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« 隠蔽工作は一人ではできない──静岡空港問題から見えた記者クラブ体質(後編)
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メディアの忘れ物 口蹄疫禍と切原ダム »

メディアはダム報道を忘れたのか 底抜け欠陥大蘇ダムのその後

日本各地を一人で取材する日々を送る当方、このところ自らの限界を痛感している。取材すべきものが次々に現われ、どうにも追いつかないのである。もともとの非力さに焦りも加わり、処理しきれなくなっている。自分の目で見てみたい、話をうかがいたいなどと思いながらも、足を運べずにいる事例が増える一方なのだ。

もちろん、取材が追いつかないのは新たなテーマだけではない。一度、取材した先のその後の動きについても同様だ。新たな展開があった場合、再度、お邪魔してきちんとフォローするのが責務と自覚しているが、時間とエネルギー、資金、そして発表の場などの問題があってかなわずにいる。書きっぱなしでは「無責任」との誹りは免れないと、内心忸怩たるものがある。

当方が再取材に動けず最もやきもきしているのが、九州の二つの農業用ダムについてだ。

ひとつは、農水省九州農政局が熊本県産山村に建設した大蘇ダムである。二〇〇五年に完成した畑地灌漑用ダムだが、水漏れで使用不能となっている「底抜け欠陥ダム」。水をためないマンガの世界の産物のような代物だ。

大蘇ダム周辺は阿蘇の外輪山の東麓で、そもそも火山灰地。地盤も脆弱で、地元の人たちは当初から水をためるのは難しいのではないかと指摘していた。工事は一九七九年に始まったが、地元の人たちの懸念が的中してしまった。ダム建設地から多数の亀裂が見つかり、工事は難航した。二〇〇五年にやっとダム本体が完成したものの、事業費は計画当初の約一三〇億円から五九三億円に膨らんでしまった。また、完成が延び延びとなったため、水利用を断念する農家が続出した。待ちくたびれてしまったのである。農業を取り巻く環境の激変も影響した。

どうにか試験湛水まで漕ぎ着け、関係者がほっと一息ついたもの束の間だった。目に見えぬダムの底でとんでもないことが起きていた。ダム湖の底や斜面から水が漏れてしまい、計画通りの貯水ができずにいたのである。この前代未聞の事態を九州農政局は当初、明らかにしなかった。大蘇ダムの水を利用する受益者団体(土地改良区)の関係者が漏水の事実を突きとめ、初めて表面化した。当方は現地を訪ね、九州農政局の担当者に直撃取材を敢行したが、彼らは「水の想定外の浸透」と言い張り、欠陥ダムとの指摘に色をなした。

その後、多くのメディアが水をためないダムの存在を取り上げるようになり、大蘇ダムは一躍、世の耳目を集めるものとなった。そして、国民の多くが水だけではなく、税金も大量に漏らす奇妙なダムに憤激した。行政の無責任さと税金のムダづかいを象徴する存在となった。農水副大臣が現地まで足を運び、九州農政局の大失態を認めて謝罪した。ここまでが自民党政権時代の話である。

昨年の政権交代後、大蘇ダムの話題はまるで水が地下に浸透したかのように消えていった。全国ニュースにはならず、地元熊本県と受益地の大分県でたまに取り上げられるだけだった。当方も遠くからその後の展開を注視するくらいだった。

では、大蘇ダムは現在、どのようになっているのだろうか。実は、十月二十一日から漏水対策の工事が始められた。事業主体は国(農水省九州農政局)で、工事名は「貯水池浸透抑制対策調査工事」である。漏水対策ではなく、浸透抑制対策と表現したところに九州農政局の姿勢が読み取れる。

工事は三年間かけて、ダムの斜面の一部約三万ヘクタールに厚さ約一〇センチのコンクリートを吹き付けるというものだ。事業費は約八億四〇〇〇万円。もっとも、この工事は漏水対策を調査するもので、補修の効果を検証し、そのうえで改めてどのような対策が必要か検討するという。つまり、あくまでも対策調査の工事であり、本格的な漏水工事とは異なる。三年間の工事でダムの水漏れを止めるというわけではなく、約八億四〇〇〇万円の事業費で水がたまるようになるというものでもない。換言すれば、水漏れをなくすのにどれだけの事業費と工期を要するかはわからないということだ。

大蘇ダムを作るのに約六〇〇億円の税金を投入し、約三〇年もの月日をかけた。そのあげくの水漏れで、しかも、どこから水が漏れているのかさえ明確になっていない。そもそもダムの不適地に強引にダムを建設したことから、底抜け欠陥ダムが生まれたのである。今後、漏水対策事業費が膨れ上がり、工事完了が延び延びとなることも充分考えられる。欠陥ダムの水漏れを塞ぐよりも、新たな利水の策を講じる方が妥当ではないだろうか。

どうも愚かな行為を繰り返しているように思えてならない。

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この日本国に国家という組織が生まれ土木工事が始まって以来『普請』という名で時の権力者の為に工事が行われた。時には無償でである。それが日本人のDNAに塗り込まれ今現在まで脈々と続けられている。権力者(今は税金で飯を食っている者と法に守られた報酬で飯を食っている者)の為に。これらの日本古来からの慣習を含めてある意味民衆的にご破算にしてくれると思える政治家が小沢一郎である。(もし間違っていれば即刻辞めさせればよい。)先に進む事を躊躇しているこく国の国民。国民全体の幸せを掴む為には『ご破算』が今は必要不可欠である。国民全体でこの国の行政に関わり監視(ランダムに選ばれし50人の区切りの各省庁担当の「行政監視委員会」各グループ)しなければ成らない。お上のやる事だからでは済まされない。

相川さん

私、貴方のルポがジャーナルで一番好きです。
大蘇ダムの件ももちろん忘れていませんが、菅仙石内閣では到底無理だと断言できます。

ラファエルさんが仰るように”日本古来からの慣習を含めてある意味民衆的にご破算にしてくれると思える政治家が小沢一郎である。”と今更ながら思います。

小沢一郎さんは、昨年の暮れに全国土地改良事業団体連合会の概算要求を野中さんを封じ込め半減させ政策実行の為の権力の使い方を我々に見せてくれました。

一方、仙石さんは野中さんに小沢潰しの指南を受けていると云う報道が有りますが、それを裏付けるかのごとく全国土地改良事業団体連合会の予算は増額されそうです。
権力を改革に使うのではなく私怨とも言うべき仲間(小沢さん)潰しに利用するという、仙石さんの民主党支持者への裏切りとも言える歪な精神構造が、政権交代を盤石のものにする参院選勝利目前で躓かせ、改革を破たんに導いているのだと思います。
一番重要な時期に政治とカネで党内政局をつくり小沢さん排除に動いた仙石さんの政局観を見せられるとこの人ではとても国を支えられないと思います。

昨年の政権交代では政治家が意志を持って事(政策)に当たれば殆どの事が成し遂げられるとの希望が持てました。
問題は個々の政治家の質の方で、菅・仙石・前原・岡田・蓮方議員ら未熟でリーダーシップも無く狭量な政治家達が愚かにも権力に酔いしれ改革を逆行させている事は明らかです。大衆的人気に囚われ地に着いた政策の遂行を忘れた組織はみじめなものです。

本来、この手の問題提起は蓮方議員らが中心となりやるべきでしょうが、他人を攻撃する割に自らを律することの無い彼女は所詮はパフォーマンス用議員と言う事です。悲しいかなこの手の問題の精査や解決にはまだまだ手が回らないのではないでしょうか。

愚痴の垂れ流しみたいなコメントになりましたが、マスコミはこのような税金のムダ使いとその背景こそ、徹底究明すべきであるのにそのような使命感はほとんどゼロの状態ですね。

大手マスコミがその存在意義を無くして行く中にあって、相川さんの真摯で素朴なルポは読者の心に響くものが有ります。これからも楽しみにしておりますので頑張ってください。

相川様
久々のご投稿、待ちわびて居りました。

大蘇ダムをはじめ、八ッ場ダムも、沖縄も、国中の問題がどこかに消えてしまいました。
今の内閣が国民の代表とは金輪際思いませんし、将来、3年もやっていれば成長するとも思いません。

こうしている内にも、名古屋では、またもや民意を行政が阻止するという事態が起こっているようですが、マスコミは」隠れ蓑」報道に終始しています。

一体何が起こっているのか、知りたいです。

@@@@@
以下引用

市選管は21日に延長を決定した際、署名集めをする「受任者」の欄が空白の署名簿が約2万枚あり、そこに記された 約11万4千人分の署名について「ルール通りに集められたかどうかを確認する必要がある」と理由を説明した。

これに対し、ネットワークは抗議書で「ほとんどが請求代表者が集めた街頭署名であり、受任者欄が空白なのは当然」
と説明。署名集めが終わった9月末に市選管事務局から「受任者欄が空白の署名は請求代表者が集めたものとみなす」
との説明を受けたと主張し、「審査期間が終わる目前に説明を覆すのは恣意(しい)的だ」と激しく批判した。


@@@@@

審査機関は20日間と決まっているものを、市選管は一ヶ月延期したというもの。
受任者蘭が空白でも、「受任者欄が空白の署名は請求代表者が集めたものとみなす」 という説明だったにも関わらず、審査最終日前日になって、空白の署名簿はルール通りに集められたものかどうか、審査するという。

ソース: 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/1023/NGY201010230001.html
署名をめぐる「疑問」と「反論」
http://www.asahi.com/politics/update/1023/images/NGY201010230006.jpg


何時からこの国のお役所は、国民を常に罠に掛け、お役人の餌食にすることを楽しみとするようになったのでしょう。

先日、日本に帰国して、奈良県天理市の近くを訪問しました。その山間に水を溜める事ができないと地元の人が言っている小さなダムがありました。日本国中にこういう欠陥ダムがあるのじゃないでしょうか?誰が提案して、どの役人が許可したのか記録を残す制度が必要です。

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Profile

相川俊英(あいかわ・としひで)

-----<経歴>-----

1956年群馬県生まれ。
早稲田大学法学部卒業。
1992年よりフリージャーナリストに。
1998年から週刊ダイヤモンド委嘱記者に。
地方自治を主なテーマとして全国を取材・執筆、サンデープロジェクトの特集レポーターも務めている。

BookMarks

-----<著書>-----


『長野オリンピック騒動記』
1998年1月、草思社

『ボケボケパラダイス』
1996年12月、筒井書房

『コメ業界は闇の中』
1994年4月、ダイヤモンド社

『東京外国人アパート物語』
1992年11月、新宿書房

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