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2009年12月18日

誰のための税金か 茨城空港に群がる「関連工事」

 やることなすことがどうにもちぐはぐで、税金が住民生活の向上に役立っていない。そんな思いを募らせながら、取材現場を後にした。「茨城空港」を訪ねた時のことだ。空港ターミナルビルからの公共交通の便がなく、やむなく車でJR石岡駅まで送ってもらった。

 車は国道355号線を北西へ向かう。その国道の左側に目をやると、廃線となった鹿島鉄道の線路が並走している。2007年3月に赤字のため、沿線住民に惜しまれながら廃止となったローカル線だ。鉾田市と石岡市を結ぶ私鉄で、百里基地の南側を走る。高校生や高齢者といった車を運転できない地元住民の生活の足として利用されていた。

 廃線後は代替バスが運行されているが、便数の減少や渋滞による遅れなどにより、利用者数は鉄道時の4割にまで落ち込んでいる。地域の足を失い、日常的に不便を強いられている住民が間違いなく、生まれている。

 その一方で、新しい滑走路が百里基地内に設置されたのである。本体工事費220億円のうち3分の2が国(国土交通省)負担で、茨城県の負担は約70億円という。また、新滑走路などの維持管理も国が担うため、県にとっては持ち出しの少ないお得な空港という。 

 しかし、来年3月に開港が迫りながら、就航路線はソウル(仁川)便が1日1往復のみ。県は定期便の誘致に必死だが、国内便開設の可能性は限りなくゼロに近い。このため、県はチャーター便を飛ばすことに力を入れ、地元の小美玉市も開港日から韓国と台湾のツアーを6回実施し、ツアーに参加する市民の旅費を一部補助するという。税金を投じて市民に海外旅行をおすすめするというのである。それもこれも「茨城空港」の賑わいを生み出すための窮余の一策だ。

 旅客機が1日1往復しか飛ばない「茨城空港」だが、もろもろの関連工事は盛大に実施されている。旅客ターミナルビルやアクセス道路、1,300台収容の無料駐車場といった空港に必要なものだけでなく、まるで「ついでにこれも」と言わんばかりに事業化したようなものまである。例えば、ターミナルビルの反対側に造成された工業団地「茨城空港テクノパーク」だ。約109億円かけ、37.2ヘクタールを分譲しているが、未だに進出企業はゼロ。空港関連の道路の建設費は合計で約94億円にのぼる。また、約30億円のカネをかけて空港公園なるものまで造られている。業者にとってはまさにホクホクものだが、一体、誰が利用するのだろうか。旅客ではなく、関連工事を呼び込む空港建設といった方がよいかもしれない。

 ところで、「茨城空港」は交通の便が悪く、空港ターミナルビルまで旅客を運ぶ公共交通は現在、ない。これまで一番、近い最寄駅といえば、鹿島鉄道の常陸小川駅だったが、それも2年前の廃線でなくなっている。県は今後、主要駅からの空港直行バスを予定しているというが、旅客機が1日1便では運行するバス会社も大変だ。おそらく、税金による補てんなどがなされるに違いない。

 こうした公共交通のアクセスの悪さも考慮したのだろうか。鹿島鉄道の鉄路を利用したバス専用道路化事業が進行中だ。廃線となった線路を道路に変え、バス専用道として利用するというものだ。石岡市が市道として整備し、2010年の運用開始を目指している。計画区間は石岡駅から旧常陸小川駅間の7.1キロ。石岡市は専用道化により渋滞が回避され、定時性が図られ、所要時間も現在の代替バスの20分〜25分が16分〜20分と5分ほど短縮されるという。高校生などの沿線住民の利便性が向上し、かつ、茨城空港への利便性向上とPR効果があると事業効果をうたっている。

 しかし、どうにも腑に落ちない。そもそも空港公園や企業団地造成などに税金を投じるよりも、鹿島鉄道の存続などに税金を使った方が地域住民のためになったのではないか。また、税金を海外ツアー旅行への補助に使うよりも、優先すべきことがあるのではないか。

 税金の使い方があまりにもズレてはいないか。

2009年12月11日

国内路線ゼロ "国営"茨城空港の本当の狙いは何か

 来年3月に開港予定の「茨城空港」を先日、見に行ってきた。地方空港を長年、取材してきた者として足を運ばない訳にはいかないと思ったからだ。今のうちに行っておかないと取材できなくなるかもしれない。そんな焦りの思いもあった。

 なにしろ開港前から廃港の危機に直面する究極の地方空港である。就航予定の定期便は1日1便のみ。それもアシアナ航空のソウル便だ。当方が旅客者として「茨城空港」を利用することはまずあり得ない。それどころか、地元の人たちでさえ「茨城空港」を利用する機会はそうないはずだ。ターミナルビルに出店する予定だった民間会社も、開港前に早くも撤退の意向を表明している。つまり、飲食店や売店、そして、国内定期便が存在しないままハレの開港の日を迎えることになりそうなのだ。

 それにしても、なぜ、こんな空港を造ったのかと不思議に思う人も多いのではないか。何らかの意図が隠されているのでは。そんな疑念を抱いている人もいるのではないか。

 「茨城空港」はいわゆる「地方空港」ではなく、国営空港である。航空自衛隊「百里基地」の既存滑走路に並走し、民間用の滑走路を新設したものだ。同じ長さ(2700メートル)の新旧2本の滑走路間の距離は、わずかに210メートル。新設した民間用滑走路などの整備費は約220億円で、このうち国(国土交通省)が3分の2を負担し、残りの約70億円を県が負担した。空港の管理主体は国(防衛省)で、国が維持管理費を全て賄うことになっている。民間航空用のエプロン部分の維持管理を国土交通省、それ以外は防衛省の所管となる。「茨城空港」といっているが、要するに百里基地の中に民間用として滑走路を1本、追加したにすぎない。新しく空港が建設された訳ではない。それでも、茨城県は地元の持ち出しが少なくて済んだお得な空港だと、胸を張ったのである。

 しかし、地元にとってお安くできたとしても、旅客機がほとんど飛んでこない滑走路はやはり無駄なのではないか。まさに、宝(?)の持ち腐れである。実は、そうした声が高まるのを当初から想定し、待ち望んでいる人たちがいるように思えてならない。

 「茨城空港」の新滑走路はあくまでも民間用で、自衛隊機が使用することはないとされていたが、現実はどうか。既に新滑走路は完成しているが、自衛隊による限定使用が早くも行われている。現在、既存の滑走路の塗装改良工事が実施中(12月25日終了予定)で、この間は自衛隊機の使用ができない状態となっている。このため、自衛隊は隣に並走する新滑走路を限定使用し、米軍との共同訓練にも使用している。米軍再編に伴う嘉手納飛行場からの訓練移転としてである。10月2日から9日までの間、米軍のF-15ジェット戦闘機が百里沖空域で訓練を行い、百里基地が使用基地となった。使われた滑走路は新滑走路だった。    

 来年3月に「茨城空港」は開港するが、就航便は1日わずかに1便。新滑走路の建設は、実は、自衛隊基地としての機能強化を狙ったものではないだろうか。新空港建設という甘い囁きは、地元への目くらまし戦術のひとつだったのでは。現地で新滑走路の写真を撮ろうとしたところ、「自衛隊の施設があるので撮影不可」と注意された。当方、それで、防衛省の施設であることを改めて痛感したのである。

2009年12月 2日

何のために記事を書くのか(3)

 前回、農業用水の不法転用の事例を紹介した。国営畑地かんがい事業の完成後、土地改良区が余っている農業用水をこっそり工業用水として利用させていた話である。その時に「水はみんなのもの」と表現したが、正確には「本来、みんなのもののはず」。河川の水を利用するには水利権を持っていなければならず、勝手に水を利用することは許されない。

 水利権とは、河川管理者(国など)から水使用を許可されたもので、予め使用水量も規定される。河川を正常に維持するために必要とされる流量を超えた分(余裕分)が、水利権の発生分となる。こうしたルールができるずっと以前から、農家は自分たちで用排水路を整備し、河川の水を使えるようにした。そして、実際に使っていた。それで、農業用水は慣行水利権として広く認められることになった。

 ところが、慣行水利権として認められた使用水量で、河川の余裕分を使い果たしてしまうケースがほとんどだった。それで、新たに河川の水を利用するには、上流にダムなどを造らねばならなくなった。ダムに水を溜め、渇水期に放流することなどで、河川の流量を調整し、水利権分を生み出すのである。許可水利権といわれるものの多くが、こうした施設建設によって新たに得られた水利権である。

 ここで問題になるのが、許可水利権を申請する際の水利権量である。畑地かんがい事業の場合、10年に一度の渇水期でも対応できるように水利権量が設定される。つまり、最大需要にも対応できるだけの大きな水源を造り、水利権量を取得するのである。万が一の時にも水不足で混乱することがないよう、施設を巨大化し、高い供給力を持たせるのである。逆にいえば、平時には需要を大きく上回る態勢を整備することになる。当然のことながら、施設の利用効率は低く、建設費用もかさむことになるが、原資は税金。しかも、万が一のことを考えての備えとあって、地元から異論は出ない。税金がたくさん投じられるだけだからだ。

 そして、実際、税金が使うに困るほどたくさん集まった時期があった。治水面でも同様だ。例えば、治水ダムである。100年に一度の大雨が降っても、流域で洪水が発生しないようにダムが造られたりしている。200年に一度の万が一に備えてのダムもある。万が一のことを発生させてはならないとの発想から、事業が始まっているのである。それで、平時の時は過大過剰な施設として存在することになる。

 こうした官の「万が一」に合わせた施設建設を転換すべき時期が来ているのではないか。もちろん、渇水や洪水が生じても致し方ないといっているのではない。手を打つなといっているのではない。巨大施設で鉄壁の防御が可能と考えるのではなく、渇水や大雨が発生することを念頭に入れ、発生時に実害をいかに少なくするか、常時、流域間で総合的な利害調整しておくべきではないか。流域全体で、行政の縦割りの壁を越えての調整である。地域内の農業用水に余裕があるのに、生活用水用のダムや導水路を新たに造るような愚行はやめるべきだ。詳細は来週発売の週刊ダイヤモンドで。

Profile

相川俊英(あいかわ・としひで)

-----<経歴>-----

1956年群馬県生まれ。
早稲田大学法学部卒業。
1992年よりフリージャーナリストに。
1998年から週刊ダイヤモンド委嘱記者に。
地方自治を主なテーマとして全国を取材・執筆、サンデープロジェクトの特集レポーターも務めている。

BookMarks

-----<著書>-----


『長野オリンピック騒動記』
1998年1月、草思社

『ボケボケパラダイス』
1996年12月、筒井書房

『コメ業界は闇の中』
1994年4月、ダイヤモンド社

『東京外国人アパート物語』
1992年11月、新宿書房

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