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2008年10月23日

漢字の読み~常用漢字の読み追加案承認から

10月22日(水)朝日新聞朝刊一面に、常用漢字表に追加する予定の字種191字の音訓を追加する案が承認された記事が掲載されていた。使い分けできるようになった漢字は、日常ではよく使っている言葉なので目新しくはないが、神を「畏れる」、花の「匂い」、「妖しい」「要(かなめ)」などは日本の独特の文化を反映している読み方なので、追加されたことには意義があると思う。

常用漢字に追加されると漢字は忘れられにくくなり、延命することになる。漢字を存続させるということがどんなに意味があることなのかは、今年の2月に放映されていた「NHK知るを楽しむ」でも特集されていた、故白川静漢字博士(立命館大学名誉教授)の思いを知ると、なおわかりやすい。氏は漢字学の日本の第一人者だが、日本の漢字文化に最も精通していた方だからこそ、戦後の漢字制限には一貫して反対し、漢字文化の復権と東洋の回復を訴え続けてきた。漢字制限は明治の漢字廃止論からはじまった考え方で、戦後、数ある文字の中でも当用漢字1850字を日本人が使う漢字と定められ、現在の常用漢字1945字の制限につながっている。白川氏は、漢字の成り立ちにおいて宗教的、呪術的なものが背景にあったとしていたが、それこそ「畏れ」をもって漢字に接していたのだろう。氏の著書『漢字』は「文字は神とともにあり、文字は神であった」で始まる。一つの文字の誕生を大切にするからこそ、制限することで、貴重な漢字が忘れさられることを危惧していたのだと思う。96歳で一昨年に亡くなったが、その2年前まで漢字のすばらしさについて「文字講和」という年4回の講演をしていたというので、その熱意には驚かされる。

私は神道の神名が漢字で書かれるという視点から漢字に興味をもってきたが、日本人が生み出した文化でもある、ひらがなやカタカナに対しても強く惹かれてきた。特に伝承文化や古神道から学んだことには、真偽はともかく、説得力があるように思うことが多く、日本人的な生き方を考察する上で役立てている。私流の古神道は人の生き方の指針を何事も神と人(男と女)にわけて考えるが、この場合も神=漢字、ひらがな=女、片仮名=男、とすると、私にはわかりやすい。

ひらがなは万葉仮名を崩すことから生まれるわけだが、当て字の音(おん)を当て女性が主に使うことから女手ともいわれてきた。その形は丸みを帯び、女性らしい。また音(おん)をあてることから音(おと)にも通じ、擬音語にはぴったりで、空間軸をもつ空気感があるので風にも通じる。私は古神道の師から、この風とは女性が作り出すもので、家風に通じるのだと教えられた。「おん」こそ体の内で感じる感性の音で、だからこそひらがなで書くのだろう。

それに対して、片仮名は男文字ということになる。カタカナはひらがなに比べて角ばっている。これは刀で刻める文字だ。男性がイマシメを刻む意味で、家訓は本来カタカナで書く。訓示は家や社会という外にむけて発せられた言葉で、他人に示すためにつくられたのだろう。また、この訓読みは日本人が中国の漢字と異なる音の独自性をもたせた言葉で、日本人が使っていた言葉に漢字を当てて全く別の読み方をする大和言葉でもある。万葉集の頃に既に訓読みをはじめているので、古くから当て字が考案されていたことがわかる。江戸時代には古事記伝の冒頭で、天地(てんち)をアメツチと本居宣長がルビをふっているが、日本という「国」を意識した男的な作業ともいえ感慨深い。日本が日本として成り立ってきた過程の戒め、誇り、独立性を感じる。

漢字をみていると、神からの神託が形になり、その字から、独自の文化を築きだした日本がみえてくる。「アメ」の意をなす言葉に漢字の「天」を当てると決めた人は過去の時代の政府や個人なのかもしれないが、「アメ」がイメージとして残ったことが素晴らしいと思う。今回、読みとはいえ、常用漢字の範囲が広がったことは、文化の消滅を少し留めたようで、精神の豊かさにも関係してくる大事なことのように思った。

2008年10月14日

日本文化に精通する外国人

10月8日発売の「Newsweek」日本版10月15日号の特集は「NIPPON大好き」ということで、「失われかけた和の文化、ディープに極める外国人たち」と28人もの和文化に携わる外国人たちを紹介していた。

各々、コメントの内容はディープで、和文化に対しての深い愛が理解できるものもあり、短い文章ながらも感動する内容だった。

苦しい修行を乗り越え竹内流古武道の師範になって、イギリスで道場を開くイギリス人女性。織物の特異性に着目し、和の色を紡ぎだすカナダ人。名古屋にある上野天満宮の神職に外国人初に認められた21歳のオーストリア人。彼は「いつか神社界の役にたちたい」との思いがあるという。アメリカに自家製の味噌を普及させたアメリカ人の方は、すでに5冊のレシピ集を出版し、30年も味噌を愛し、多くの人に知ってもらう活動をしてきたという。生物学の研究者でもあったため、味噌の効能をいち早く理解したのだそうだ。

日本の優れた文化に関心のない日本人は一昔前は結構多かったように思う。和文化のもっている精神性の本質に気付ける人は意外にも外国人の中にもいると感じたことは多々ある。日本の感性は日本人の方が多分すぐに理解はできるのだろうが、興味のない日本人よりは、外国人であっても関心の高い人はずっと深く理解している。家元制や伝統を重んじる日本文化は世襲制が多く、血統が重んじ閉鎖的な面があるが、国籍を問わず外国人にも十分才能を発揮できる例をみると、日本の中の血統の意識がどれだけ狭い考えかと思ってしまうことはある。日本の文化の中に眠る精神は、すでに日本だけのものではなく、外国人が興味をもち、世界に広げる価値のあるものだと思う。しかし、そう考えると日本が世界に広がっていくようで文化と国家は別だと改めて思える。新しい価値として世界が認めスタンダードになる日も、そう遠くないようにさえ思ってしまう。

2008年10月 6日

時代の軸に「聖地」のパワー

昨日(10月5日)の朝日新聞の日曜版「be」に、「聖地」の記事がクローズアップされていた。ここ1年で朝日新聞に「聖地」が登場した記事数は、10年前の2倍ほどの200あまりになり、注目されていることがわかる。
紹介されていたのは、熊野にある「花の窟神社」。神社の社殿はなく、高さ45メートルの巨岩がご神体。イザナミ命のパワーである大地の母的役割が強い聖地なのだが、そのような祭神には触れることなく、もっと原初的な岩の神性や信仰について着眼し、説明してあった。
面白いと思ったのは、マグマと岩との関係の説明。専門家の産業技術総合研究所地質調査総合センターの加藤ひろ一代表によれば、熊野は岩石の元のマグマの粘り気が強いので巨岩ができやすく、マグマの冷える速さによって、奇岩ができるというものだった。
私は常日頃、日本は世界でも有数の聖地国であるといっている。それは、日本は火山国なのでマグマの影響が強くパワーをもちやすいことが理由なのだが、この記事によって、聖地には多くみられる巨岩の意味もマグマにあるとわかり、科学的根拠のある方からの内容なので、聖地に疑問をもっていた方も成り立ちには納得されたのではないだろうか。

個人的にはこのような科学的なコメントに興味をもったが、記事全体からは聖地のパワーを肯定する文が多いのにも驚かされた。聖地という古から続く信仰の地には軸があり、人の心の聖地でもあるというようなことが、二面にも続いて掲載されている。熊野本宮大社の宮司によると「聖地とは世の中の軸。(略)軸にふれて自分の軸を確かめようとしているのではないでしょうか。」とのこと。
人の社会が不安定になってくると、何を基軸に考えていいのかわからなくなってくる人が多く、人によっては聖地に自分の先祖を含めルーツを感じ、自然との関係性を取り戻して生命力を取り戻していく、ということを暗にいっているかと思った。

二面はより深く心との関係性に視点をうつし、表題には「岩が導く人類の記憶」とし、「何かを感じる」「無意識の世界」というように、かなりスピリチュアルな内容。文化欄だからありなのだろうが、朝日新聞に、聖地自体の宗教性について、感じるという言葉を使うのは意外だった。沖縄の精神科医のコメントも結構衝撃的だった。「聖地は人が風景にとけ込みやすい場所。特に聖地の岩石は天の神と地下にいるとされている先祖の魂との接点という考えが人々にある。癒しへの期待が高いことで心理的、情緒的反応が強く、脳が活性化されやすい。」
癒しへの期待で脳が活性化する、というのは、どういう根拠なのか、個人的にはデータがあれば是非知りたい内容だ。

そして、最後の記者のまとめもすごい。沖縄にいる「ノロ」「ユタ」と呼ばれる巫女が「自ら制御機能を一時的に緩め、人類共通の無意識の世界に入って言葉を発する能力を持つ人もいる、との説もある。聖地を訪れた人も、似た状態になるのかもしれない。そして岩は、人類の深い記憶へといざなう扉なのだろうか。」

絶句した。記者が書いて許されるなら、十分世の中はスピリチュアルだ。明らかに数年前とは違う。皆思っていても、マスコミ、特にお堅い新聞にここまで書いたりしなかったはずだ。

聖地や岩について考察するつもりが、想像以上に前向きな、それも心理的効果を肯定した記事への驚きばかりになってしまった。スピリチュアルな感性が世の中には必要とは思ってきたが、不安な社会の反動なのか、すでにしっかり根付いているようだ。しかし、きっかけは反動でも、本来の日本人がもっている繊細な精神が戻ってきているともいえなくはない。聖地に赴くことによって、自分の感性を取り戻す人が増えている。人が本当に必要なことにきづき、新しい社会に変える原動力にもなると思う。

そのような意味で、日本はまだまだ可能性がある、と思える兆候をみた、ともいえる記事だった。

Profile

暁 玲華(あかつき・れいか)

-----<経歴>-----

1969年:東京生まれ。
1993年:千葉大学工学部建築学科卒。大手建設会社勤務の後、占い師及びスピリチュアルカウンセラーに。
1999年:神社庁神職資格取得。
2002年:東京大学大学院新領域創成科学研究科で非常勤研究員として勤務。象徴研究に従事。
2004年:象徴研究家、スピリチュアリストとして活動を始める。古神道の自然との共生の思想に注目し、日本の精神と大地のメッセンジャーとしてセミナー、講演をはじめ、スピリチュアリストとして執筆、鑑定、また各種占い関連の執筆等の活動をしている。

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