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2006年8月14日

最上・小国川にダムはいらない 4

8月11日の天保さんに答えて。

武庫川流域には、女医の谷田百合子さんらの聡明なダム反対グループ「武庫川を愛する会」があります。
国土交通大臣が諮問し、「大臣はその意見を尊重しなければならない」(「諮問」とはそういうもの)流域委員会で、最初にできたのは「淀川流域委員会」でした。これのお世話をしたのはMという当時「近畿地建」(近畿地方建設局)の所長。この人は、長良川河口堰のゲートを降ろした役人でした。

彼ら河川官僚は、私たちの長良川河口堰に反対する全国規模の反対にほとほと手を焼きました。M氏はそこから何かを学んだのでしょうか。
私はさすがによう入れなかったのですが、そこそこの信頼できる人物が入れるような仕組みの委員会を作りました。

それで「淀川流域のすべてのダム計画はいらない」という結論が出たのです。

その立役者が、今本博健さんという、京大名誉教授。
この方は「僕は昔は“御用学者”と、行政に思われていたの。委員会では『黙って』いたからね。でも今は、自由な身分になって、思っていることを言う。『これ以上のダムは日本にはいらん』とね」。

連載の③に載せている意見書の文章は、この今本先生が起草され、他の3人がサインをし、私が県庁へ出しに行ったもの。

今本さんは、8月24日に小国川現地を見て、地元住民がつくっている「最上・小国川の“真の治水”を考える会」の集会に出て、「小国川に穴あきダムはいらない」ことを論証されました。

それに先立ち、この地の「流域委員会」の議事録にすべて目を通されていて、「この委員会はあまりにも簡単に結論を出しすぎている」と批判されました。7月には、北海道の天塩川の「流域委員会」メンバーにも、「もっとしっかり検証するべき」と忠告されています。

天保さん、関西にはこんな河川工学者ががんばっている「淀川委員会」があって、それが新聞を賑わしているために、「武庫川委員会」の委員たちも自分自身に恥ずかしくない“行動”を取ったのだと思えます。

サンルさん、してみると、やはり「行動」は、しないよりはする方が、「声」は、出さないよりは出した方がよいと思えませんか。

最上・小国川にダムはいらない 3

8月9日のサンルさんに答えて。

田中康夫さんの選挙には、1万票も白票が入ったそうです。これは、”やんちゃ”なヤッシーの手法に対するファンの怒りかもしれませんが、私にはとても幼稚に思えました。

 サンルさんは「住民が声を出して反対する意味ってあるのですか?」と言いますが、それではなぜあなたはコメントをしているの?
「行動」をすれば、行動をしないよりは何かが変わることを私は知っています。

 そこで私は、8月11日に山形県庁へ行って、四人連名の以下のような意見書を土木次長に提出してきました。
その席には、この連載の②に出てくる役人、H氏も連席していました。


平成18年8月11日
             
          意  見  書

山形県知事     斉藤 弘  殿
山形県土木部長  池田 隆  殿


                         京都大学名誉教授  今本 博健
                         新潟大学教授     大熊 孝
                         法政大学教授     五十嵐敬喜
                         アウトドアライター   天野 礼子

 私たちは、この度、ダムのない天然アユ溯上河川・小国川を愛する 人々の要請で小国川を訪問し、貴職らが進められていますダム案よりも、ダムに頼らない“真の治水”を地元住民らと考えるべきであるという想いに達しています。
 しかしながら、最上川水系流域委員会最上地区小委員会(大久保博座長)は、平成18年5月23日付にて「最上小国川の治水対策として現制度の下では穴あきダム案に依るほかないと考えられる」との報告を最上川水系流域委員会委員長に提出されています。

 最上小国川は、「松原アユ」で知られます全国屈指の清流であり、ダムの計画地点下流には赤倉温泉と瀬見温泉が存在しています。もし仮に穴あきダムが建設されたとしますと、松原アユをはじめとする自然環境に重大な負の影響が及ぶ恐れがあるうえ、計画規模を超える洪水に襲われますと壊滅的な被害が発生する可能性があります。したがいまして、穴あきダム以外の“真の治水対策”を採用すべきであると確信いたしまして、本意見書を提出いたします。

 以下に、穴あきダムの問題点と真の治水対策を説明いたします。

 穴あきダム(流水型ダムともいう)は、堤体底部に放流口をもち、平常時は水を貯めないので、魚や土砂の移動が妨げられず、環境への影響は軽微であると説明されています。しかし、穴あきダムにはつぎのような問題があります。

 平常時の上流からの流れは、暗くて長いトンネル状の放流口を抜け、流れの勢いを弱める減勢工(エンド・シル)に空けられた狭い隙間を通って、下流へと出ていきます。隙間での流れは非常に速く、魚の溯上が妨げられます。

 洪水時の流れは、一時的とはいえ、ダムの上流に貯められますので、土砂の堆積が発生します。この土砂は洪水の引き際に水の流れとともに排出されますが、かなりの部分がそのまま残ります。このため穴あきダムにも堆砂容量が設定されるのです。土砂流出の多い最上小国川の場合、総容量630万m3のうち実に24%の150万m3が堆砂容量です。

 また、洪水時の流れは泥水ですので、樹木などに泥が付着し、枯れる恐れがあるうえ、その後の降雨で付着した泥が洗い流され、下流は濁流 となります。沈殿していた有機物が徐々に溶出し、水質が悪化する恐れもあります。

 計画規模を超える洪水が発生した場合、洪水はダムを越えて流れますので、下流での洪水流量が急激に増え、逃げ遅れなどにより被害を激甚化する恐れがあります。
 さらに、穴あきダムは中小洪水をほとんど調節しませんので、自然環境にとって重要なダイナミズムは確保されますが、別の支川の流域に降雨が集中して下流が危険状態となっても、それを緩和することができません。

 穴あきダム完工後の湛水試験では、数か月という長期間にわたって水を貯めますので、水没した動植物が死に絶える恐れがあります。
 周辺の景観が劇的に改変されることはいうまでもありません。

このように、穴あきダムは、洪水調節機能に欠陥があるうえ、自然環境 に及ぼす影響を無視できません。

 現在の治水計画は基本高水を河道とダムに配分するようにしており、超過洪水に対する配慮がなされていません。洪水は自然現象ですので、 超過洪水が発生する可能性はつねにあります。したがいまして、いかなる大洪水に襲われようと、少なくとも壊滅的な被害を避けるようにすべきです。

 また、「これからの治水は、まちを安全にするだけでなく、まちを活性化するようにすべき」です。それが“真の治水”です。

 最上小国川ダムは赤倉温泉の治水には一定の効果がありますが、まちの活性化にはつながりません。したがいまして、まず河床掘削と拡幅によって河道の流下能力を増大することを優先的に実施すべきです。河道内の建物は再配置し、清流に向き合った温泉街をつくることで、まちが活性化します。矢板やソイルセメントを用いた止水壁の設置により、河床掘削の湯脈への影響を防止することができます。河道の流下能力を超える洪水が発生した場合は、早期避難によって人命の損傷を防ぎ、高床式などの建物耐水化によって物的被害の軽減を図るべきです。

 山形県におかれましては、一時しのぎの「穴あきダム」を採用することなく、“真の治水”を実施して、地域に永続的な繁栄がもたらされるように、可及的速やかに勇気ある英断を下されますよう要望いたします。

以上

2006年8月10日

最上・小国川にダムはいらない 2

 一昨年私は、小国川ダム計画について、山形県の河川担当役人H氏と話をしていて、田中康夫長野県知事が「“脱”ダム宣言」で指摘した「多目的ダム事業の図式」が、いかに地元役人を誘惑していたかを実感しました。

 「“脱”ダム宣言」は、いわく。

 「利水・治水等複数の効用を齎すとされる多目的ダム建設事業は、その主体が地元自治体であろうとも、半額を国が負担する。残り50%は県費。95%に関しては起債即ち借金が認められ、その償還時にも交付税措置で66%は国が面倒を見てくれる。詰まり、ダム建設費用全体の80%が国庫負担。然れど、国からの手厚い金銭的補助が保証されているから、との安易な理由でダム建設を選択すべきでない」(一部)。

H氏:「私たちは危険な堤防を直すために予算をやりくりするのですが、1000万円の予算を一つとってくるにも大変な苦労をします。しかしダムを引き受けると、国交省河川局さんには“引き出し”がいっぱいあって、『県は3割負担』といいますが、実際は1割の負担で工事ができるのです。」

天野:「小国川ダムはおよそいくらかかりますか」

H氏:「130億円くらいで」

天野:「その1割といえば13億円ですよね。1000万円の捻出も苦労するのに、どうやって13億円を作るのですか」

H氏:「・・・・」

 この時、H氏は直接ダム担当ではなかったのですが、昨年ダム担当となりました。

 そして出てきたのが、「穴あきダム案」と、「お手盛り(ほとんどが行政のいうことを聞く人で構成されている)審議会」なのでした。(つづく)

2006年8月 8日

最上・小国川にダムはいらない

 最上川(山形県)の河口から60km上流で右岸(下流へ向かって右)から流入してくるおよそ40kmの川が小国川で、この川は私の『日本の名河川を歩く』(講談社+α新書)では、“ベスト10天然河川”のうちの第二位に選ばれています。10項目を星5つで選ぶ“私的ミシュラン”では、「ダムがない」「アユが天然溯上している」「川漁師がいる」「川魚を食べさせる文化がある」「川の正しい風景がある」の5項目で星5つを取れているからです。

 この川に、山形県のダム計画があるのですが、小国川漁業協同組合が“絶対反対”を貫いているので県が苦戦しています。県は昨年より、ついには“穴あきダム案”まで持ち出してきて、「とにかく造ろう」という態度に出てきました。この8月中にも結論へ導こうとしています。

 このダム案と、それをめぐる人々を数回にわたってレポートします。(つづく)

Profile

天野礼子(あまの・れいこ)

-----<経歴>-----

アウトドアライター。
1953年、京都市生れ。
中、高、大学を同志社で過ごす。
19才より釣りを始め、文化人類学者の今西錦司博士の主宰された「ノータリンクラブ」に属して、国内外の川、湖、海辺を釣り歩く。
26才より小説家、開高健に師事。
1988年には師と共に長良川河口の堰建設反対に立ち上がり、「ダムは不用」の国民世論に育て上げる。
近年は「川を再生するには森を生きかえらせることが必要」と“森仕事”へ視野を広げて、日本の森から材が出る社会システムを作り直すことを各地で提案している。
京都大学が2003年に構築した「森里海連環学」の普及もお手伝いするため、高知新聞社と山陰中央新報社でカルチャー教室「自然に学ぶ“森里海連環学”」を続けている。
2001年より、高知県・仁淀川の源流にも家を借り、有機農業普及のための「高知439国道有機協議会」を07年に立ち上げて、事務局長を務めている。08年7月に養老孟司氏らと「日本に健全な森をつくり直す委員会」を設立した。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
http://www.uranus.dti.ne
.jp/~amago/


長良川河口堰建設をやめさせる市民会議
http://nagara.ktroad.ne.jp/

公共事業チェックを求めるNGOの会
http://kjc.ktroad.ne.jp/

日米ダム撤去委員会
http://damremoval.com/

市民版憲法調査会
http://www.kenpou.com/

-----<著書>-----


『“林業再生”最後の挑戦』
2006年11月、農山漁村文化協会


『だめダムが水害をつくる!?』
2005年10月、講談社+α新書


『「緑の時代」をつくる』
2005年5月、旬報社


『ダム撤去への道』
2004年5月、東京書籍


『日本の名河川を歩く』
2003年7月、講談社+α新書


『市民事業』
2003年4月、中公新書ラクレ


『ダムと日本』
2001年2月、岩波新書


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