『だめダムが水害をつくる!?』
2005年10月、講談社+α新書


『「緑の時代」をつくる』
2005年5月、旬報社


『ダム撤去への道』
2004年5月、東京書籍


『日本の名河川を歩く』
2003年7月、講談社+α新書


『市民事業』
2003年4月、中公新書ラクレ


『ダムと日本』
2001年2月、岩波新書


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