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メディアはダム報道を忘れたのか 底抜け欠陥大蘇ダムのその後 »

隠蔽工作は一人ではできない──静岡空港問題から見えた記者クラブ体質(後編)

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 元所長は法廷で立木が残った原因を問われ、「データの入力ミスと聞いています」と答えた。航空レーザー測量で得られたデータを電子入力する際に、誤った数値を打ち込んでしまったというのである。そもそも急傾斜地で誤差が生じがちな測量手法のうえに、入力ミスが加わっていた。空港の全体面積は約五〇〇ヘクタールという広さである。航空法上の高さ制限をオーバーした物件は屏風林だけなのか。それ以外にも多数あったのではと考えるのが、ごく普通ではないか。
 重大なミスをゴマカシと隠蔽でカバーしようとして、静岡県は袋小路に迷い込んでしまった。抜け出す奇策が考え出された。屏風林の除去を先送りし、滑走路を三〇〇メートル短縮して暫定開港を目ざすというものだ。当初の開港予定から三カ月ほど遅れた〇九年六月四日に目標が設定された。工事が急ピッチで進められた。
 そして、〇九年二月。国土交通省による空港完成検査に臨むことになった。検査は二月九日から一一日までの三日間。東京航空局の係官が現地を訪れ、立ち入り検査を実施した。三月一九日に合格が発表され、関係者は一様に胸を撫で下ろした。あとは開港に向けて走るのみ。県民の関心もそちらに移っていった。ところが、空港南側の私有地でとんでもないことが起きていた。
 反対地権者のひとりMさんは五月二六日、空港南側法面に隣接する自分の山林に入ってみて仰天した。多数の樹木が無断で伐採されていたのである。その数、九四本。あわてて県に電話をかけて問い合わせたところ、「県有林と間違って伐採してしまった」との言葉が返ってきた。また、県は伐採の理由を「管制塔からの視界を改善するため」と語った。
 空港南側の私有林が「誤伐採」されたのは、二月一三日だった。国土交通省による空港完成検査が終了した翌日である。当時の空港建設事務所長(証人として出廷した元所長)が前日二月一二日に、このエリアの立木の伐採を部下に命じていた。伐採された立木は全体で約四〇〇本。Mさんが所有する立木はその四分の一を占める。はたして本当に誤伐採だったのか。そして、「管制塔からの視界を改善するため」というのは、本当だろうか。

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 元所長が証人として出廷した七月九日の裁判で、原告側弁護士が鋭い質問を重ねた。
「私はあらゆる支障物件を除去するように指示したので、どこかと特定して(指示して)いません」
 元所長が体を強張らせながら語ると、原告側弁護士は表情ひとつ変えずにズバっと切り込んだ。
「Mさんの立木は間違って切ったのではなく、(航空法の高さ)制限を超えているとわかって切ったのではないか?」
 法廷内はシーンと静まり返り、誰もが耳をそばだてた。証言台に立っていた元所長はやや早口で「退職した後に職員が間違って切ったと知り、謝りに行きました」と答え、立木が制限表面を超えていたかについては「私は承知していません」と繰り返した。二時間以上に及んだ口頭弁論で最も緊迫した場面となった。

 原告側弁護士は図や写真を手に、実証的に迫った。無断伐採の判明後、Mさんら地権者は現地で実測とGPS計測を併用した測量を行っていた。また、残された切株などから伐採前の立木の高さを推計していた。それによると、無断伐採された木の中に航空法の高さ制限を超えていたと推測されるものがあり、三・三七メートルや五・九メートルもオーバーしたものがあったという。こうした調査結果から、原告側は「誤伐採ではなく、支障となる物件と認識したので伐採した」と追及したのである。これに対し、元所長はこれまでの県の主張と矛盾することをポロリと漏らしたものの、その後は「私は承知していません」を連発して明言を避けた。もうひとつの立木問題の真相は深い霧の中に隠されたままだ。

 ところで、県が「管制塔から視界改善」を理由に私有林の誤伐採を断行したのは、国土交通省による完成検査が終了した翌日である。このため、誤伐採が検査に影響することはありえないので、県の主張にウソはないと考える向きもあるだろう。しかし、そう判断する前に確認しなければならない点がある。
 国土交通省の完成検査は、静岡県が作成した「空港周辺物件一覧表」に基づいて現場確認を実施しているにすぎない。国土交通省が独自に測量する訳ではない。また、県が提出した物件一覧表に誤伐採の場所は記載されておらず、国土交通省の担当官は県職員に口頭で確認しただけだという。となると、国土交通省の検査終了後に急いで伐採したことに別な見方も生まれる。大慌てで隠蔽に走ったのではないかとの疑念である。いずれにせよ真相は深い霧の中に隠されてしまった。

 これほど重大な疑惑が法廷内で明らかになったにも関わらず、県民や国民に知らされていない。二ュースとして取り上げられていないからだ。隠蔽工作は一人ではできない。協力者の存在が不可欠だ。そして、協力者には、積極的に加担する人と見て見ぬふりの消極的加担者の二種類ある。

【関連記事】
■隠蔽工作は一人ではできない──静岡空港問題から見えた記者クラブ体質(前編)
http://www.the-journal.jp/contents/aikawa/2010/08/post_10.html

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この例に見るまでもなく、日本のマスコミは、社会の問題点を正しく国民に知らせるという任務を放棄しているように思います。基本的に受け狙いのネタばかり放送したり掲載したりするので、情報の質は下がる一方です。あるのはゴシップばかり、ジャーナリズムは無いというしかないのでしょう。
静岡空港については、そもそもいらない論が多くあったと思います。東に羽田、西に中部国際。新幹線も東名もあるし、静岡は空港など造らずとも、本来交通の便はいいところのはずです。ただ静岡は派手好きなところらしく、こういうシンボリックなものを作りたがる傾向があると聞いたことがあります。この空港もその一環でしかなく、今後の利用計画等あって無きのものなのでしょう。税金の無駄遣いの最たるものの1つです。その上、造成のために無茶苦茶をやった上に知事は知らんぷり。最悪です。もっとこのようなことを報じれば、選挙も盛り上がるでしょう。

この度の記事は知らないことも多々あり感銘を受けました。

サンデープロジェクトの時は、相川さん達が活躍なさっていた番組後半「だけ」は非常に楽しみにしており、そこだけはずっと続けて欲しいと願っていました。

私とは違う感性であり、なんでもかんでも賛同するなどと言うことはありませんが、それでも「取材の裏づけ」をされているものもあり、一視聴者として大変楽しませて頂いておりました。


今回の相川さんの記事で特に気になったことは、現場に大手メディアの記者が「来ていた」にも関わらず、大本営(官公庁や役所)発表があるまでは、まるで調教された犬のごとく、いつまでも「待て」の指示を守り続けている姿です。
現場に取材に行っていないというのなら、まだ怠慢だと呆れて笑うことも出来ますが、実際に自分の目で見て情報を得ていたにも関わらず、「待ち続ける姿」は異常性すら感じます。

まさに国民目線ではなく、飼い主だけを見続けていることがリアルに理解できました。

大手メディアの異常性は、発行部数が世界でもトップを占め、世界各国に支局を有するといった有数の取材網があるにも関わらず、自らよりも遥かに発行部数の劣る海外新聞紙等を安易に引用するというところにも現れていますね。
これだけの取材網があるのならば、部数を誇るのではなく、他国が喜んで買いに来るだけの品質を有して欲しいものですが、実態は言わずもがな(ただのキャリアパスに過ぎないのだから当然と言えば当然ですが)。
http://pub.ne.jp/zonnecellen/?entry_id=1606611


話は横道にそれましたが、既に大手メディアは国民の知る権利の代表者ではなく、ただの強奪者となっています。
ここJournalではでは大手を中心に話があがりますが、実は大手から中堅、小規模まで完全なるピラミッド構造(と言うよりカースト制度と呼ぶ方が適しているか)による情報独占が行われていて、全く、国民の知る権利からとはかけ離れているのが現状です。
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Asagao/6874/kyoukai.htm


このような大手メディアの異常性がある中、有意義な情報を提供して下さる。ジャーナリストの皆様には、まさに心から頭が下がる思いです。


政局談義も面白いですが、この話も重要だと思っています。それは、官公庁の支配がそれこそマスメディア構造と同じく上から下にいたる隅々にまで支配するという構造だからです。

官報複合体と言うのは、実は、官僚機構もマスメディアも似たようなシステムと無責任体質で出来上がっているからこそ成立しているのかもしれませんね。

相川様

 地道な取材での貴重な情報、有難うございます。

 マスメデイアが反市民的な「報道」を行っている今、実態を暴露・糾弾することは、とても大事だと思います。

 記者クラブの記者が特権的に情報を入手しても、心ゆがんだかたちで、恣意的な”情報伝達”を行っているということは、犯罪でもあります。

 ジャーナリストとして最も大事な”良心”と言うものを投げ捨てた、権力の走狗としか言えません。恥を知れ、と言いたい。

 この現実をより多くの国民に知らせることはとても重要です。

 相川様のような、心あるフリーのジャーナリストの方の報道に感謝します。また、期待します。

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Profile

相川俊英(あいかわ・としひで)

-----<経歴>-----

1956年群馬県生まれ。
早稲田大学法学部卒業。
1992年よりフリージャーナリストに。
1998年から週刊ダイヤモンド委嘱記者に。
地方自治を主なテーマとして全国を取材・執筆、サンデープロジェクトの特集レポーターも務めている。

BookMarks

-----<著書>-----


『長野オリンピック騒動記』
1998年1月、草思社

『ボケボケパラダイス』
1996年12月、筒井書房

『コメ業界は闇の中』
1994年4月、ダイヤモンド社

『東京外国人アパート物語』
1992年11月、新宿書房

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