時代の軸に「聖地」のパワー
昨日(10月5日)の朝日新聞の日曜版「be」に、「聖地」の記事がクローズアップされていた。ここ1年で朝日新聞に「聖地」が登場した記事数は、10年前の2倍ほどの200あまりになり、注目されていることがわかる。
紹介されていたのは、熊野にある「花の窟神社」。神社の社殿はなく、高さ45メートルの巨岩がご神体。イザナミ命のパワーである大地の母的役割が強い聖地なのだが、そのような祭神には触れることなく、もっと原初的な岩の神性や信仰について着眼し、説明してあった。
面白いと思ったのは、マグマと岩との関係の説明。専門家の産業技術総合研究所地質調査総合センターの加藤ひろ一代表によれば、熊野は岩石の元のマグマの粘り気が強いので巨岩ができやすく、マグマの冷える速さによって、奇岩ができるというものだった。
私は常日頃、日本は世界でも有数の聖地国であるといっている。それは、日本は火山国なのでマグマの影響が強くパワーをもちやすいことが理由なのだが、この記事によって、聖地には多くみられる巨岩の意味もマグマにあるとわかり、科学的根拠のある方からの内容なので、聖地に疑問をもっていた方も成り立ちには納得されたのではないだろうか。
個人的にはこのような科学的なコメントに興味をもったが、記事全体からは聖地のパワーを肯定する文が多いのにも驚かされた。聖地という古から続く信仰の地には軸があり、人の心の聖地でもあるというようなことが、二面にも続いて掲載されている。熊野本宮大社の宮司によると「聖地とは世の中の軸。(略)軸にふれて自分の軸を確かめようとしているのではないでしょうか。」とのこと。
人の社会が不安定になってくると、何を基軸に考えていいのかわからなくなってくる人が多く、人によっては聖地に自分の先祖を含めルーツを感じ、自然との関係性を取り戻して生命力を取り戻していく、ということを暗にいっているかと思った。
二面はより深く心との関係性に視点をうつし、表題には「岩が導く人類の記憶」とし、「何かを感じる」「無意識の世界」というように、かなりスピリチュアルな内容。文化欄だからありなのだろうが、朝日新聞に、聖地自体の宗教性について、感じるという言葉を使うのは意外だった。沖縄の精神科医のコメントも結構衝撃的だった。「聖地は人が風景にとけ込みやすい場所。特に聖地の岩石は天の神と地下にいるとされている先祖の魂との接点という考えが人々にある。癒しへの期待が高いことで心理的、情緒的反応が強く、脳が活性化されやすい。」
癒しへの期待で脳が活性化する、というのは、どういう根拠なのか、個人的にはデータがあれば是非知りたい内容だ。
そして、最後の記者のまとめもすごい。沖縄にいる「ノロ」「ユタ」と呼ばれる巫女が「自ら制御機能を一時的に緩め、人類共通の無意識の世界に入って言葉を発する能力を持つ人もいる、との説もある。聖地を訪れた人も、似た状態になるのかもしれない。そして岩は、人類の深い記憶へといざなう扉なのだろうか。」
絶句した。記者が書いて許されるなら、十分世の中はスピリチュアルだ。明らかに数年前とは違う。皆思っていても、マスコミ、特にお堅い新聞にここまで書いたりしなかったはずだ。
聖地や岩について考察するつもりが、想像以上に前向きな、それも心理的効果を肯定した記事への驚きばかりになってしまった。スピリチュアルな感性が世の中には必要とは思ってきたが、不安な社会の反動なのか、すでにしっかり根付いているようだ。しかし、きっかけは反動でも、本来の日本人がもっている繊細な精神が戻ってきているともいえなくはない。聖地に赴くことによって、自分の感性を取り戻す人が増えている。人が本当に必要なことにきづき、新しい社会に変える原動力にもなると思う。
そのような意味で、日本はまだまだ可能性がある、と思える兆候をみた、ともいえる記事だった。


